Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ベトナムの豚飼育数は1961年の7,165,200頭から長期的に増加を続け、2005年にはピークの27,434,896頭を記録しました。その後、一部の年で減少が見られるものの、2018年まで概ね安定した水準を保っていました。しかし、2019年には急激に減少し、19,615,526頭となりましたが、2022年には24,684,900頭まで回復しました。この変動の背景には、アフリカ豚熱(ASF)などの疫病や地政学的要因が関係していると考えられます。
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ベトナムの豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
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2022年 | 24,684,900 |
2021年 | 23,533,400 |
2020年 | 22,027,858 |
2019年 | 19,615,526 |
2018年 | 28,151,948 |
2017年 | 27,406,739 |
2016年 | 29,075,315 |
2015年 | 27,750,700 |
2014年 | 26,761,400 |
2013年 | 26,264,408 |
2012年 | 26,493,922 |
2011年 | 27,056,000 |
2010年 | 27,373,300 |
2009年 | 27,627,700 |
2008年 | 26,701,600 |
2007年 | 26,560,700 |
2006年 | 26,855,300 |
2005年 | 27,434,896 |
2004年 | 26,143,728 |
2003年 | 24,884,600 |
2002年 | 23,169,532 |
2001年 | 21,799,988 |
2000年 | 20,193,794 |
1999年 | 18,885,772 |
1998年 | 18,132,084 |
1997年 | 17,635,947 |
1996年 | 16,921,392 |
1995年 | 16,306,400 |
1994年 | 15,587,700 |
1993年 | 14,873,900 |
1992年 | 13,891,700 |
1991年 | 12,194,300 |
1990年 | 12,260,500 |
1989年 | 12,217,300 |
1988年 | 11,642,600 |
1987年 | 12,050,800 |
1986年 | 11,795,900 |
1985年 | 11,807,500 |
1984年 | 11,759,900 |
1983年 | 11,201,900 |
1982年 | 10,775,800 |
1981年 | 10,493,400 |
1980年 | 10,001,200 |
1979年 | 9,348,000 |
1978年 | 8,838,900 |
1977年 | 8,739,200 |
1976年 | 5,958,100 |
1975年 | 8,701,900 |
1974年 | 11,263,700 |
1973年 | 10,909,500 |
1972年 | 10,003,900 |
1971年 | 9,699,200 |
1970年 | 9,537,800 |
1969年 | 9,161,400 |
1968年 | 8,754,500 |
1967年 | 8,209,000 |
1966年 | 8,363,200 |
1965年 | 8,263,800 |
1964年 | 8,225,100 |
1963年 | 7,806,300 |
1962年 | 7,197,800 |
1961年 | 7,165,200 |
ベトナムはアジアにおける主要な養豚国の一つであり、豚肉は国民の重要なタンパク源となっています。1961年から近年に至るまでのデータを分析すると、同国の豚飼育数は長期的に増加傾向を示しており、1950年代後半から1990年代までの農村部の発展や養豚技術の向上が大きな要因となっていると考えられます。例えば1961年の7,165,200頭が、1990年には倍近い12,260,500頭に増加しました。この現象は、ベトナム経済の農業への依存度が高かったことにも繋がります。
2000年代になると、さらに大規模な増加が見られ、これは養豚産業の商業化や国内市場の拡大、輸出促進政策などが相互に影響していたと考えられます。特に、2005年に記録した27,434,896頭という数値は、ベトナムの豚飼育能力のピークを示しており、タイやインドネシアなど同地域の他国の規模と比較しても圧倒的に高い水準です。
しかしながら、2019年以降の減少には注意が必要です。19,615,526頭への急減は、世界的にも注目を集めたアフリカ豚熱(ASF: African Swine Fever)の蔓延が主な原因であり、ベトナムの養豚業界に壊滅的な影響を及ぼしました。ASFは豚に感染する致死率が高い疫病であり、人間には直接影響を及ぼさないものの、感染拡大を防ぐための大量殺処分が行われ、結果として飼育数が急激に縮小しました。このような影響は豚肉の価格高騰や国民の食糧供給にも波及し、経済や食料安全保障にも課題を投げかけました。
2020年以降のデータを見ると、徐々に飼育数が回復する兆しが見られ、2022年には24,684,900頭に達しました。この回復は政府や業界が導入した生産再建策や感染管理の強化による成果と見られます。ただし、ASFの再発防止や養豚業の持続可能な発展は引き続き重点課題です。
現在の課題として、疫病対策だけでなく、小規模農家と大規模農場の格差拡大にも注意が必要です。小規模農家は資金や技術面で弱く、感染症リスクに対応できない場合が多いため、技術支援や融資制度の拡充が求められています。また、地域間での協力や国際的な情報共有は、感染症への迅速な対応とともに、輸出競争力の強化にも寄与すると考えられます。
未来への具体的な提案として、ASFワクチンの開発推進や防疫体制のインフラ整備が挙げられます。また、養豚業のサステナビリティ向上のために、生態系に配慮した飼育方法への転換が必要です。たとえば、家畜廃棄物の適切な処理や大気中のメタン排出削減を目指す政策強化が求められます。
さらに、地政学的な視点から言えば、中国や韓国といった近隣諸国もASFの影響を受けているため、地域全体での疫病管理や技術の共有が進むことが重要です。特にASEAN(東南アジア諸国連合)内での協力体制を活用し、大規模な疫病拡散防止枠組みを構築することが望ましいです。
結論として、ベトナムの豚飼育数は歴史的に上昇と変動を繰り返しながらも、依然として地域における重要な養豚国の地位を保っています。ただし、今後の課題解決の成否は疫病への対応や養豚業の近代化にかかっています。同国が引き続き安定した生産を維持するためには、国内外の協力と科学技術の活用が欠かせません。