Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、ハンガリーのイチゴ生産量は1960年代後半から1970年代にかけて大きく成長しましたが、1980年代以降は減少傾向となり、2000年代にはさらに大きく落ち込みました。2010年代から2020年代にかけても、生産量は低迷したままで推移しており、2022年時点では5,080トンと、過去のピーク時の生産量と比較するとかなり低い水準となっています。
ハンガリーのイチゴ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 5,080 |
2021年 | 5,490 |
2020年 | 6,140 |
2019年 | 5,240 |
2018年 | 5,380 |
2017年 | 4,778 |
2016年 | 6,002 |
2015年 | 5,313 |
2014年 | 5,070 |
2013年 | 6,360 |
2012年 | 4,630 |
2011年 | 3,595 |
2010年 | 3,844 |
2009年 | 6,597 |
2008年 | 6,684 |
2007年 | 4,616 |
2006年 | 6,605 |
2005年 | 3,925 |
2004年 | 4,261 |
2003年 | 3,205 |
2002年 | 4,631 |
2001年 | 12,665 |
2000年 | 12,056 |
1999年 | 14,132 |
1998年 | 13,432 |
1997年 | 12,914 |
1996年 | 12,531 |
1995年 | 11,600 |
1994年 | 12,100 |
1993年 | 12,025 |
1992年 | 13,938 |
1991年 | 14,906 |
1990年 | 15,711 |
1989年 | 15,860 |
1988年 | 14,229 |
1987年 | 13,114 |
1986年 | 14,039 |
1985年 | 16,399 |
1984年 | 14,203 |
1983年 | 15,404 |
1982年 | 18,214 |
1981年 | 17,781 |
1980年 | 20,653 |
1979年 | 15,171 |
1978年 | 21,712 |
1977年 | 21,172 |
1976年 | 16,905 |
1975年 | 17,153 |
1974年 | 14,605 |
1973年 | 14,392 |
1972年 | 12,026 |
1971年 | 15,539 |
1970年 | 21,489 |
1969年 | 21,439 |
1968年 | 18,771 |
1967年 | 23,378 |
1966年 | 16,655 |
1965年 | 10,962 |
1964年 | 6,500 |
1963年 | 5,500 |
1962年 | 5,100 |
1961年 | 9,100 |
1960年代半ばから1970年代にかけて、ハンガリーのイチゴ生産量は急激に増加し、1970年には21,489トンへとピークに達しました。この時期の生産量の拡大は、農業技術の改良や国内外市場への供給体制の強化が寄与した可能性があります。しかし、1980年代以降、生産量は分散した動きを見せ始め、全体的に見ると減少トレンドが明確に現れています。1990年代には年平均13,000~15,000トン程度となり、2000年代はさらに低下して、2002年や2003年など一部の年では3,000トン台にまで落ち込みました。
この生産量の減少には、いくつかの背景が考えられます。一つ目は、旧ソ連圏の崩壊に伴う農業構造の変化です。この地域では、国家主導型の集約的な農業政策が市場競争に置き換わり、ハンガリーの多くの農家が変化に適応できなかったことが示唆されます。二つ目は、世界市場での供給競争の激化です。特にスペインやポーランド、トルコといった国々がヨーロッパ市場向けのイチゴ大国として成長する中、ハンガリーの競争力が相対的に低下しました。三つ目は、国内の気候条件の変化や農業労働力の不足です。特に2000年代以降の極端な天候変動や、若者層の都市部への人口流出が生産に影響を与えたと考えられます。
2010年代以降も生産量は安定せず、2022年の生産量は5,080トンにとどまりました。これは1960年代の初期レベルに逆戻りした形です。一方で、近年の欧州では消費者の間で地域産品やオーガニック農産物の需要が高まっており、ハンガリーのイチゴ産業がこの消費者嗜好の変化を活用する余地はまだ残されています。
今後の課題としては、生産コストの削減や労働力不足への対応が挙げられます。例えば、農業機械化の促進や、農村部への雇用誘導政策が重要です。また、気候変動の影響を考慮に入れた耐旱性品種の開発や、スマート農業の導入も鍵となるでしょう。さらに、地域産品としてのブランド化や観光業との連携も、輸出市場だけに依存しない多角的な収益モデルとして有望です。
地政学的観点では、ウクライナ紛争がハンガリーと周辺諸国の農業貿易に与えた影響も見逃せません。輸出ルートの想定外の改変が発生しており、物的インフラの強化や地域間協定の再構築が求められています。
結論として、ハンガリーのイチゴ産業はかつての成長を取り戻すことが難しい現状にありますが、政策介入とイノベーション、地域ブランド化の戦略を組み合わせることで、持続的な発展への道筋を描くことは可能です。国や国際機関が連携して農業協力や技術支援を進めるべきであり、これにより競争の激化する国際市場での地位向上が期待されます。