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朝鮮民主主義人民共和国のヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のヤギ飼養頭数は、1961年の7万9000頭から2022年には約394万4千頭にまで増加しました。このデータは、ヤギ飼養が北朝鮮の農業・畜産業において重要性を増してきたことを示しています。一方で、1990年代の一時的な減少や近年の増加傾向には、地政学的および経済的な背景が影響を与えています。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 3,944,361
2021年 3,792,924
2020年 3,753,000
2019年 3,705,000
2018年 3,631,000
2017年 3,684,000
2016年 3,682,000
2015年 3,669,412
2014年 3,665,000
2013年 3,682,000
2012年 3,689,000
2011年 3,657,000
2010年 3,556,000
2009年 3,570,000
2008年 3,441,000
2007年 3,260,000
2006年 3,090,000
2005年 2,900,000
2004年 2,736,000
2003年 2,717,000
2002年 2,693,000
2001年 2,566,000
2000年 2,276,000
1999年 1,900,000
1998年 1,508,000
1997年 1,077,000
1996年 712,000
1995年 712,000
1994年 1,112,000
1993年 900,000
1992年 750,000
1991年 660,000
1990年 650,000
1989年 640,000
1988年 630,000
1987年 620,000
1986年 610,000
1985年 600,000
1984年 580,000
1983年 560,000
1982年 540,000
1981年 510,000
1980年 490,000
1979年 470,000
1978年 450,000
1977年 440,000
1976年 420,000
1975年 400,000
1974年 390,000
1973年 360,000
1972年 340,000
1971年 310,000
1970年 290,000
1969年 260,000
1968年 235,000
1967年 215,000
1966年 200,000
1965年 180,000
1964年 156,000
1963年 127,000
1962年 98,000
1961年 79,000

1961年に7万9000頭であった北朝鮮のヤギ飼養頭数は、1970年代から1980年代を通じて安定的に増加し、1990年代には一気に増加しました。この背景には、特に1990年代中盤に経験した深刻な食糧危機(いわゆる「苦難の行軍」)が挙げられます。この時期には農業生産が大幅に減少し、それを補うために自給自足的な食料資源の確保が強化されました。ヤギは畜産動物として土地への負担が比較的少なく、厳しい環境でも繁殖しやすいという利点があり、同国において実用的な選択肢として重視されたと考えられます。

1992年には75万頭だったヤギ飼養頭数が1994年には111万2千頭に急増した一方で、1995年と1996年には再び71万2千頭へと減少しました。この不安定な動きは、当時の深刻な食料危機やエネルギー不足、国際援助の欠如といった政治・経済的状況に起因しているとみられます。その後、1997年以降には再び増加基調となり、1999年には190万頭、2005年には290万頭を突破しました。この持続的な増加は、食料確保策や内需を満たすための畜産業強化政策が影響している可能性が高いです。

近年では、ヤギ飼養頭数は300万頭を超え、2022年には394万4千頭にまで達しています。このことは北朝鮮が畜産業を強化する中で、ヤギが重要な位置を占めていることを示しています。ヤギは乳や肉の生産に役立つだけでなく、糞を有機肥料として再利用することで農業にも寄与しています。一方、2020年代において新型コロナウイルス感染症の流行が世界中の物流や経済に影響を与える中、北朝鮮内部で食料安全保障への意識がさらに高まり、農業および畜産業の一環としてヤギ飼養が戦略的に拡大されていると推測されます。

しかしながら、飼養頭数の増加に伴う課題も存在します。一つは土地や飼料の供給問題です。ヤギの飼養頭数が増えることで牧草地の過剰利用や森林の減少が引き起こされる可能性があります。また、家畜の衛生問題や伝染病のリスクも増加します。例えば、飼育環境の劣悪化は病気の蔓延を助長し、それが食料安全保障上の新たな脅威となる可能性があります。

今後、持続可能な方法でヤギの飼養を拡大するためには、土地利用計画を見直し、効率的な飼料管理システムを導入することが重要です。さらに、家畜衛生を維持するための獣医インフラの整備や予防接種キャンペーンの実施が必要です。国際的な観点では、北朝鮮が地域協力や国際機関との連携を強化し、技術的支援やノウハウを導入することが期待されます。特に、自己完結的な農業・畜産モデルを維持しつつも、環境への負荷を低減する「持続可能な農業・畜産」の実践が求められます。

結論として、このデータは北朝鮮の食料安全保障に向けた取り組みや、ヤギ飼養の重要性を示しています。一方で、飼養頭数の増大が環境や衛生面における課題をもたらす可能性も否定できません。これらの課題を克服するためには、国や地域、さらには国際的な協力が不可欠です。