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ベトナムの馬飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ベトナムの馬の飼養数は1961年に48,800頭からスタートし、1970年代にかけて継続的に増加していました。その後波動を見せながらも、2000年代後半から急激な減少傾向が続いています。最新のデータである2022年には52,148頭となり、1961年時点の水準近くに戻っています。

年度 飼養数(頭)
2022年 52,148
2021年 51,616
2020年 50,941
2019年 50,692
2018年 53,473
2017年 86,759
2016年 54,117
2015年 65,739
2014年 66,924
2013年 79,010
2012年 83,760
2011年 88,100
2010年 93,125
2009年 102,219
2008年 121,000
2007年 103,500
2006年 87,300
2005年 110,500
2004年 113,371
2003年 112,497
2002年 110,900
2001年 113,400
2000年 126,500
1999年 149,600
1998年 122,800
1997年 119,801
1996年 125,799
1995年 126,800
1994年 131,100
1993年 132,900
1992年 133,100
1991年 133,700
1990年 141,300
1989年 142,200
1988年 133,000
1987年 136,000
1986年 136,600
1985年 132,700
1984年 128,800
1983年 122,000
1982年 113,200
1981年 118,600
1980年 115,600
1979年 126,000
1978年 143,000
1977年 142,100
1976年 133,000
1975年 129,000
1974年 125,000
1973年 118,000
1972年 110,000
1971年 108,000
1970年 105,000
1969年 103,000
1968年 100,000
1967年 98,000
1966年 95,000
1965年 82,000
1964年 75,000
1963年 65,000
1962年 55,000
1961年 48,800

ベトナムにおける馬の飼養数の推移を見ると、興味深い歴史的・地理的背景が浮かび上がります。1961年時点の48,800頭から1978年の143,000頭まで、数十年にわたり急増を続けていました。この期間は農業や交通手段として馬が重要な役割を果たしていた時期であり、国内での労働力および輸送手段としての馬の需要が急増したことが背景にあります。しかし、1979年を境に減少に転じ、その後は増減を繰り返すながらも、20世紀後半から21世紀にかけて大きな下降傾向が顕著となっています。1979年に126,000頭であった飼養数は、2022年には52,148頭と、大幅に削減されました。

この減少傾向の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、経済の発展とともに機械化が進み、馬に依存した伝統的な農業や輸送が徐々に姿を消していることが一因と見られます。バイクやトラックなどの交通手段の普及に伴い、多くの地域で馬の役割は農業用の労働力や輸送手段としての需要が著しく低下しました。特に都市化が進む主要な地域では、馬飼養のコストやスペースの問題も減少要因となっている可能性があります。

一方で、2017年から2018年に急激な減少が再び見られる点も注目に値します。2016年には54,117頭だった飼養数が2018年には53,473頭にまで落ち込み、その後2020年代にかけて横ばいからわずかな増加に転じています。この時期において、特にインフラ整備や農地開発政策といった政府の方針が馬を使用する需要をさらに低下させた可能性があります。また、気候変動や飼料価格の高騰も、小規模農家の馬の飼養を困難にした要素として挙げられます。

さらに、馬の飼養数の減少には地政学的リスクや、地域間の利害関係も影響を及ぼしていると考えられます。例えば、ベトナムでは近代化が進む中、隣国である中国やインドネシアなどの市場開放や貿易協定が経済に与える影響もありました。これにより、農業経済への外国産機械の流入や競争力の拡大が馬飼養の存続にさらに打撃を与える形となりました。

課題としては、馬文化そのものの存続が挙げられます。伝統的な観光地や文化祭事では未だに馬が活用されており、観光業としての新たな価値提供が期待されています。しかし、これを実現するためには、馬の健康管理、飼育環境の改善、関連職業の専門知識の継承が必須となるでしょう。

対策として、まず政府が農村地域における伝統的な馬利用を観光資源として持続させるプログラムを強化することが考えられます。また、地域間の協力枠組みを通じて、輸送業や農業の在り方を見直し、馬の飼養がもたらす生物多様性の維持や環境の維持といった長期的利益に注目する視点も必要です。加えて、抗生物質の適正使用や疫病対策など、生物衛生分野での技術的サポートを強化することも課題解決の重要な柱です。

結論として、データから明確に示されるように、ベトナムにおける馬飼養の減少は時代の流れを象徴しています。ただし、これを単なる衰退ではなく、新たな需要への転換や経済と文化の発展に合わせた再構築の機会と捉えるべきです。今後、国際社会や地方自治体間の協力のもと、馬を活用した観光・文化政策の強化と環境と共存する新しいモデル構築が急務となるでしょう。