ベトナムのパイナップル生産量推移（1961年～2023年）

国際連合食糧農業機関（FAO）による最新データによると、ベトナムのパイナップル生産量は1961年の60,000トンから2023年には780,558トンにまで増加しました。特に2000年以降、年々着実な成長を遂げ、近年の生産量も安定しています。しかし、政治的影響、経済政策、自然災害などの要因で、一部の時期には生産量が減少しています。

ベトナムのパイナップル生産は、1960年代から持続的な成長を遂げました。当初は小規模農業が主体でしたが、1970年頃には年間生産量が180,000トンに達し、国内での果物需要を支える重要な農産物となりました。その後1975年から1980年にかけての戦後復興期には、生産設備や輸送インフラの整備が遅れ、150,000トンまで一時的に生産量が低下しました。しかし1980年代後半より、農業政策の自由化や輸出促進策、技術改革を背景に、生産量は再び上昇し、1990年には467,851トンを記録しました。

ただし、1990年代に入ると新しい課題が現れました。具体的には、市場競争の激化や集約的農業が進展する中国やタイなど、近隣諸国との競争が影響し、1995年には生産量が184,753トンに大幅に低下しました。この下落には、国内農業政策の非効率性や、インフラ未整備の課題も影響したと考えられます。この時期を乗り越えるべく、2000年代に入るとインフラ整備や農家への技術普及が進み、2005年以降の生産量は急回復を遂げ、毎年成長を続けています。

2010年から2023年のデータでは、パイナップル生産はさらに大きな成長を見せています。2010年の514,793トンから2023年には780,558トンとなり、特に2020年代以降の持続的な伸びは、輸出市場の拡大と高品質品種の導入が成功した結果といえます。しかし、2022年には705,460トンに一時減少しました。この原因として考えられるのは、気候変動の影響と新型コロナウイルス感染症による物流障害です。しかしながら、2023年には780,558トンと再び最高記録を更新しており、生産の安定化が進んでいることがうかがえます。

ベトナムのパイナップル生産の将来にはいくつかの課題が残されています。第一に、気候変動の影響で、洪水や干ばつなどの自然災害が頻発していることが挙げられます。特に2016年に観測された555,407トンまでの減少は、このような気象要因の直接的影響である可能性があります。気候リスクを軽減するためには、耐性のある品種の育成や、農地の水管理技術の向上が重要とされます。第二に、グローバル市場での競争を維持するために、輸出規格に対応した品質向上と、サプライチェーン管理の強化が求められます。

また、地域間の協力も重要な課題です。特に日本や韓国、中国といった近隣国、さらにはEU諸国への輸出が拡大しており、これらの市場への対応力がベトナム農業全体の未来にも影響を与えるでしょう。一方で、地政学的リスクとしては、輸出インフラが集中する南部地域での災害や地域衝突が懸念されています。これに対しては、北部や中部地域の農地への分散化を進めることでリスク分散を図ることが求められます。

総括すると、ベトナムのパイナップル生産量は長期的に顕著な増加を示していますが、気候変動や国際市場との連携、さらに国内インフラ整備といった課題に対する具体策が将来の持続可能な成長の鍵となります。政策提言としては、耐候性農業技術の導入、輸出管理体制の強化、地元農民への補助金や教育プログラムの拡充が挙げられ、これにより持続的な農業経済の確立が期待されるでしょう。