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朝鮮民主主義人民共和国の大豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の大豆生産量は歴史的に1960年代から1980年代にかけて上昇を続け、1984年には過去最高の440,000トンを記録しました。その後は1990年代以降に減少傾向が表れ、特に1997年以降は年平均350,000トン前後を維持する横ばい傾向が見られました。しかし、2016年以降は急激に減少し、2018年には135,280トンと記録的な低水準となりました。これには気象条件、農業インフラの不足、経済制裁、そして地政学的リスクが関係しています。2020年以降も低水準が続いており、持続的な改善が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 180,000 -
2022年 180,000
-5.26% ↓
2021年 190,000
-17.35% ↓
2020年 229,892
-12.89% ↓
2019年 263,920
95.09% ↑
2018年 135,280
-39.42% ↓
2017年 223,325
-20.81% ↓
2016年 282,000
-19.43% ↓
2015年 350,000 -
2014年 350,000 -
2013年 350,000 -
2012年 350,000 -
2011年 350,000 -
2010年 350,000 -
2009年 350,000 -
2008年 350,000
1.45% ↑
2007年 345,000 -
2006年 345,000
1.47% ↑
2005年 340,000
-2.86% ↓
2004年 350,000
-0.57% ↓
2003年 352,000
0.57% ↑
2002年 350,000
2.04% ↑
2001年 343,000
-2% ↓
2000年 350,000
2.94% ↑
1999年 340,000 -
1998年 340,000
-5.56% ↓
1997年 360,000
-10% ↓
1996年 400,000
2.56% ↑
1995年 390,000
-2.5% ↓
1994年 400,000
5.26% ↑
1993年 380,000
-5% ↓
1992年 400,000
-9.09% ↓
1991年 440,000
-3.3% ↓
1990年 455,000
8.33% ↑
1989年 420,000
-6.25% ↓
1988年 448,000
0.67% ↑
1987年 445,000
3.01% ↑
1986年 432,000
1.65% ↑
1985年 425,000
-3.41% ↓
1984年 440,000
15.79% ↑
1983年 380,000
5.56% ↑
1982年 360,000
2.86% ↑
1981年 350,000
2.94% ↑
1980年 340,000
3.03% ↑
1979年 330,000
3.13% ↑
1978年 320,000
3.23% ↑
1977年 310,000
3.33% ↑
1976年 300,000
3.45% ↑
1975年 290,000
3.57% ↑
1974年 280,000
21.74% ↑
1973年 230,000
-12.55% ↓
1972年 263,000
-0.75% ↓
1971年 265,000
3.92% ↑
1970年 255,000
4.08% ↑
1969年 245,000
2.08% ↑
1968年 240,000
6.67% ↑
1967年 225,000
7.14% ↑
1966年 210,000
5% ↑
1965年 200,000
5.26% ↑
1964年 190,000
5.56% ↑
1963年 180,000
2.86% ↑
1962年 175,000
2.94% ↑
1961年 170,000 -

北朝鮮の大豆生産推移データを分析すると、いくつかの重要な変化と問題点が明らかになります。まず、1960年代から1980年代にかけては、ほぼ一貫して大豆の生産量が増加していることから、この時期の農業政策が比較的安定しており、栽培技術や社会的なインフラ整備も進展していたことがうかがえます。この傾向は、1984年の440,000トンをピークに達しました。しかし、1990年代に入ると生産量が減少し始めます。この背景には冷戦終結後の経済的孤立化、主要な貿易相手国からの支援縮小、さらには国内における資源配分の問題が影響しているとされます。この時期、北朝鮮では複数の飢饉が発生しており、食糧不足は慢性的なものとなりました。

さらに、1990年代後半以降、生産量は年間350,000トン前後で安定するものの、国際基準で見れば効率性の低い農業運営が課題として残りました。例えば、隣国の韓国では同じ緯度帯に位置するにもかかわらず、より効率的で最新技術を導入した作物栽培が行われており、生産性は北朝鮮よりも大幅に高い状況です。日本や中国と比較しても、北朝鮮の生産性は明らかに低く、農地の利用効率向上と肥料・インフラの整備が遅れていることが指摘されています。

直近の値を見ると、2016年に282,000トンだった生産量が2017年には223,325トン、2018年には135,280トンへと急激に減少しました。ここには複数の要因が関与していると考えられます。特に、近年における気候変動の影響や天候不良が収穫量に打撃を与えたことが大きな要因と考えられます。また、北朝鮮が経験している経済制裁の強化は、農業に必要な機械や部品、肥料、種子の輸入にも大きな制約を与えているため、生産環境が劣化している点も重要です。加えて、地政学的な緊張が激化する中、農業にかかわる人的資源や予算の削減が、さらに農業基盤を弱体化させた可能性があります。

地域的な課題を見ると、大豆は食糧のみならず飼料や油脂の原料としても活用されるため、北朝鮮のように農業生産が輸入依存型となりやすい国では特に重要な作物です。しかし、国内のインフラ不足や土地劣化、技術不足が課題となる中で、大豆生産の回復への道は容易ではありません。一方で、日本や韓国、中国と農業協力を図ることができれば、北朝鮮は農業技術やノウハウの共有を通じて、持続可能な農業生産を取り戻す可能性を持っています。

今後、この国が取り組むべき具体的な対策としては、まず国内の農業インフラ整備が挙げられます。同時に、高効率な灌漑システムの導入、土壌の改良、高品質な種子の確保が必要不可欠です。また、国際社会との協調を図り、特に農業支援と食糧安全保障に関わる援助の再開を目指すことが重要です。例えば、国際連合の食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)と連携し、大豆生産を含む主要作物の収穫力向上計画を策定することが考えられます。

結論として、このデータは北朝鮮が長期的に直面してきた経済的孤立や農業環境の脆弱さを浮き彫りにしています。大豆生産量が持つ食糧安全保障への影響を考えると、大豆の持続的な生産の回復は、北朝鮮自身の努力だけでなく、国際的な協力と戦略的な政策の実施を通じてもたらされるべき重要な課題です。この先、農業分野で国際社会と建設的な対話を行い、技術と資源の共有を進めることで、持続可能な食糧生産が期待されます。