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朝鮮民主主義人民共和国のナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年に発表した最新データによると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)のナシ生産量は、1961年の10,000トンから2023年には150,927トンまで増加しました。この期間を通じて、特に1970年代以降、生産量は安定した上昇傾向を示しており、2000年代には最大で年間約150,000トンを維持する水準に達しました。しかしながら、一部の年には停滞や減少も見られ、地政学的リスクや自然災害、内部的な経済困難が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 150,927
0.45% ↑
2022年 150,248
0.42% ↑
2021年 149,619
0.42% ↑
2020年 148,989
0.11% ↑
2019年 148,832
0.64% ↑
2018年 147,879
0.76% ↑
2017年 146,769
0.58% ↑
2016年 145,917
0.5% ↑
2015年 145,193
0.53% ↑
2014年 144,428
-0.39% ↓
2013年 145,000
-1.36% ↓
2012年 147,000
2.8% ↑
2011年 143,000
3.65% ↑
2010年 137,971
2.6% ↑
2009年 134,480
3.33% ↑
2008年 130,140
4.11% ↑
2007年 125,000
-3.85% ↓
2006年 130,000
-3.7% ↓
2005年 135,000
0.75% ↑
2004年 134,000
1.32% ↑
2003年 132,253
-0.56% ↓
2002年 133,000
2.34% ↑
2001年 129,959
-0.03% ↓
2000年 130,000
2.95% ↑
1999年 126,276
1.02% ↑
1998年 125,000
2.02% ↑
1997年 122,529
2.11% ↑
1996年 120,000
4.35% ↑
1995年 115,000
-4.17% ↓
1994年 120,000
4.35% ↑
1993年 115,000
-5.74% ↓
1992年 122,000
1.67% ↑
1991年 120,000
4.35% ↑
1990年 115,000
2.68% ↑
1989年 112,000
3.7% ↑
1988年 108,000
2.86% ↑
1987年 105,000
2.94% ↑
1986年 102,000
4.08% ↑
1985年 98,000
5.38% ↑
1984年 93,000
9.41% ↑
1983年 85,000
23.19% ↑
1982年 69,000
2.99% ↑
1981年 67,000
3.08% ↑
1980年 65,000
8.33% ↑
1979年 60,000
9.09% ↑
1978年 55,000
10% ↑
1977年 50,000
6.38% ↑
1976年 47,000
2.17% ↑
1975年 46,000
2.22% ↑
1974年 45,000
12.5% ↑
1973年 40,000 -
1972年 40,000
33.33% ↑
1971年 30,000
57.89% ↑
1970年 19,000
5.56% ↑
1969年 18,000
12.5% ↑
1968年 16,000
6.67% ↑
1967年 15,000
7.14% ↑
1966年 14,000
16.67% ↑
1965年 12,000
20% ↑
1964年 10,000
11.11% ↑
1963年 9,000
-10% ↓
1962年 10,000 -
1961年 10,000 -

北朝鮮のナシ生産量は、長年にわたり着実に増加してきました。この増加は、農業政策の推進、栽培技術の向上、果樹への投資が重要な役割を果たしていると考えられます。1960年代から1970年代にかけては生産量が堅調に伸び、1971年以降の急増は農業基盤の拡充や集中的な農業政策の成果を反映しているものと思われます。その後、1980年代から1990年代にかけて、年々増加のペースはやや緩やかになり、1990年代には115,000トンから122,529トンの間で推移しました。しかし、1995年から2002年にかけては一部減少が見られ、これはおそらく北朝鮮で発生した経済的制裁や自然災害、さらには冷害などの影響が大きかったと推察されます。

2000年代以降、ナシ生産量は再び安定を取り戻し、年間130,000トン以上を保つ状況が続いています。特に2010年以降は増加が緩やかですが、一貫して上昇を示しており、2023年には150,927トンと過去最高水準を記録しました。この背景には、近年の天候条件が比較的安定していることや、生産における機械化や技術導入の可能性が考えられます。

一方で、北朝鮮の農業全般にはいくつかの課題が存在しています。自然災害や疫病被害のリスクは依然高く、特に干魃や洪水が発生するたびに農業生産が大きな被害を受けるケースが見られます。また、北朝鮮の地政学的状況は外部との協力や技術輸入を制約しており、農地改善や灌漑技術拡充の進展が限られている可能性があります。興味深いのは、ナシ生産が比較的堅調である一方で、他の作物、特に主食であるトウモロコシや米については深刻な生産不足が報告されている点です。この点は、農業資源の分配がナシのような果樹栽培に相対的に集中している可能性を示唆しています。

他国と比較すると、北朝鮮のナシ生産量は韓国(1,000,000トン超)、日本(約800,000トン)といった近隣の主要生産国に比べると依然として少ないです。また、中国はナシ生産の世界最大国であり、年間1,000万トンを超える圧倒的な規模です。こうした背景と比べると、北朝鮮の生産規模は自給自足重視の政策の一環とする小規模な果実産業に留まっていることが分かります。

未来の展望としては、いくつかの具体的な提案が考えられます。ひとつには、灌漑や苗木品質の向上を目的とした農業技術の導入です。特に、灌漑設備が不十分な地域で水資源を効率化することで、さらなる生産量の向上が期待されます。また、地域間の協力を促進し、農業研究や技術共有を行うのも重要です。この点で、中国やロシアなど近隣諸国との協力がカギとなるでしょう。他方で、地政学的な考慮も必要です。国際的な制裁の緩和や、農業開発支援の前提となる政治的な緊張緩和もまた、ナシの生産を含めた農業問題の解決に寄与するでしょう。

結論として、北朝鮮のナシ生産量は長期的に見て増加傾向を示し、その歴史は果樹栽培への注力を反映しています。しかし、地政学的な課題や自然災害への脆弱性など多くの解決すべき問題を抱えています。このため、灌漑システムの強化、栽培技術の近代化、さらには地域協力や国際協力の促進が今後の進展に欠かせない要素です。こうした対策を講じることで、北朝鮮の果樹産業全体がさらに成長し、農業経済に貢献することが期待されます。