国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年に更新したデータによると、ベトナムの牛飼養数は1961年の約187万頭から2022年の約634万頭へと長期的に増加してきました。特に1980年代から2006年にかけて顕著な増加が見られたものの、2008年以降一時的な減少傾向が観察されました。その後2015年から回復し、2021年には約636万頭に達し、ほぼ安定しています。これらの変化には経済発展、農業政策の変更、気候変動の影響などが複合的に関与しています。
ベトナムの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 6,339,400 |
2021年 | 6,365,300 |
2020年 | 6,230,519 |
2019年 | 6,060,024 |
2018年 | 5,802,907 |
2017年 | 5,654,901 |
2016年 | 5,496,557 |
2015年 | 5,367,200 |
2014年 | 5,234,300 |
2013年 | 5,156,727 |
2012年 | 5,194,178 |
2011年 | 5,436,600 |
2010年 | 5,808,300 |
2009年 | 6,103,300 |
2008年 | 6,337,700 |
2007年 | 6,724,700 |
2006年 | 6,510,800 |
2005年 | 5,540,700 |
2004年 | 4,907,710 |
2003年 | 4,394,400 |
2002年 | 4,062,966 |
2001年 | 3,899,683 |
2000年 | 4,127,872 |
1999年 | 4,063,700 |
1998年 | 3,984,176 |
1997年 | 3,904,818 |
1996年 | 3,800,336 |
1995年 | 3,638,900 |
1994年 | 3,466,800 |
1993年 | 3,333,000 |
1992年 | 3,201,800 |
1991年 | 3,135,600 |
1990年 | 3,116,900 |
1989年 | 3,201,700 |
1988年 | 3,126,600 |
1987年 | 2,979,130 |
1986年 | 2,783,500 |
1985年 | 2,597,600 |
1984年 | 2,418,000 |
1983年 | 2,173,500 |
1982年 | 1,944,400 |
1981年 | 1,772,600 |
1980年 | 1,664,200 |
1979年 | 1,628,100 |
1978年 | 1,646,000 |
1977年 | 1,655,700 |
1976年 | 1,595,200 |
1975年 | 1,466,200 |
1974年 | 1,628,500 |
1973年 | 1,570,200 |
1972年 | 1,510,600 |
1971年 | 1,588,500 |
1970年 | 1,616,000 |
1969年 | 1,670,800 |
1968年 | 1,699,300 |
1967年 | 1,788,300 |
1966年 | 1,808,900 |
1965年 | 1,914,800 |
1964年 | 1,970,500 |
1963年 | 1,979,200 |
1962年 | 1,897,000 |
1961年 | 1,871,800 |
ベトナムにおける牛飼養数の推移を見ると、1961年から1980年までは比較的ゆるやかな増減が繰り返される時期でした。1960年代にはアメリカとのベトナム戦争の影響で、1966年以降牛の頭数が減少に転じ、1975年には約147万頭と、これまでで最も小さい値を記録しました。これは戦争による農村地域の荒廃が、牛の飼養に重大な悪影響を与えた結果と考えられます。
1980年代初頭から牛飼養数は急増傾向を示し、この背景にはベトナムの「ドイモイ政策」と呼ばれる市場経済への転換が密接に関係していることが挙げられます。この改革は農業生産の多様化を促進し、牛肉や乳製品の需要拡大に対応するための飼養数増加につながりました。この期間において、人口増加や家畜製品の需要の高まりも、牛飼養数の増加を後押しした要因です。
2006年に650万頭という過去最大の頭数に達した後、2008年から2014年にかけて減少傾向が見られました。この現象の一因として、気候変動による干ばつや洪水、または畜産に関する疫病の影響が挙げられます。また、都市化の進展により農地が縮小し、牧草地が減少したことも関連している可能性があります。この期間、牛肉の輸入が特に急増し、需要が国内飼養だけでは満たせなくなった現象とも重なっています。
2015年以降、牛飼養数の増加が再び始まり、2021年には大幅に回復しました。最近の増加には政府による畜産振興政策が関係しており、牛乳や牛肉市場の需要を満たすための生産効率向上を目指した支援措置が重要な役割を果たしています。また、ベトナムが輸出指向型経済にシフトしている中で、牛肉や乳製品の生産は外貨獲得の新たな手段として注目されています。
しかしながら、2022年のデータでは牛飼養数がやや減少し、これはコロナ禍の影響や、新たな畜産関連疫病の発生が影響している可能性があります。これにより、供給チェーンの混乱も加わり、牛飼養事業には課題が増えました。
これらの動向を踏まえ、今後の課題は、安定的な飼養数の維持と環境対策の両立です。牛飼養は、温室効果ガスであるメタンの排出を伴うため、地球温暖化に大きな影響を及ぼします。政府や畜産農家には、飼養方法を改良し、持続可能な畜産業に向けた技術革新が求められます。また、感染症や気候変動のリスク管理を強化するため、生物多様性の保持と飼養地適応の研究が不可欠です。
具体的には、政府がより強固なサポート体制を取ることが考えられます。例えば、農村部での効果的な生産技術の普及、先進的な家畜管理ソフトウェアの導入、地域間での協力体制の構築が求められるでしょう。また、地域衝突防止や国際的な貿易協定の強化を通じて、輸出促進を図りながら、国内市場の安定確保にも注力する必要があります。
結論として、ベトナムの牛飼養の長期的な推移は、国の経済・政策の変遷や地政学的背景が大きく影響しています。現在の課題に対応するためには、持続可能性と国際競争力を考慮した包括的な対策を講じる必要があります。これにより、ベトナム国内外で畜産業がさらなる発展を遂げる可能性が広がるでしょう。