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朝鮮民主主義人民共和国の大麦生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の2024年7月に更新されたデータによると、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の大麦生産量は1960年代には年間20万トンを超える水準に達していましたが、その後、継続的な減少傾向が見られ、特に1990年代後半から2000年代初頭にかけて急激に低下しました。2023年には約41,552トンにとどまっており、全盛期の約5分の1以下という状況です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 41,552
5.1% ↑
2022年 39,534
-22.69% ↓
2021年 51,139
-10.28% ↓
2020年 57,000
1.97% ↑
2019年 55,900
72% ↑
2018年 32,500
16.07% ↑
2017年 28,000
72.84% ↑
2016年 16,200
47.27% ↑
2015年 11,000
-8.33% ↓
2014年 12,000
-60.4% ↓
2013年 30,300
4.48% ↑
2012年 29,000
-47.27% ↓
2011年 55,000
-31.25% ↓
2010年 80,000
26.98% ↑
2009年 63,000
-3.08% ↓
2008年 65,000
-13.33% ↓
2007年 75,000
-2.6% ↓
2006年 77,000
4.05% ↑
2005年 74,000
15.63% ↑
2004年 64,000
-7.25% ↓
2003年 69,000 -
2002年 69,000
-0.92% ↓
2001年 69,638
140.13% ↑
2000年 29,000
-47.27% ↓
1999年 55,000
-38.89% ↓
1998年 90,000
-35.71% ↓
1997年 140,000
-12.5% ↓
1996年 160,000
-11.11% ↓
1995年 180,000
-14.29% ↓
1994年 210,000
75% ↑
1993年 120,000
-7.69% ↓
1992年 130,000
-10.34% ↓
1991年 145,000
-3.33% ↓
1990年 150,000 -
1989年 150,000 -
1988年 150,000 -
1987年 150,000 -
1986年 150,000 -
1985年 150,000 -
1984年 150,000
7.14% ↑
1983年 140,000
-6.67% ↓
1982年 150,000
3.45% ↑
1981年 145,000
-3.33% ↓
1980年 150,000
-11.76% ↓
1979年 170,000
6.25% ↑
1978年 160,000
14.29% ↑
1977年 140,000 -
1976年 140,000 -
1975年 140,000
-6.67% ↓
1974年 150,000
3.45% ↑
1973年 145,000
29.46% ↑
1972年 112,000
-13.85% ↓
1971年 130,000
8.33% ↑
1970年 120,000
9.09% ↑
1969年 110,000
-8.33% ↓
1968年 120,000
-7.69% ↓
1967年 130,000
-13.33% ↓
1966年 150,000
-16.67% ↓
1965年 180,000
-10% ↓
1964年 200,000
-4.76% ↓
1963年 210,000
5% ↑
1962年 200,000 -
1961年 200,000 -

北朝鮮における大麦生産量の推移は、国内の農業生産能力および経済状況の変動を反映したものと見られます。1960年代初頭の20万トン以上の生産量は比較的安定していましたが、1965年を境として減少し始め、1970年代半ばから1990年代初頭までは15万トン前後で推移していました。その後、1990年代半ばから急激な減少が目立ち、特に1998年には9万トン、1999年には5万5,000トンという過去最低の数値を記録しています。

この減少の背景には、1990年代に北朝鮮で発生した大規模な食糧危機が挙げられます。「苦難の行軍」と呼ばれるこの時期は、経済の混乱に加え、自然災害が重なり、農業を中心とした生産活動に大きな打撃を与えました。また、同時期に旧ソ連の崩壊による経済支援の減少や国際的な孤立が深刻化しており、農業の近代化が停滞していたことも問題を深めました。

2000年代以降は生産量が顕著に低い状態で推移し、特に2014年から2016年にかけては1万2,000~1万6,000トンと極めて低い生産量となりました。この低迷期には、慢性的な肥料や農業機械の不足、インフラの老朽化が影響していると考えられます。2018年以降は一部の回復が見られ、2020年には5万7,000トンを記録しましたが、2023年の4万1,552トンでは依然として世界平均の農地生産効率と比較して著しく低い状況です。

隣国である韓国や中国が同時期に農業技術の近代化を進め、穀物の生産効率を向上させてきた点に注目すると、北朝鮮との技術格差が顕著です。たとえば、韓国では緑の革命(農業技術の改善を通じた収穫量の飛躍的向上)の成功により、穀物全般の生産量が安定し、国民の食糧供給も充足する状況が維持されています。

北朝鮮における課題としては、厳しい地形的条件や気候変動の影響、および国際的な孤立があげられます。特に、気候変動がもたらす異常気象や旱魃が農業に深刻な影響を及ぼしており、一部の地域では生産性が大幅に低下しています。この問題に対処するためには、灌漑設備の整備や耐乾性作物の導入などの技術的な改善が必要不可欠です。しかしながら、現状では国際社会との協調や技術移転の不足が妨げとなっています。

将来の改善に向けた提言として、まず国内の農業インフラの再整備とともに、耐久性の高い品種の研究や導入を推進することが考えられます。また、国際機関や近隣諸国との協力を通じて農業技術および資材を導入することも重要です。さらに、経済制裁の緩和を目指し、外部からの支援を受け入れるための柔軟な外交政策を採用することが、中長期的な大麦生産回復への道筋となるでしょう。

結論として、北朝鮮の低い大麦生産量の背後には、複雑な歴史的および政治的な要因が存在しています。それらの課題を克服するためには、国内の農業政策の再構築とともに、国際社会との協力体制強化が求められます。これにより、持続可能な農業生産の実現が期待される一方で、地域の食糧安全保障の向上にも繋がると考えられます。