国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ハンガリーにおける米生産量は、1961年から2022年にかけて大きな変動を見せてきました。最盛期である1973年には68,711トンを記録した一方、1997年には7,303トンという極めて低い生産量にまで減少しました。近年では、2018年の13,420トンをピークに、2022年の10,150トンまで減少の傾向が見られ、国内の米生産に地続きの課題が浮かび上がっています。
ハンガリーの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 10,150 |
2021年 | 9,520 |
2020年 | 11,740 |
2019年 | 11,030 |
2018年 | 13,420 |
2017年 | 12,303 |
2016年 | 10,767 |
2015年 | 9,412 |
2014年 | 7,910 |
2013年 | 8,640 |
2012年 | 11,270 |
2011年 | 9,075 |
2010年 | 5,893 |
2009年 | 11,722 |
2008年 | 9,985 |
2007年 | 9,916 |
2006年 | 7,801 |
2005年 | 9,441 |
2004年 | 9,595 |
2003年 | 11,194 |
2002年 | 9,768 |
2001年 | 7,707 |
2000年 | 11,255 |
1999年 | 7,487 |
1998年 | 7,647 |
1997年 | 7,303 |
1996年 | 7,009 |
1995年 | 13,300 |
1994年 | 15,059 |
1993年 | 12,851 |
1992年 | 15,041 |
1991年 | 20,426 |
1990年 | 39,356 |
1989年 | 28,434 |
1988年 | 47,404 |
1987年 | 39,733 |
1986年 | 46,530 |
1985年 | 38,061 |
1984年 | 33,097 |
1983年 | 46,869 |
1982年 | 48,390 |
1981年 | 39,202 |
1980年 | 23,906 |
1979年 | 41,146 |
1978年 | 23,313 |
1977年 | 35,491 |
1976年 | 32,269 |
1975年 | 68,543 |
1974年 | 55,782 |
1973年 | 68,711 |
1972年 | 61,420 |
1971年 | 67,306 |
1970年 | 44,639 |
1969年 | 50,058 |
1968年 | 41,119 |
1967年 | 43,094 |
1966年 | 30,955 |
1965年 | 21,423 |
1964年 | 34,888 |
1963年 | 48,104 |
1962年 | 36,355 |
1961年 | 38,182 |
ハンガリーの米生産量の推移を解析すると、長期的には減少傾向が明確に示されています。特に1970年代のピークから1990年代にかけての大幅な生産量減少は顕著で、1996年にはその最底値である7,009トンに到達しました。この減少は、農業政策の転換、経済構造の変化、さらには天候や気候条件の影響が複合的に絡んでいることが考えられます。
1980年代以前、ハンガリーは社会主義体制のもとで計画経済による農業政策を実施していました。その中で米の生産量は安定して高水準を維持していましたが、体制変更後の1990年代以降、農業部門の競争力低下や輸出主導型の経済移行などが進み、米栽培の重要性が低下しました。また、冷涼な気候で米の生育に適していないハンガリー国内では、収穫量や品質面で競争力を持つ他国の米に比べ不利な状態にあり、生産が縮小していきました。
2020年代に入ると、一定の回復を見せるものの、依然として1990年前後の衰退期から持ち直しているとは言えません。2018年には13,420トンまで増加しましたが、その後は再び停滞傾向となっています。このような状況には、異常気象としての熱波や干ばつの発生頻度増加、新型コロナウイルスによる労働力不足、そしてロシアによるウクライナ侵攻が引き金となった穀物市場の混乱が関わっている可能性があります。例えば、2021年の9,520トンへの減少や、2022年の10,150トンといった数値は、これらの地政学的リスクが米農業に与えた影響を示唆しています。
今後の課題として、持続可能な農業生産体制の確立、ならびに気候変動対策の強化が重要になると考えられます。他国、特に中国やインド、日本のような米生産大国と比較して、ハンガリーの生産量は極めて小規模であり、輸入に依存する形態が主流となっています。しかし、気候変動の影響で輸入米の供給リスクが高まる可能性を考慮すると、輸入依存のリスク分散に向けた国内米生産の強化は、食糧安全保障の観点からも急務です。
具体的な対策として、以下を提案します。まず、省水型の稲作技術や耐干ばつ性種子の導入を進めることで、気候変動に対する耐性を高めることが必要です。また、農地への投資を促進し、灌漑設備の近代化を行うことで、限られた農地からの収量を最大化することが可能です。そして、環境に配慮した農業補助金制度の導入や、地域内での栽培知識の共有プログラム実施も効果的でしょう。地域間の協力、例えば近隣のEU加盟国との共同研究や資源共有は、安定的な生産基盤確立のための鍵となるでしょう。
結論として、ハンガリーの米生産量はこれまで国内外の変遷に大きく依存してきましたが、将来的な食糧安全保障の強化を目指して、国内での米生産を急速に回復・維持する必要があると考えられます。これには、政府や農業関係者、国際機関が一体となった政策的アプローチが不可欠です。これにより、持続可能な農業の確立と国としての食糧安定性の向上を期待できるでしょう。