国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、ベトナムのトウモロコシ生産量は1961年から2022年までの間で大きな変化を示しています。1960年代から1980年代にかけて緩やかな増加傾向が見られましたが、1990年代後半から2000年代初頭には著しい成長を遂げ、2003年以降は年間300万トンを超える水準に達しました。しかし、2016年をピークに減少傾向が続き、2022年には442万トンとやや低下しています。これには国内農業事情や国際要因が影響を与えていると考えられます。
ベトナムのトウモロコシ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 4,423,186 |
2021年 | 4,446,383 |
2020年 | 4,558,107 |
2019年 | 4,732,149 |
2018年 | 4,874,054 |
2017年 | 5,109,766 |
2016年 | 5,244,140 |
2015年 | 5,287,261 |
2014年 | 5,202,511 |
2013年 | 5,190,895 |
2012年 | 4,973,482 |
2011年 | 4,835,717 |
2010年 | 4,606,800 |
2009年 | 4,371,700 |
2008年 | 4,573,100 |
2007年 | 4,303,200 |
2006年 | 3,854,500 |
2005年 | 3,787,100 |
2004年 | 3,430,900 |
2003年 | 3,136,300 |
2002年 | 2,511,200 |
2001年 | 2,161,700 |
2000年 | 2,005,900 |
1999年 | 1,753,100 |
1998年 | 1,612,000 |
1997年 | 1,650,600 |
1996年 | 1,536,700 |
1995年 | 1,177,200 |
1994年 | 1,143,900 |
1993年 | 882,200 |
1992年 | 747,900 |
1991年 | 672,000 |
1990年 | 671,000 |
1989年 | 837,900 |
1988年 | 814,850 |
1987年 | 561,000 |
1986年 | 569,800 |
1985年 | 587,100 |
1984年 | 532,200 |
1983年 | 468,000 |
1982年 | 438,100 |
1981年 | 429,600 |
1980年 | 428,800 |
1979年 | 371,200 |
1978年 | 433,500 |
1977年 | 403,700 |
1976年 | 386,800 |
1975年 | 280,600 |
1974年 | 315,000 |
1973年 | 300,500 |
1972年 | 261,700 |
1971年 | 237,000 |
1970年 | 257,300 |
1969年 | 271,000 |
1968年 | 262,000 |
1967年 | 253,000 |
1966年 | 256,500 |
1965年 | 319,100 |
1964年 | 319,600 |
1963年 | 253,840 |
1962年 | 314,085 |
1961年 | 292,200 |
ベトナムのトウモロコシ生産量は、過去数十年間で大きな波を描いてきました。初期の1960年代は年間30万トンから40万トンという比較的低い水準にありましたが、これは当時の農業技術やインフラ整備が未成熟であったこと、また農地の利用が国内の主要作物である米に集中していたことが要因と考えられます。その後、1980年代には農業の機械化や栽培技術の向上により生産量が持ち直し、1960年代との比較で約2倍以上の800万トン近くに達しました。
1990年代から2000年代初頭はさらに生産が加速し、トウモロコシの栽培が国内の急増する畜産業の需要に応じるために拡大されました。1990年の約67万トンという水準から、2003年には300万トンを超え、2009年には約450万トンと飛躍的増加を見せました。この成長は、主に優良育種の導入や政府による政策支援の成果とされています。加えて、トウモロコシは飼料作物としての需要が強く、これは豚や家禽の飼育率が上昇するアジア全域の一つの傾向とも一致しています。
しかし、2016年以降、農業生産量は減少傾向を示し、2022年には440万トン台にまで落ち込んでいます。この要因にはいくつかの地政学的および環境的な理由が考えられます。一つには、トウモロコシの輸入が国際市場での価格低下や物流の効率化により増加し、国内での生産意欲が低下してしまったことが挙げられます。例えば、アメリカやブラジルといった主要輸出国からの安価なトウモロコシがベトナム市場に流れ込んでいる点が影響しています。また、気候変動による異常気象が収穫量に悪影響を与えていることも無視できない要因です。
さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、2020年以降は農作業への労働力供給や流通網が断絶されるなどの影響も見られました。この結果、国内のトウモロコシ産業は停滞し、減少の一因となったと考えられます。
今後、ベトナムは以下のような課題を解決することでトウモロコシ生産の活性化を図る必要があります。まず、農業分野での生産性向上に向けたさらなる技術革新が求められます。例えば、耐候性や病害虫に強い品種の研究開発や、スマート農業技術の活用が挙げられます。また、土地資源の効率的な利用と環境保護のバランスを取るために、農業政策の見直しが求められるでしょう。
さらに、気候変動により予測不能なリスクが増加している中、灌漑や貯水設備の改善など、気象による影響を最小限に抑えるインフラの整備も重要です。国際協力による技術移転や、地域間の情報共有もその一環として役立つでしょう。また、輸入依存体制を改善するためには、トウモロコシに関する国内生産の競争力を向上させる政策、例えば一時的な補助金や価格対策の導入も考えられます。
結論として、ベトナムのトウモロコシ生産の過去から現在までの推移をみると、重点的な政府政策と持続可能な農業戦略がその成果に強い影響を与えているといえます。今後の国際市場環境の変化や気候変動リスクに柔軟に対応することで、この作物の生産を持続可能かつ安定的に維持するための基盤が構築されることが期待されます。