国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ベトナムのカシューナッツ生産量は1961年以降、大きな変動を経ながらも長期的には増加傾向にあります。1961年の700トンから始まり、2021年にピークを迎えた399,308トン、その後2023年には347,634トンと若干の減少を見せています。この傾向には、技術革新、国内外の需要の変化、気候や資源の制約が影響しており、同時に将来の生産における課題も浮き彫りになっています。
ベトナムのカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
| 年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
|---|---|---|
| 2023年 | 347,634 |
1.74% ↑
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| 2022年 | 341,680 |
-14.43% ↓
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| 2021年 | 399,308 |
14.58% ↑
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| 2020年 | 348,504 |
21.83% ↑
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| 2019年 | 286,047 |
7.38% ↑
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| 2018年 | 266,388 |
23.46% ↑
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| 2017年 | 215,765 |
-29.32% ↓
|
| 2016年 | 305,268 |
-13.28% ↓
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| 2015年 | 352,029 |
43.68% ↑
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| 2014年 | 245,003 |
-11.05% ↓
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| 2013年 | 275,439 |
-11.86% ↓
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| 2012年 | 312,516 |
-2.32% ↓
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| 2011年 | 319,943 |
2.63% ↑
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| 2010年 | 311,744 |
6.76% ↑
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| 2009年 | 292,000 |
-5.36% ↓
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| 2008年 | 308,541 |
-1.24% ↓
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| 2007年 | 312,425 |
37.55% ↑
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| 2006年 | 227,132 |
11.18% ↑
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| 2005年 | 204,289 |
-0.19% ↓
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| 2004年 | 204,674 |
24.5% ↑
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| 2003年 | 164,400 |
27.62% ↑
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| 2002年 | 128,817 |
76.27% ↑
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| 2001年 | 73,078 |
8.11% ↑
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| 2000年 | 67,599 |
89.86% ↑
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| 1999年 | 35,604 |
-33.14% ↓
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| 1998年 | 53,251 |
-20.41% ↓
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| 1997年 | 66,905 |
13.12% ↑
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| 1996年 | 59,144 |
16.92% ↑
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| 1995年 | 50,585 |
-2.51% ↓
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| 1994年 | 51,885 |
11.46% ↑
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| 1993年 | 46,550 |
96.17% ↑
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| 1992年 | 23,730 |
-25.84% ↓
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| 1991年 | 32,000 |
-77.14% ↓
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| 1990年 | 140,000 |
40% ↑
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| 1989年 | 100,000 |
25% ↑
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| 1988年 | 80,000 |
-20% ↓
|
| 1987年 | 100,000 |
25% ↑
|
| 1986年 | 80,000 |
33.33% ↑
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| 1985年 | 60,000 |
50% ↑
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| 1984年 | 40,000 |
100% ↑
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| 1983年 | 20,000 |
100% ↑
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| 1982年 | 10,000 |
53.85% ↑
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| 1981年 | 6,500 |
16.07% ↑
|
| 1980年 | 5,600 |
14.29% ↑
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| 1979年 | 4,900 | - |
| 1978年 | 4,900 | - |
| 1977年 | 4,900 | - |
| 1976年 | 4,900 |
40% ↑
|
| 1975年 | 3,500 | - |
| 1974年 | 3,500 | - |
| 1973年 | 3,500 | - |
| 1972年 | 3,500 | - |
| 1971年 | 3,500 |
66.67% ↑
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| 1970年 | 2,100 | - |
| 1969年 | 2,100 | - |
| 1968年 | 2,100 | - |
| 1967年 | 2,100 | - |
| 1966年 | 2,100 |
200% ↑
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| 1965年 | 700 | - |
| 1964年 | 700 | - |
| 1963年 | 700 | - |
| 1962年 | 700 | - |
| 1961年 | 700 | - |
ベトナムのカシューナッツ生産量推移は、農業技術の進歩や経済政策の影響を受けた動態を示しています。データによると、1961年から1980年代中旬にかけては漸増傾向にあり、特に1982年以降急激に増加し、1987年に100,000トンを突破しました。しかし、1991年には突如として32,000トンまで急落し、その後も1990年代後半まで不安定な時期が続きました。この期間の減産の背景には、国内の経済政策の転換や気候不順が考えられます。2000年以降、再び急激な増加が見られ、2003年に128,817トン、2007年には312,425トンと大幅に拡大しました。その後の10年間、300,000トン前後で推移し、2021年は過去最高の399,308トンを記録しましたが、2022年からは再び減少に転じています。
この増減の背景にはいくつかの要因が考えられます。一つは世界的なカシューナッツ需要の変化です。日本、中国、アメリカといった主要市場では健康志向や植物性食品の人気が高まりつつある一方、価格競争や他国との競争が激化しています。たとえば、同じアジアに位置するインドでは自国生産に加え輸入原料の加工も盛んで、ベトナムとの競争が続いています。
また、気候変動も大きな影響を与えています。カシューナッツの栽培には特定の気象条件が必要であり、近年では異常気象の増加が収穫量に悪影響をもたらしています。2021年以降の生産量減少は、これらの環境的要因に加え、土壌の劣化や水資源不足などが一因として挙げられます。
カシューナッツ産業の未来を考える上で、いくつかの課題解決が必要です。まず、小規模な農家が多数存在するベトナムでは、生産性を向上させるために現代的な農業技術や教育の普及が求められます。また、洪水や干ばつといった気候リスクへの対応が不可欠であり、これには灌漑設備の整備や気候変動に強い種の開発が必要です。さらに、国内の加工技術の向上や輸出促進政策の見直しを通じて、付加価値の高い製品作りが生産者の収入向上につながるでしょう。
地政学的な観点からも、カシューナッツ産業は安定的な成長のために慎重な政策が必要です。特に国際的な農産物市場の競争において、関税問題や貿易摩擦、他国からの市場シェア侵食といった課題によってベトナム農業全体に影響を及ぼす可能性があります。その一方で、近隣諸国や地域間の協力を促進し、市場拡大と輸出競争力の強化を図ることが重要です。
新型コロナウイルスの影響も無視できません。このパンデミックにより輸送や物流が混乱した結果、農産物の輸出は大幅に制限され、カシューナッツ産業にも打撃を与えました。これを契機に、国内消費市場の開拓やオンライン取引の強化が議論されるべき点です。
要するに、ベトナムのカシューナッツ産業は歴史的に多くの挑戦を乗り越えてきた一方で、気候、経済、地政学的な課題に直面しています。未来に向けて、農業技術の革新、インフラの整備、国際市場での競争力向上、地域間協力の深化といった具体策が、産業の持続可能な成長を支えるカギとなるでしょう。国際機関や他国との協力も不可欠であり、これらを活用することでベトナムはさらなる成果を上げる可能性を秘めています。