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ベトナムのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ベトナムのコーヒー豆生産量は1961年の4,100トンから2022年の1,953,990トンへと大幅に増加しています。この成長は特に1980年代以降顕著で、1990年以降は継続的に右肩上がりの成長を示しています。21世紀に入り、生産量は100万トンを超え、直近のデータでは200万トンに近づいています。この急成長は、ベトナムが世界有数のコーヒー生産国としての地位を確立する上で重要な役割を果たしており、世界市場への影響も大きいです。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,956,782
0.14% ↑
2022年 1,953,990
5.91% ↑
2021年 1,845,033
4.62% ↑
2020年 1,763,476
4.55% ↑
2019年 1,686,765
4.36% ↑
2018年 1,616,307
4.79% ↑
2017年 1,542,398
5.59% ↑
2016年 1,460,800
0.54% ↑
2015年 1,452,999
3.31% ↑
2014年 1,406,469
6.01% ↑
2013年 1,326,688
5.25% ↑
2012年 1,260,463
-1.26% ↓
2011年 1,276,506
15.45% ↑
2010年 1,105,700
4.55% ↑
2009年 1,057,540
0.16% ↑
2008年 1,055,811
-15.6% ↓
2007年 1,251,000
26.97% ↑
2006年 985,300
18.57% ↑
2005年 831,000
-9.06% ↓
2004年 913,800
15.13% ↑
2003年 793,700
13.47% ↑
2002年 699,500
-16.79% ↓
2001年 840,600
4.75% ↑
2000年 802,500
45.07% ↑
1999年 553,200
35.16% ↑
1998年 409,300
-2.66% ↓
1997年 420,500
31.37% ↑
1996年 320,100
46.83% ↑
1995年 218,000
21.11% ↑
1994年 180,000
32.26% ↑
1993年 136,100
14.18% ↑
1992年 119,200
19.2% ↑
1991年 100,000
8.7% ↑
1990年 92,000
124.94% ↑
1989年 40,900
-2.62% ↓
1988年 42,000
52.73% ↑
1987年 27,500
10% ↑
1986年 25,000
103.25% ↑
1985年 12,300
156.25% ↑
1984年 4,800
-15.79% ↓
1983年 5,700
7.55% ↑
1982年 5,300 -
1981年 5,300
-36.9% ↓
1980年 8,400
64.71% ↑
1979年 5,100
-5.56% ↓
1978年 5,400
-3.57% ↓
1977年 5,600
-42.27% ↓
1976年 9,700
42.65% ↑
1975年 6,800
13.33% ↑
1974年 6,000
-9.09% ↓
1973年 6,600
-5.71% ↓
1972年 7,000
7.69% ↑
1971年 6,500
-10.96% ↓
1970年 7,300
12.31% ↑
1969年 6,500
8.33% ↑
1968年 6,000
-14.29% ↓
1967年 7,000
11.11% ↑
1966年 6,300
-16% ↓
1965年 7,500
36.36% ↑
1964年 5,500
22.22% ↑
1963年 4,500
11.94% ↑
1962年 4,020
-1.95% ↓
1961年 4,100 -

ベトナムのコーヒー豆生産量は、1961年の4,100トンという控えめな規模から、2022年には1,953,990トンにまで成長しました。この大幅な増加は、コーヒー農業の効率化、輸出指向型の経済政策、国内外の需要の拡大などが相互作用した結果と見られます。特に、1986年に始まった「ドイモイ(刷新)」政策以降、経済の自由化が進み、農業セクターでも専門性が強化され、コーヒー生産が急速に拡大しました。1985年には12,300トンだった生産量は、1990年には92,000トンとなり、1996年には初めて生産量が30万トンを突破しました。その後も急成長を続け、2000年には80万トン、2022年にはついに200万トンに迫る勢いを見せています。

世界的に見ると、ベトナムは今日、ブラジルに次ぐ世界第2位のコーヒー生産国となっています。この成功の原動力となったのは、主に大規模農場の集合体を中心とした効率的な生産体制や、二酸化炭素排出削減を意識した持続可能な農法への転換です。ベトナムでは主にロブスタ種のコーヒーが栽培されており、この品種は収量が高く、栽培条件に対する耐性も高いため、この生産成長を支える大きな要因となっています。

しかしながら、近年の気候変動は、この成功に影を落とす要因ともなり得ます。ベトナムの主要なコーヒー栽培地域である中央高原地帯は、高温化や降雨パターンの変化、さらには旱魃や洪水といった自然災害に直面しており、これが収穫や品質に影響を与える可能性が指摘されています。また、農業用水の確保や土壌の劣化防止といった課題も浮き彫りとなっています。さらに、労働力不足や賃金の上昇といった社会的要因も、生産性維持の観点からは頭痛の種となりつつあります。

このため、今後の課題としては、気候変動への適応策が挙げられます。例えば、耐干ばつ性の高い新品種の開発や、精密農業技術を駆使した効率的な農地管理などが重要となるでしょう。また、大手グローバル企業や国際機関との協調による資金援助や技術移転も期待されます。一方で、農民への教育を通じて、持続可能な農業技術や環境配慮型の栽培方法を普及させる取り組みも不可欠です。

地域別の見方をすると、特に中央高原地域では、社会経済的な課題の克服も急務です。この地域は歴史的にもベトナムのコーヒー生産を支えてきましたが、農地拡大によって森林伐採が広がり、環境破壊が深刻化しています。この問題に対しては、再植林活動や農業と林業が共存するアグロフォレストリーの導入が有効な解決策となり得ます。

現在、世界的なコーヒー需要は拡大していますが、その多くはアジアやアフリカ地域からの経済成長が押し上げるものです。ベトナムからの高品質なロブスタ豆の輸出が増えれば、さらなる経済発展が期待できるでしょう。ただし、地政学リスクや貿易摩擦などの要因が輸出市場への影響を及ぼす可能性もあります。そのため、国内市場の拡大や付加価値商品の開発にも力を入れる必要があります。

結論として、ベトナムのコーヒー豆生産量の急成長は、農業技術向上と輸出拡大戦略の成功を示す良い例と言えます。ただし、環境への影響や持続可能性に配慮した体制づくりが急務です。国や国際機関は、技術支援やインフラ整備、地域コミュニティの経済的支援に注力することで、未来の課題に備えるべきです。これにより、ベトナムのコーヒー産業はさらに安定した成長を遂げ、世界市場でもその存在感を一層高められることでしょう。