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朝鮮民主主義人民共和国の米生産量推移(1961年~2023年)

国連食糧農業機関(FAO)が集計した最新データ(2024年7月更新)によると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の米生産量は長期的に変動を繰り返しつつ、2022年には2,061,443トンの生産量を記録しました。特に1990年代初頭には生産量が急増した一方、1994年以降には急激な減少がみられました。その後も、自然災害や経済的制約、社会的状況の影響を受けて安定しない生産量が続いています。近年(2020年以降)は200万トン前後で推移しており、長期的な自給自足体制の脆弱性が懸念されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,775,788
-13.86% ↓
2022年 2,061,443
-1.84% ↓
2021年 2,100,000
-0.62% ↓
2020年 2,113,019
-24.63% ↓
2019年 2,803,713
34.3% ↑
2018年 2,087,623
-12.41% ↓
2017年 2,383,277
-6.04% ↓
2016年 2,536,419
30.34% ↑
2015年 1,946,000
-25.89% ↓
2014年 2,626,000
-9.48% ↓
2013年 2,901,000
1.4% ↑
2012年 2,861,000
15.41% ↑
2011年 2,479,000
2.18% ↑
2010年 2,426,000
3.85% ↑
2009年 2,336,000
-18.38% ↓
2008年 2,862,000
53.09% ↑
2007年 1,869,500
-24.57% ↓
2006年 2,478,500
-4.06% ↓
2005年 2,583,400
9% ↑
2004年 2,370,000
5.61% ↑
2003年 2,244,000
2.65% ↑
2002年 2,186,000
6.11% ↑
2001年 2,060,200
21.91% ↑
2000年 1,690,000
-27.87% ↓
1999年 2,343,000
1.56% ↑
1998年 2,307,000
51.08% ↑
1997年 1,527,000
7.08% ↑
1996年 1,426,000
-29.27% ↓
1995年 2,016,000
-36.54% ↓
1994年 3,177,000
-33.63% ↓
1993年 4,787,000
6.38% ↑
1992年 4,500,000
9.22% ↑
1991年 4,120,000
128.89% ↑
1990年 1,800,000
-15.97% ↓
1989年 2,142,000
0.61% ↑
1988年 2,129,000
-4.06% ↓
1987年 2,219,000
-7.04% ↓
1986年 2,387,000
12.97% ↑
1985年 2,113,000
-3.65% ↓
1984年 2,193,000
6.25% ↑
1983年 2,064,000
2.69% ↑
1982年 2,010,000
-33.99% ↓
1981年 3,044,900
15.06% ↑
1980年 2,646,400
-13.52% ↓
1979年 3,060,100
3.48% ↑
1978年 2,957,200
-3.39% ↓
1977年 3,060,900
7.26% ↑
1976年 2,853,600
1.42% ↑
1975年 2,813,700
3.83% ↑
1974年 2,710,000
4.29% ↑
1973年 2,598,500
12.42% ↑
1972年 2,311,500
-3.98% ↓
1971年 2,407,200
3.42% ↑
1970年 2,327,500
-0.68% ↓
1969年 2,343,400
22.5% ↑
1968年 1,913,000
-3.23% ↓
1967年 1,976,800
-7.12% ↓
1966年 2,128,300
11.72% ↑
1965年 1,905,000
-12.46% ↓
1964年 2,176,100
5% ↑
1963年 2,072,500
9.25% ↑
1962年 1,897,100
4.87% ↑
1961年 1,809,000 -

北朝鮮の米生産量のデータを見ると、1960年代から1970年代半ばまでは、年ごとに緩やかに増加していたことがわかります。1977年には初めて3,060,900トンを超える生産量を記録し、この時期には農業インフラ拡充や農業政策の進展が見られたと推測されます。しかし1980年代になると、例外的に豊作が確認された年(1981年)を除けば増加傾向は鈍化し、1982年には生産量が2,010,000トンと急減しました。この変動は、冷害や経済の低迷による稲作環境の劣化が影響している可能性があります。

特筆すべき点としては、1991年から1993年にかけて生産量が異常に増加し、1993年には最大の4,787,000トンを記録しました。しかし、これ以降の急減が北朝鮮の農業セクターにおける構造的問題の深刻化を浮き彫りにしています。1994年に始まった生産量の低下は、冷害や洪水、経済的停滞の中で広範囲な飢饉を引き起こした「苦難の行軍」とされる時期と一致しており、この時期の食料問題の深刻さを物語っています。

2000年代以降、比較的安定した年もありましたが、依然として年ごとの変動が目立ちました。特に2007年には1,869,500トンまで減少しており、これは気象条件の悪化や農業インフラの老朽化が関係していた可能性があります。一方、2008年には2,862,000トンと回復し、その後2012年から2014年には2,600,000〜2,900,000トン前後を達成しましたが、2015年に再び急減したことから食料安全保障の不安定さが依然顕在していることが分かります。

2020年以降の生産量は概して200万トン前後で推移しており、2022年には2,061,443トンに達しました。この低水準な現状には、地政学的リスクや経済制裁、さらに近年のCOVID-19による影響が影を落としている可能性があります。国際的な支援が限られる中、化学肥料や農業機器の供給不足が深刻化し、食料生産効率の低さに直結していると思われます。

北朝鮮の米生産量の現状を考慮すると、以下の課題と解決策が挙げられます。まず、気候変動を含む自然災害への脆弱性が顕著であり、灌漑設備の強化や洪水対策の徹底が必要です。また、化学肥料や種子、農機具などにアクセスするための貿易や技術協力の促進は不可欠です。さらに、持続可能な農業政策を実施し、現地での技術革新や人材育成を推進することが求められています。

加えて、地政学的環境の改善も重要なポイントです。経済制裁の下では外部からの農業支援や輸入に制限があるため、国際的な協議を通じて食料安全保障を議題に挙げることが必要でしょう。国連をはじめとする国際機関が果たすべき役割も重要で、地域情勢を安定化させるための外交的努力も並行して進めることが理想的です。

結論として、北朝鮮の米生産量推移は国内外の幅広い要因に強く影響されており、長期的な安定性を確保するには課題解決が急務です。今後、農業部門の基盤強化に向けた具体的な行動や、緊急時の国際協力体制を整えることが食料自給自足の確立に繋がると期待されます。