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ベトナムのジャガイモ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、ベトナムのジャガイモ生産量は1960年代から急激な成長を見せ、1979年のピーク時には682,800トンに達しました。しかし、その後の1980年代に入ると急激な減少期に突入し、生産量の低迷が顕著となりました。1990年代から2010年代にかけては比較的安定期に入り、300,000トンから400,000トンの範囲で推移しましたが、直近では2020年代に再び減少傾向がみられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 340,864
2.41% ↑
2022年 332,851
2.83% ↑
2021年 323,685
10.06% ↑
2020年 294,090
-11.88% ↓
2019年 333,729
-11.33% ↓
2018年 376,377
23.94% ↑
2017年 303,675
0.48% ↑
2016年 302,229
-5.06% ↓
2015年 318,321
-1.05% ↓
2014年 321,700
2.65% ↑
2013年 313,383
-22.38% ↓
2012年 403,717
29.56% ↑
2011年 311,604
-11.71% ↓
2010年 352,949
-9.03% ↓
2009年 388,000
2.11% ↑
2008年 380,000
2.15% ↑
2007年 372,000
0.54% ↑
2006年 370,000 -
2005年 370,000
1.37% ↑
2004年 365,000
0.73% ↑
2003年 362,371
-4% ↓
2002年 377,472
19.47% ↑
2001年 315,950 -
2000年 315,950
-4.26% ↓
1999年 330,000
-11.05% ↓
1998年 371,009
6% ↑
1997年 350,000
9.38% ↑
1996年 320,000
6.67% ↑
1995年 300,000
-7.12% ↓
1994年 323,000
24.23% ↑
1993年 260,000
0.27% ↑
1992年 259,300
-9.02% ↓
1991年 285,000
-21.98% ↓
1990年 365,300
10.47% ↑
1989年 330,690
-4.63% ↓
1988年 346,750
-30.41% ↓
1987年 498,300
63.16% ↑
1986年 305,400
61.93% ↑
1985年 188,600
-35.21% ↓
1984年 291,100
11.32% ↑
1983年 261,500
-37.54% ↓
1982年 418,700
-27.31% ↓
1981年 576,000
-33.96% ↓
1980年 872,200
27.74% ↑
1979年 682,800
8.3% ↑
1978年 630,500
70.91% ↑
1977年 368,900
41.78% ↑
1976年 260,200
30.1% ↑
1975年 200,000
11.11% ↑
1974年 180,000
20% ↑
1973年 150,000
7.14% ↑
1972年 140,000
16.67% ↑
1971年 120,000
20% ↑
1970年 100,000
12.36% ↑
1969年 89,000
4.71% ↑
1968年 85,000
18.06% ↑
1967年 72,000
20% ↑
1966年 60,000
9.09% ↑
1965年 55,000
10% ↑
1964年 50,000 -
1963年 50,000
11.11% ↑
1962年 45,000
12.5% ↑
1961年 40,000 -

ベトナムのジャガイモ生産量の歴史は、同国の政治的、経済的、そして農業政策の変遷を反映しています。1961年の40,000トンから、わずか二十年で1979年には682,800トンという飛躍的な成長を遂げた背景には、農地の拡大と高まる食料需要、さらに集団農業の推進といった国家主導の施策があります。この生産量の伸びは、第二次インドシナ戦争後の食糧安全確保が主要な課題となっていた時期において、十分な進展といえるでしょう。

しかし、1980年以降、急激な減少に転じ始めました。この時期のピークからの急落により、1985年には188,600トンまで減少しました。この背景には、経済の自由化政策である「ドイモイ(刷新)」が進み、輸入食品が増えた結果、自給自足型の穀物や芋類の重要性が縮小したことが挙げられます。また、農業機械の老朽化やインフラ整備の不足、特に灌漑設備の未整備が、生産性を低下させる要因として作用しました。

1990年代から2000年代にかけては、生産量の安定期が見られました。しかしながら、依然としてピーク時の水準には達していません。この間のベトナム農業政策は、経済転換に重きを置き、米や輸出向けコーヒーの生産を優先したため、ジャガイモのような副次的な作物の生産には十分な支援がなされなかったのが実態です。世界的な市場価値や需要動向も、この期間中にジャガイモ生産に影響を与えました。

直近の2020年前後では、再び生産量は下落傾向を示しており、2020年には294,090トンにまで落ち込み、2022年時点でも332,851トンにとどまっています。この背景には、気候変動の影響や洪水、干ばつといった自然災害が深刻化していることが考えられます。さらに、収益性の高い野菜や果物への転作が進む一方で、ジャガイモ栽培の効率性が他の農産物に対して劣後している現状も課題です。特に農村地域におけるインフラ未整備の問題と高齢化した農家は、ジャガイモ生産の持続可能性に負の影響を与えています。

このような現状を踏まえると、いくつかの具体的な課題解決策が提案されます。まず第一に、生産性の向上を目指した先進的な農業技術の導入が重要です。例えば、高品質な耐病性品種や乾燥耐性のあるジャガイモの開発を支援することで、自然災害の影響を最小限に抑えることが可能です。また、灌漑設備の導入と補助金の拡大による農地管理の近代化も必要でしょう。さらに、地域課題を解決するため、生産農家と市場を密接に結びつけるサプライチェーンの効率化を図ることが有益です。これにより、収益性の向上が期待されます。

さらに地政学的な観点では、中国やインドのような近隣諸国が食料安全保障を強化する中、ベトナムもジャガイモを含めた農業の自給率向上に取り組むべきです。こうした地域間競争に対応するため、ASEAN諸国内で協力関係を構築し、専門知識や農業技術の共有を推進する枠組みが求められます。

気候変動の中で食料供給を安定させるため、国際機関や研究機関と協力し、持続可能な農業体制の構築が欠かせません。この取り組みは、ジャガイモだけでなく、他の主要作物の生産にも貢献し、ベトナム国内の食料安全保障の強化につながるでしょう。