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ベトナムのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ベトナムのブドウ生産量は1999年の21,000トンから2023年の24,924トンへと長期的な増加傾向を見せています。しかし、この間には幾度か大きな変動が見られ、中でも2004年から2010年にかけては急増とその後の急減が明確です。同様に、2015年には過去最高の31,030トンを記録しましたが、その後は再び安定した水準へと戻っています。短期的には、2022年から2023年にかけて約1,462トン減少しており、生産量の回復には課題が見られます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 24,924
-5.54% ↓
2022年 26,386
-2.8% ↓
2021年 27,147
-1.26% ↓
2020年 27,493
5.17% ↑
2019年 26,141
3.88% ↑
2018年 25,165
-4.15% ↓
2017年 26,255
-1.94% ↓
2016年 26,774
-13.72% ↓
2015年 31,030
29.98% ↑
2014年 23,874
24.37% ↑
2013年 19,196
25.4% ↑
2012年 15,308
3.77% ↑
2011年 14,751
-11.67% ↓
2010年 16,700
-30.42% ↓
2009年 24,000
-8.75% ↓
2008年 26,300
-6.74% ↓
2007年 28,200
-0.7% ↓
2006年 28,400
-0.7% ↓
2005年 28,600
14.4% ↑
2004年 25,000
17.37% ↑
2003年 21,300
0.45% ↑
2002年 21,204
-0.59% ↓
2001年 21,331
0.23% ↑
2000年 21,283
1.35% ↑
1999年 21,000 -

ベトナムのブドウ生産量は、20世紀末から着実に増加を続けており、1999年から2005年にかけては毎年少しずつ増加しました。この時期の増加は、国内農業技術の改良と、ブドウ栽培に向く地域での耕作面積拡大が影響していると考えられます。また、2004年から2005年にかけて生産量が25,000トンから28,600トンに急増した背景には、政府による農業振興政策や、地元経済の成長が寄与している可能性があります。

一方で、2006年と2009年の間では生産量が減少しています。この時期の減少は、降雨量の減少や土壌の劣化が農業収量に影響を与えたことによるものと推測されます。特に2010年から2012年にかけての大幅な低下は注目に値し、生産量は16,700トンを記録し、ここ10年で最低となりました。要因の一つとして、気候変動や台風被害などの自然災害が挙げられます。こうした環境要因によって、ブドウ栽培の持続可能性そのものが脅かされていた可能性があります。

それでも、ベトナムのブドウ産業は2013年から2015年にかけて急激に生産量を回復しました。この間、農家が高収量の新種のブドウを導入し始めたことや、農地改革によるブドウ専用農地の拡大が功を奏しました。これは、特定の地域における集中的な栽培管理が可能になったことを示します。2015年には過去最大の31,030トンを生産しましたが、この年以降、生産量は再び安定した水準にとどまり、ほぼ横ばい状態が続いています。

近年では2020年をピークに2023年まで減少が続いています。降雨や日照の変動を含む気候的な要因に加え、ブドウ生産におけるコスト高や地元市場での競争が影響していると考えられます。また、他国と比較しても、ベトナムの生産量はアジア地域内では中規模であり、中国やインドの生産規模と違って輸出を主軸にした成長戦略を十分に描けていない点が見受けられます。

将来的には、地域課題として挙がる気候変動への対応が一層重要です。例えば、耐暑性や耐病性に優れた品種の開発や、灌漑設備の整備を加速させることが求められます。また、国内市場の需要に着目した品質向上策や、インドや中国との競争に打ち勝つための輸出インフラの強化が必要です。例えばブランド戦略やオーガニック認証の取得などで、他地域との差別化を図ることが考えられます。

さらに、地政学的なリスクとして南シナ海での競争や、国際的な物流網の変化がブドウの輸出に影響を与える可能性があります。このため、近年他国が取り組んでいるような地域間協力の促進を通じた農業技術の共有や、輸出ルートの多様化を視野に入れるべきです。また、農業の将来を見据えた人材育成と、国際的な農業基金へのアクセスを強化することで、より持続可能な成長を実現できる可能性があります。

ベトナムのブドウ産業は、過去の波を克服しながら成長してきましたが、さらなる持続可能な発展を目指して、気候変動への適応策と国際市場での競争力強化が重要です。地元の生産者への政策支援をより強化し、イノベーションと市場志向の戦略を展開することが求められています。