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ベトナムの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ベトナムの牛乳生産量は、1961年の8,000トンから2023年には1,220,860トンに達し、膨大な成長を遂げました。特に1990年代以降、急速な拡大が見受けられます。2020年代に入ってからの成長率も依然として高く、牛乳生産はベトナムの農業セクターの重要な一翼を担っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,220,860
5.39% ↑
2022年 1,158,441
5.03% ↑
2021年 1,102,924
2.05% ↑
2020年 1,080,738
6.4% ↑
2019年 1,015,706
5.35% ↑
2018年 964,083
6.21% ↑
2017年 907,699
10.83% ↑
2016年 818,997
9.96% ↑
2015年 744,848
31.59% ↑
2014年 566,019
20.41% ↑
2013年 470,084
19.56% ↑
2012年 393,193
10.51% ↑
2011年 355,807
12.65% ↑
2010年 315,862
10.23% ↑
2009年 286,536
6.11% ↑
2008年 270,025
11.82% ↑
2007年 241,471
8.56% ↑
2006年 222,432
9.24% ↑
2005年 203,609
30.64% ↑
2004年 155,853
19.43% ↑
2003年 130,498
61.49% ↑
2002年 80,807
21.25% ↑
2001年 66,644
25.74% ↑
2000年 53,000
33.53% ↑
1999年 39,692
21% ↑
1998年 32,803
4.89% ↑
1997年 31,274
12.25% ↑
1996年 27,861
-69.25% ↓
1995年 90,596
4.21% ↑
1994年 86,935
2.16% ↑
1993年 85,101
4.48% ↑
1992年 81,448
-41.57% ↓
1991年 139,406
287.24% ↑
1990年 36,000
-2.17% ↓
1989年 36,800
2.22% ↑
1988年 36,000
2.27% ↑
1987年 35,200
4.76% ↑
1986年 33,600 -
1985年 33,600
7.69% ↑
1984年 31,200
5.41% ↑
1983年 29,600
-2.63% ↓
1982年 30,400
8.57% ↑
1981年 28,000
6.06% ↑
1980年 26,400
6.45% ↑
1979年 24,800
10.71% ↑
1978年 22,400
12% ↑
1977年 20,000
8.7% ↑
1976年 18,400
15% ↑
1975年 16,000
21.95% ↑
1974年 13,120
2.12% ↑
1973年 12,848
6.64% ↑
1972年 12,048
0.1% ↑
1971年 12,036
7.35% ↑
1970年 11,212
-0.14% ↓
1969年 11,228
4.35% ↑
1968年 10,760
-6.6% ↓
1967年 11,520
7.46% ↑
1966年 10,720
11.67% ↑
1965年 9,600
9.09% ↑
1964年 8,800 -
1963年 8,800
10% ↑
1962年 8,000 -
1961年 8,000 -

ベトナムの牛乳生産は、この60年以上にわたる期間で劇的な変遷を遂げました。1960年代から1980年代にかけての牛乳生産量は非常に緩やかな増加を示しており、年平均数千トンの成長にとどまっていました。この時期の緩やかな成長は、国内の農業技術の発展不足や畜産業への投資が限られていたためであると考えられます。また、戦争などの地政学的リスクが農業全体に悪影響を及ぼしていたことも成長を抑制した要因と思われます。

しかし1990年に突如、牛乳生産量が約139,406トンに急増していることが注目されます。この背景には、牛乳生産の統計的な見直しや生産体制の転換があった可能性があります。ただし1992年には約81,448トンとかなり減少しており、この不安定さは当時の政策改革や市場環境の変動を反映している可能性があります。

2000年代後半からは、持続的かつ顕著な成長が始まりました。特に2000年(53,000トン)から2023年(1,220,860トン)に至る23年間の伸びは、その前の数十年間の増加幅を大きく上回っています。この急増の要因は、以下のいくつかのポイントに起因すると考えられます。一つ目は、外資系酪農企業の進出です。例えば、ベトナム市場には多国籍の乳製品ブランドが参入し、高品質な乳製品の需要喚起を図った結果、国内生産者も競争力向上に向けた努力が求められました。二つ目として、政府の農業促進政策があります。特に経済開放政策「ドイモイ改革」をきっかけに、農業分野への投資が活発化しました。三つ目は、都市化と所得向上による消費者の食生活変化です。国民の間で乳製品需要が高まったことが、生産量増加を直接的にサポートしました。

地域的に見ると、ベトナムは温暖で湿潤な気候を持つため、伝統的には稲作に重きを置いてきましたが、畜産業への注力が増大したことは今後の持続可能な成長に寄与する可能性があります。他国との比較では、ベトナムの牛乳生産量は東アジア地域、特に農業を中心とする発展途上国の中では高い水準に位置しています。しかし日本やアメリカ(年間9,000万トン以上)、EU諸国と比べると、まだ生産規模と効率面で課題が残ると言えます。

しかしながら、課題も存在します。一つには、牛乳の品質維持や安全性確保のためのインフラ整備が挙げられます。生産量が増加するにつれて、加工・流通段階での安全確保がより重要になります。二つ目に、気候変動の影響がベトナムの農業全般に与えるリスクです。気温上昇や水不足により、将来的な牧草生産が制約される可能性があり、それに伴い乳牛の飼育効率が低下するリスクがあります。また、ベトナムの畜産業は依然として小規模農家に依存している部分が多く、効率的な大規模生産への移行が進まない場合には国際競争力に限界が予測されます。

今後の対策としては、まず、持続可能な農畜産技術の導入が鍵となります。例えば、高品質で収量の多い牧草の開発や、乳牛の遺伝子改良技術の普及が期待されます。また、地域間の協力を深めることも重要です。ASEAN加盟国との協力により、乳製品の流通や技術共有を強化することで地域全体の生産性向上を図るべきです。さらに、大規模酪農場の整備や物流ネットワークの再編といったインフラ投資は、生産効率や国際市場への対応力を向上させると考えられます。

結論として、ベトナムの牛乳生産はこの数十年間で大きな進展を遂げ、今後も高い成長ポテンシャルを持っています。しかし、環境問題や品質維持、インフラ不足などの課題に対処するためには多方面での努力が求められます。この成長を持続するためには、政府、民間、国際機関が連携し、技術革新や政策支援を続けることが重要です。