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ハンガリーのテンサイ(甜菜)生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ハンガリーのテンサイ(甜菜)生産量は1960年代から1970年代にかけて漸増し、1980年代後半にはピークに達しました。しかし、以降は生産量が減少傾向にあり、特に2007年以降、急激な落ち込みが見られます。2020年代に入ってもこの傾向は継続しており、2022年には470,220トンと最低水準を記録しましたが、2023年には一時的に875,970トンまで回復しました。このデータは、地政学的背景、気候変動、農業政策の変化が生産動向に及ぼす影響を反映しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 875,970
86.29% ↑
2022年 470,220
-30.65% ↓
2021年 678,010
-13.13% ↓
2020年 780,460
-5.23% ↓
2019年 823,500
-14.05% ↓
2018年 958,080
-10.93% ↓
2017年 1,075,625
-4.07% ↓
2016年 1,121,247
23.09% ↑
2015年 910,915
-14.61% ↓
2014年 1,066,750
7.68% ↑
2013年 990,710
12.36% ↑
2012年 881,720
2.96% ↑
2011年 856,368
4.57% ↑
2010年 818,941
11.12% ↑
2009年 737,014
28.59% ↑
2008年 573,160
-66.14% ↓
2007年 1,692,800
-31.03% ↓
2006年 2,454,225
-30.2% ↓
2005年 3,515,865
-0.32% ↓
2004年 3,527,105
94.61% ↑
2003年 1,812,422
-20.29% ↓
2002年 2,273,845
-21.67% ↓
2001年 2,903,000
46.9% ↑
2000年 1,976,192
-32.63% ↓
1999年 2,933,504
-12.72% ↓
1998年 3,361,022
-8.94% ↓
1997年 3,690,960
-21.08% ↓
1996年 4,677,117
11.39% ↑
1995年 4,198,700
24.58% ↑
1994年 3,370,322
54.46% ↑
1993年 2,182,060
-25.49% ↓
1992年 2,928,419
-50.09% ↓
1991年 5,866,880
23.7% ↑
1990年 4,742,660
-10.54% ↓
1989年 5,301,468
17.53% ↑
1988年 4,510,824
5.95% ↑
1987年 4,257,531
13.23% ↑
1986年 3,760,000
-7.68% ↓
1985年 4,072,595
-6.59% ↓
1984年 4,359,913
15.26% ↑
1983年 3,782,814
-29.57% ↓
1982年 5,370,796
13.81% ↑
1981年 4,719,178
19.75% ↑
1980年 3,940,990
0.34% ↑
1979年 3,927,496
-6.31% ↓
1978年 4,192,048
7.78% ↑
1977年 3,889,542
-1.34% ↓
1976年 3,942,299
-3.59% ↓
1975年 4,089,021
10.26% ↑
1974年 3,708,393
34.67% ↑
1973年 2,753,666
-5.35% ↓
1972年 2,909,282
43.78% ↑
1971年 2,023,441
-6.96% ↓
1970年 2,174,916
-34.14% ↓
1969年 3,302,572
-4.86% ↓
1968年 3,471,292
3.43% ↑
1967年 3,356,097
-5.99% ↓
1966年 3,570,000
3.42% ↑
1965年 3,452,010
-3.04% ↓
1964年 3,560,412
3.56% ↑
1963年 3,437,954
29.32% ↑
1962年 2,658,447
12.86% ↑
1961年 2,355,544 -

ハンガリーのテンサイ生産量は、1961年の約235万5千トンから始まり、1980年代後半には最大の生産量である586万6,880トン(1991年)を記録しました。この時期の増加は、農地拡大、技術進歩、そしてソ連圏での需要増加を背景としています。しかし、1990年代以降、生産量は大幅に変動し、減少傾向が顕著になりました。これには市場の自由化やEU加盟後の農業政策の変更が大きな影響を与えています。

特に2007年以降、ハンガリーのテンサイ生産量は急激に落ち込みました。この現象は、EU全体での砂糖市場改革が背景にあり、最低価格の保証削減や生産割当制度の撤廃が影響を及ぼしました。これにより、多くの農家がテンサイ生産から撤退したり、大幅に規模を縮小したりしています。その結果、2008年には57万3,160トンと、わずか数年で生産量が1,000万トン以上減少しました。

2020年代においては、気候変動がさらに生産量に影を落としています。高温や干ばつなどの異常気象がテンサイの収穫量に悪影響を及ぼし、近年では過去最低記録となる470,220トン(2022年)を記録しました。一方で、2023年には前年からの改善が見られ、875,970トンに回復しましたが、依然としてピーク時の生産規模には遠く及びません。

国際的な背景を見てみると、テンサイの生産はヨーロッパを中心に展開されており、フランスやドイツが主要生産国として知られています。これらの国々は、安定した生産基盤と適切な農業政策の恩恵を受けて、高い生産量を維持しています。特に、ドイツは2019年時点で規模や収穫量共にハンガリーを大きく上回っています。

ハンガリーの将来的な課題として、まず気候変動の適応が挙げられます。高温や乾燥に耐える品種の導入や、灌漑設備の拡充が急務です。また、農業への補助金政策を強化し、生産者が長期的利益を確保できる環境を整備することが必要です。さらに、EU内での市場競争力を高めるために、高品質の砂糖生産を目指した技術革新も推進されるべきです。

地政学的リスクも考慮すると、ロシアとウクライナ間の緊張関係がハンガリーの農産物輸出動向に影響を与える可能性があります。この地域での紛争は肥料供給を不安定にし、生産コストの増大を招くリスクがあります。そのため、食料安全保障の観点からも国内生産の安定化が重要です。

結論として、ハンガリーのテンサイ生産量は過去50年以上の間に劇的な変動を経験してきました。近年の生産量回復はポジティブな兆候であるものの、長期的には気候変動や政策問題、地政学的課題への対応が不可欠です。今後、国際連携を深めつつ、国内での農業基盤の改善に注力することで、この主要作物の安定した供給を実現することが求められます。