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朝鮮民主主義人民共和国の小麦生産量推移(1961-2022)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の小麦生産量は、長期的に見て大きな変動を見せています。1950年代から1970年代後半にかけては緩やかな増加傾向を示し、1980年代後半にピークを迎えます。その後、1990年代には大幅に低下し、以降は不安定な推移を続けています。2000年代中頃には一時的に回復するも、2010年代後半からは再び下降傾向に入り、2022年の生産量は69,538トンと記録されています。

年度 生産量(トン)
2022年 69,538
2021年 86,439
2020年 89,000
2019年 87,500
2018年 50,900
2017年 43,800
2016年 39,000
2015年 55,000
2014年 45,000
2013年 75,000
2012年 74,000
2011年 127,000
2010年 160,000
2009年 169,000
2008年 175,000
2007年 195,000
2006年 199,000
2005年 193,000
2004年 175,000
2003年 161,000
2002年 145,000
2001年 123,866
2000年 50,000
1999年 97,000
1998年 165,000
1997年 100,000
1996年 100,000
1995年 125,000
1994年 125,000
1993年 123,000
1992年 123,000
1991年 135,000
1990年 116,000
1989年 129,000
1988年 128,000
1987年 133,000
1986年 143,000
1985年 127,000
1984年 132,000
1983年 124,000
1982年 121,000
1981年 114,000
1980年 99,000
1979年 115,000
1978年 111,000
1977年 115,000
1976年 108,000
1975年 106,000
1974年 102,000
1973年 98,000
1972年 87,000
1971年 91,000
1970年 88,000
1969年 88,000
1968年 87,000
1967年 91,000
1966年 96,000
1965年 88,000
1964年 98,000
1963年 94,000
1962年 87,000
1961年 85,000

北朝鮮の小麦生産量の推移は、経済状況や気候条件、地政学的な要因などさまざまな背景により、大きな変動を繰り返してきました。1960年代から1980年代後半にかけては、計画経済のもとで農業開発が進められ、小麦生産も着実に増加しました。特に1986年には143,000トンを記録するなど、生産体制が安定していたことがうかがえます。しかしながら、1990年代に入るとソ連崩壊後の支援停止、自然災害の頻発、そして国内経済の混乱が重なり、1996年には100,000トンに大きく減少しました。この低迷は「苦難の行軍」と呼ばれる深刻な食料危機の時期と一致しており、農業の脆弱性が露呈しました。

2000年代に入ると技術改良や一部の国際援助による影響で生産量に一時的な回復が見られ、2006年には199,000トンという高水準を達成しました。しかし、この増加が長続きすることはなく、2012年以降は下降傾向が続き、2016年には39,000トン、2018年に50,900トンと、いずれも非常に低水準を記録しています。このような低迷には、国内の農業技術の遅れやインフラの老朽化、気候変動による天候不順などが関係していると考えられます。

最近の2020年以降を見ても、小麦生産量が80,000トン前後の不安定な状態が続いています。特に2022年には再び69,538トンに減少しており、依然として農業生産基盤の脆弱さが問題視されています。ここに新型コロナウイルス感染症が及ぼした影響は計り知れません。パンデミックによる国境封鎖や物資の輸入制限が農業資材の不足を招き、生産性低下に拍車をかけた可能性があります。

加えて、北朝鮮特有の地政学的状況も農業に影響を与えています。例えば、国際的な経済制裁下にあるため、国外からの技術支援や農業機器の導入が難しく、国内自給自足に頼らざるを得ない点が課題となっています。また、急速な都市化や伝統的な農地管理の崩壊も小麦の生産環境を悪化させています。

今後、北朝鮮が小麦生産を安定化させ、国内食料事情を改善するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、国際機関や近隣諸国との協力を模索し、農業技術の向上や気候変動への対策を実施することが急務です。例えば、中国や韓国から低価格で入手可能な耐候性品種の導入や、灌漑施設の整備支援を受けることが考えられます。また、国連を始めとする国際援助機関との積極的な連携による災害地域への迅速な支援も、食料危機の緩和につながります。

さらに、中長期的には農業インフラの近代化が不可欠です。そのためには、国境を越えた局地的な共同プロジェクトの設計や、広範囲な研修プログラムの実施など、具体的な人的資源投資について検討する必要があるでしょう。一方で、国際制裁の影響をどのように克服するかという課題は依然として残ります。

結論として、北朝鮮の小麦生産動態は、地域の食糧安全保障に直結する重要な問題です。地政学的背景や自然災害の影響により、同国の農業政策に柔軟で持続可能な解決策が求められています。これが実現することで、国内の食料事情の改善だけでなく、より広範な地域全体の安定にも寄与する可能性があります。