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ベトナムのサツマイモ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が提供するデータによると、ベトナムのサツマイモ生産量は1961年の約122万6千トンに始まり、1980年代初頭にピークを迎えた後、全体的に減少傾向にあります。特に近年の2022年には約97万6千トンと、大幅な減少が見られます。これは、気候変動、農業政策、経済的要因などの複合的な影響が背景にあると考えられます。

年度 生産量(トン)
2022年 976,122
2021年 1,231,469
2020年 1,378,014
2019年 1,431,971
2018年 1,374,664
2017年 1,352,516
2016年 1,269,301
2015年 1,336,052
2014年 1,401,355
2013年 1,358,175
2012年 1,427,242
2011年 1,362,195
2010年 1,318,500
2009年 1,211,300
2008年 1,325,600
2007年 1,437,600
2006年 1,460,900
2005年 1,443,100
2004年 1,512,300
2003年 1,576,600
2002年 1,703,700
2001年 1,653,500
2000年 1,611,300
1999年 1,744,600
1998年 1,615,160
1997年 1,691,000
1996年 1,697,000
1995年 1,685,800
1994年 1,905,800
1993年 2,404,800
1992年 2,593,000
1991年 2,137,300
1990年 1,929,000
1989年 1,909,200
1988年 1,901,830
1987年 2,202,300
1986年 1,958,700
1985年 1,777,700
1984年 1,641,600
1983年 1,842,100
1982年 2,380,900
1981年 2,630,300
1980年 2,417,600
1979年 2,172,000
1978年 1,883,000
1977年 1,524,900
1976年 1,484,600
1975年 919,500
1974年 1,200,000
1973年 1,179,000
1972年 1,100,500
1971年 1,120,000
1970年 1,119,750
1969年 1,126,000
1968年 1,065,000
1967年 1,084,000
1966年 1,076,000
1965年 1,100,000
1964年 1,121,000
1963年 1,100,000
1962年 1,133,000
1961年 1,226,000

FAOの最新データによると、ベトナムのサツマイモ生産量は1961年から約60年にわたる推移を見せ、複雑な増減傾向をたどっています。1960年代から1970年代までは1年間で約110万トン前後を維持していましたが、1975年のベトナム戦争終結直後、生産量は約92万トンに急激に低下しました。その後の復興に伴い、1979年に217万トン、1981年には263万トンと増加し、1980年代初頭にピークを迎えました。しかし、その後は急激な減少が始まり、2022年には過去最低規模となる約97万トンにまで落ち込んでいます。

この動きにはいくつかの要因が考えられます。一つ目は、経済発展に伴う農作物の多様化です。サツマイモは貧困層の食糧としての側面が強かった一方、経済の発展とともに米や輸出向け作物(例えばコーヒーやカシューナッツ)への重点が移ったことが挙げられます。また、都市化が進むことで農地が減少し、サツマイモ栽培に適した土地が見直されたことも背景といえるでしょう。

さらに近年の気候変動が、この変動に拍車をかけていることが指摘されています。ベトナムはジャングル気候や台風リスクが高い国ですが、異常気象が頻発するなかで農業生産が不安定になり、特に乾燥耐性が限定的なサツマイモの栽培に支障をきたしています。このような気象条件は、収穫量の年次変動を引き起こしていると考えられます。

政策面でも課題が見られます。近年、ベトナム政府は国際市場向けの主要商品作物の支援に重点を置いており、サツマイモのような地域食品の生産支援への関心が薄れているとされています。その結果として、農家が作付面積を縮小し、新しい技術や資本の投入も難しくなっている現状が影響しています。

この減少傾向は、新型コロナウイルスの世界的流行の影響とも関連している可能性があります。2020年の生産量は約137万8千トンと一時的に増加しましたが、物流の停滞や市場の需要減少が直接間接的に影響し、2021年および2022年には再び大幅な減少へと転じました。この状況はサツマイモ産業の脆弱性を浮き彫りにしています。

未来に向けて、いくつかの提案が考えられます。まず、品種改良と持続可能な農業技術の導入を通じて、気候変動への適応力を高めることが重要です。例えば、乾燥耐性や病害虫抵抗力を持つ品種の研究開発が期待されます。また、農業インフラの整備や農家への金融支援を行い、特に小規模農業経営者に技術教育や高収量品種の配布を行うことで、生産効率を引き上げられる可能性があります。

さらに、国際市場への販路開拓も課題と考えられます。近隣の日本や韓国、中国など、サツマイモ需要の高い国々への輸出促進を図ることで、国内市場の低迷を補うことができるでしょう。一方で、地域間の協力を強化し、アジア全域でのサツマイモ生産・流通ネットワークの構築により、価格安定や市場アクセスの向上を目指すべきです。

結論として、ベトナムのサツマイモ生産量の減少は、農業政策、経済的な移行、気候変動、そして近年のパンデミックの影響を反映した複合的な現象です。政府や国際機関が一体となり、包括的かつ持続可能な方針を策定することで、サツマイモ生産の回復と安定を支援することが求められています。