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ハンガリーの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ハンガリーの牛乳生産量は1961年から2023年まで長期的な推移を見せています。この間、生産量は1961年の約1,897,000トンから1988年の約2,873,000トンへと大きく増加しましたが、1990年代初頭に減少傾向となりました。その後、2000年代以降は概ね安定した水準で推移し、直近の2023年の生産量は約2,028,000トンとなっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 2,027,570
-0.63% ↓
2022年 2,040,340
-1.92% ↓
2021年 2,080,230
3.27% ↑
2020年 2,014,330
2.63% ↑
2019年 1,962,780
0.72% ↑
2018年 1,948,830
-0.95% ↓
2017年 1,967,496
2.57% ↑
2016年 1,918,232
-1.19% ↓
2015年 1,941,326
3.71% ↑
2014年 1,871,885
5.59% ↑
2013年 1,772,762
-2.21% ↓
2012年 1,812,849
5.86% ↑
2011年 1,712,478
1.64% ↑
2010年 1,684,896
-4.17% ↓
2009年 1,758,219
-4.47% ↓
2008年 1,840,491
-0.09% ↓
2007年 1,842,233
-0.1% ↓
2006年 1,844,075
-4.39% ↓
2005年 1,928,739
1.8% ↑
2004年 1,894,602
-6.97% ↓
2003年 2,036,620
-4.37% ↓
2002年 2,129,795
-0.58% ↓
2001年 2,142,173
-0.03% ↓
2000年 2,142,915
1.73% ↑
1999年 2,106,560 -
1998年 2,106,556
5.9% ↑
1997年 1,989,239
0.69% ↑
1996年 1,975,640
-0.19% ↓
1995年 1,979,500
2.22% ↑
1994年 1,936,420
-6.91% ↓
1993年 2,080,060
-9.61% ↓
1992年 2,301,100
-7.59% ↓
1991年 2,490,100
-12.51% ↓
1990年 2,846,000
-0.56% ↓
1989年 2,862,000
-0.4% ↓
1988年 2,873,400
2.02% ↑
1987年 2,816,486
1.94% ↑
1986年 2,762,874
1.95% ↑
1985年 2,710,033
-3.13% ↓
1984年 2,797,480
-0.32% ↓
1983年 2,806,544
2.48% ↑
1982年 2,738,667
2.28% ↑
1981年 2,677,691
5.23% ↑
1980年 2,544,615
3.67% ↑
1979年 2,454,593
5.48% ↑
1978年 2,327,108
9.01% ↑
1977年 2,134,697
10.65% ↑
1976年 1,929,190
5.98% ↑
1975年 1,820,329
-1.58% ↓
1974年 1,849,576
3.79% ↑
1973年 1,782,065
8.42% ↑
1972年 1,643,617
1.63% ↑
1971年 1,617,261
-3.74% ↓
1970年 1,680,133
0.02% ↑
1969年 1,679,800
-0.73% ↓
1968年 1,692,100
-0.88% ↓
1967年 1,707,100
9.46% ↑
1966年 1,559,500
-11.42% ↓
1965年 1,760,579
-5.04% ↓
1964年 1,854,000
2.86% ↑
1963年 1,802,500
-0.11% ↓
1962年 1,804,560
-4.86% ↓
1961年 1,896,745 -

データによると、ハンガリーの牛乳生産量は1960年代から1980年代後半にかけて着実に増加し、1988年にはピークの約2,873,000トンに達しました。この増加傾向は、大規模農業の発展や需要の高まり、生産効率の向上によるものと考えられます。しかし、1990年代以降になると減少が顕著になり、1994年には約1,936,000トンと1988年のピーク時から30%以上の減少を記録しました。この時期は、社会主義体制の崩壊や市場経済への移行という体制変化が影響を与えたと考えられます。特に、農業政策や補助金の削減、小規模農家の競争力低下が要因として挙げられるでしょう。

2000年代に入ると、生産量はほぼ一定の範囲で推移しつつあります。2012年から2023年の間、生産量は基本的に1,800,000トンから2,080,000トン前後の範囲内に収まり、近年では2020年にわずかな上昇(約2,014,000トン)がありますが、その後再び緩やかな減少傾向が見られます。これは、気候変動や牧草地の利用減少、農業従事者の高齢化と人手不足が影響していると考えられます。

他国と比較してみると、近隣国であるドイツやフランスなどの西欧諸国は、牛乳の総生産量が数千万トンを記録しており、ハンガリーの生産規模はそれらと比較して中規模と言えます。その一方で、中央ヨーロッパ地域においては比較的高い生産量を維持しており、この地域での重要な酪農国とみなされています。

ハンガリーの酪農業が抱える課題の一つとして、EU内での市場競争の激化が挙げられます。特に、西ヨーロッパ諸国の競争力ある大規模酪農農家との価格競争が中小規模の農家に影響を与えています。また、気候変動による干ばつや洪水は牧草地や飼料の供給に不確実性をもたらし、生産コストの上昇を招いています。さらに、EU共通農業政策(CAP)の枠組みにおける補助金の配分が地域によって異なることも、生産量維持の壁となっています。

今後の対策としては、まず、酪農業における生産効率をさらに高めることが求められます。これには、技術導入の拡大やデジタル農業(スマート農業)の推進が適しています。また、気候変動への対応策として、水資源管理を含む持続可能な農業方法を採用することが重要です。さらに、小規模農家の支援策として、地域協力を強化し、牧草地や飼料の共同利用を推進する枠組みを構築することが考えられます。

社会経済的にも、労働力の確保が大きな課題です。若年層が農業に従事しやすい環境を作るために、職業訓練プログラムや税制優遇措置などの政策が有効となるでしょう。さらに、地政学的なリスクとしてウクライナ危機がエネルギー価格や供給網に影響を与えており、これも今後の農業政策において考慮すべき点です。

このデータからの結論として、ハンガリーの牛乳生産量は過去半世紀以上を通じて、社会的、経済的、地政学的要因により変動してきたことが分かります。今後は、持続可能な農業の実現と国際市場での競争力向上に向けた取り組みが鍵となります。特に、EU機関との協力を深めつつ、国内の酪農環境向上に向けた一貫した政策が必要です。このような具体的な対策を採ることで、ハンガリーの牛乳生産業の未来に向けた道筋を切り開くことが期待されます。