ベトナムの馬肉生産量は、1961年にはわずか220トンから始まり、一貫して成長を続けて1977年には1,089トン、1999年には2,640トンに達するピークを迎えました。しかし、それ以降は安定せず減少傾向が見られ、ここ10年間では1,300~1,500トン台で推移しています。2023年の最新データは1,262トンで、近年ではやや低下した状況が明らかになりました。
ベトナムの馬肉推移(1961年~2023年)
年度 | (トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 1,262 |
-6.37% ↓
|
2022年 | 1,348 |
-0.21% ↓
|
2021年 | 1,351 |
-6.17% ↓
|
2020年 | 1,439 |
6.6% ↑
|
2019年 | 1,350 |
-2.39% ↓
|
2018年 | 1,383 |
-12.68% ↓
|
2017年 | 1,584 |
28.28% ↑
|
2016年 | 1,235 |
-18.7% ↓
|
2015年 | 1,519 |
11.77% ↑
|
2014年 | 1,359 |
-9% ↓
|
2013年 | 1,493 |
-13.93% ↓
|
2012年 | 1,735 |
37.37% ↑
|
2011年 | 1,263 |
4.38% ↑
|
2010年 | 1,210 |
-43.59% ↓
|
2009年 | 2,145 |
-25% ↓
|
2008年 | 2,860 |
42.86% ↑
|
2007年 | 2,002 |
1.11% ↑
|
2006年 | 1,980 |
-28% ↓
|
2005年 | 2,750 |
25% ↑
|
2004年 | 2,200 |
11.11% ↑
|
2003年 | 1,980 |
1.12% ↑
|
2002年 | 1,958 |
-15.24% ↓
|
2001年 | 2,310 |
3.45% ↑
|
2000年 | 2,233 |
-15.42% ↓
|
1999年 | 2,640 |
33.33% ↑
|
1998年 | 1,980 |
5.88% ↑
|
1997年 | 1,870 |
-4.23% ↓
|
1996年 | 1,953 |
1.43% ↑
|
1995年 | 1,925 | - |
1994年 | 1,925 |
2.94% ↑
|
1993年 | 1,870 | - |
1992年 | 1,870 | - |
1991年 | 1,870 |
6.25% ↑
|
1990年 | 1,760 |
6.67% ↑
|
1989年 | 1,650 |
7.14% ↑
|
1988年 | 1,540 |
1.45% ↑
|
1987年 | 1,518 |
10.4% ↑
|
1986年 | 1,375 |
8.7% ↑
|
1985年 | 1,265 |
17.35% ↑
|
1984年 | 1,078 |
5.38% ↑
|
1983年 | 1,023 |
-2.11% ↓
|
1982年 | 1,045 |
3.26% ↑
|
1981年 | 1,012 |
-8% ↓
|
1980年 | 1,100 |
13.64% ↑
|
1979年 | 968 |
-12% ↓
|
1978年 | 1,100 |
1.01% ↑
|
1977年 | 1,089 |
6.45% ↑
|
1976年 | 1,023 |
3.33% ↑
|
1975年 | 990 |
2.27% ↑
|
1974年 | 968 |
6.02% ↑
|
1973年 | 913 |
7.79% ↑
|
1972年 | 847 |
1.32% ↑
|
1971年 | 836 |
2.7% ↑
|
1970年 | 814 |
2.78% ↑
|
1969年 | 792 |
2.86% ↑
|
1968年 | 770 |
7.69% ↑
|
1967年 | 715 |
18.18% ↑
|
1966年 | 605 |
14.58% ↑
|
1965年 | 528 |
23.08% ↑
|
1964年 | 429 |
30% ↑
|
1963年 | 330 |
20% ↑
|
1962年 | 275 |
25% ↑
|
1961年 | 220 | - |
国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ベトナムの馬肉生産量の変遷は1961年から2023年までの60年以上の期間で大きな変化を見せています。最初の10年間では毎年増加を示し、馬産業の規模拡大が続いたことがわかります。このような背景には、おそらく経済発展の初期段階における家畜肉の需要拡大や、地域社会での伝統的な食文化への依存度が挙げられるでしょう。
特に1990年代から1999年にかけて、馬肉生産量は急激に増えました。1999年には2,640トンに達し、これはデータ上の最高記録となっています。この急激な伸びは、経済改革(ドイモイ政策)に伴い、農村部での馬飼育が盛んになり、国内市場での供給量が増加したためと考えられます。しかし、2000年以降は安定することなく減少と変動を繰り返しており、特に2010年には1,210トンに大幅な減少を記録しました。
ここ数十年における馬肉生産の低迷にはいくつかの要因が考えられます。第一に、社会全体の食文化の変化が関与している可能性があります。経済発展に伴い、食生活が多様化し、牛肉や豚肉、鶏肉といった他の主要たんぱく源にシフトが進んだと推測されます。第二に、地域衝突や疫病の流行が馬飼育に与えた影響も否定できません。例えば、動物疫病の管理や防疫の不備が原因で、馬の供給量が減少している地域も考えられます。
さらに、地理的な要因や政策的な誘導も馬肉産業の発展に影響を与えています。ベトナム北部の山岳地帯を中心に馬飼育が行われてきましたが、都市化や人口増加で農村地帯が縮小し、馬の生息環境が制限されつつあります。また、政府の農業政策が家畜畜産において比較的高収益が期待できる鶏や豚に重点を置いてきたことも、馬肉生産の後退を招いた一因かもしれません。
未来への課題として、まず馬飼育と生産の効率化が挙げられます。例えば、科学技術を活用した育種や、効率的な飼料管理の導入が必要です。また、国内市場だけでなく、周辺諸国への輸出を視野に入れた戦略が求められるでしょう。アジア諸国の中では、中国やモンゴルが伝統的に馬肉の消費が多い地域であり、これらの国々との連携や輸出効率化が有望な手段となる可能性があります。
一方で、持続可能な農業と地域経済の発展を両立させることも重要です。これには、馬飼育に携わる農家が安定的に収入を得られる仕組みの構築が含まれます。このためには、品質管理の向上やマーケティング戦略の拡充が必要となります。
結論として、ベトナムの馬肉生産は歴史的に成長と縮退を繰り返しつつも、近年では低迷している状態にあります。このままの状況が続くと、馬肉産業は縮小の一途をたどる可能性が高いです。そのため、政策支援や技術革新を通じて効率的な生産基盤を構築し、国内外での需要拡大を目指すべきと考えます。特に、他国との貿易協力や健康志向を促す消費者向けマーケティングは、将来の安定的な発展に寄与する重要な要素となるでしょう。