Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ハンガリーのキャベツ生産量は、1961年には148,601トンから1960年代後半には約26万トンに達するピークを迎えました。しかし、その後は徐々に減少し始め、特に2000年代以降には大幅な減少傾向が見られています。近年では2022年の生産量が52,310トンと、ピーク時の約5分の1程度となっています。この推移は農業構造や経済、気候条件の変化、国際市場動向などが複雑に絡んでいると言えます。
ハンガリーのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 52,310 |
2021年 | 50,090 |
2020年 | 50,150 |
2019年 | 50,240 |
2018年 | 53,310 |
2017年 | 49,115 |
2016年 | 52,939 |
2015年 | 64,701 |
2014年 | 60,150 |
2013年 | 66,790 |
2012年 | 65,290 |
2011年 | 101,109 |
2010年 | 76,572 |
2009年 | 100,170 |
2008年 | 103,187 |
2007年 | 91,623 |
2006年 | 102,562 |
2005年 | 136,639 |
2004年 | 215,889 |
2003年 | 179,715 |
2002年 | 172,572 |
2001年 | 165,879 |
2000年 | 130,115 |
1999年 | 192,113 |
1998年 | 195,303 |
1997年 | 187,194 |
1996年 | 168,335 |
1995年 | 130,897 |
1994年 | 116,994 |
1993年 | 123,810 |
1992年 | 106,214 |
1991年 | 135,452 |
1990年 | 139,288 |
1989年 | 152,667 |
1988年 | 155,348 |
1987年 | 170,987 |
1986年 | 155,370 |
1985年 | 163,239 |
1984年 | 193,231 |
1983年 | 173,842 |
1982年 | 156,093 |
1981年 | 156,148 |
1980年 | 192,011 |
1979年 | 147,008 |
1978年 | 217,451 |
1977年 | 242,323 |
1976年 | 214,052 |
1975年 | 196,960 |
1974年 | 217,406 |
1973年 | 217,370 |
1972年 | 225,782 |
1971年 | 214,599 |
1970年 | 205,350 |
1969年 | 240,897 |
1968年 | 236,267 |
1967年 | 191,952 |
1966年 | 265,421 |
1965年 | 251,842 |
1964年 | 202,131 |
1963年 | 216,739 |
1962年 | 175,670 |
1961年 | 148,601 |
ハンガリーのキャベツ生産量は、1960年代半ばから後半にかけて最盛期を迎えました。この時期、ハンガリーの農業は大規模な集団農場を中心に発展し、キャベツも主要な作物の一つとして栽培されていました。1966年には265,421トンと最高値を記録しましたが、それ以降はしばらく不安定な推移を続けながらも徐々に減少傾向が確認されます。特に1990年代以降、生産量が急激に減少した背景には、冷戦終結後の市場経済移行の影響が挙げられます。ソ連向けを含む輸出市場の縮小や、農業補助金政策の見直しなどによる影響を受けたことが考えられます。
2000年代以降、気候変動の影響も顕著に影を落としています。極端な気象条件が作物の収量を大きく左右し、特に乾燥化や高温がキャベツ栽培に適さない環境を生み出しました。このため、2010年以降には生産量がさらに低下し、2020年代では50,000トン前後に停滞しています。
また、経済グローバル化による他国産キャベツとの競争も厳しさを増しています。例えば、中国やインドなどの主要農業国は、キャベツの生産量が非常に高く、特に中国では圧倒的なスケールで生産されています。このような国々と比較すると、ハンガリーの生産はコスト面や収量の点で多くの課題を抱えています。また、EU加盟後、域内市場統合が進んだことで、他のヨーロッパ諸国、例えばオランダやドイツからの輸入品がハンガリー国内市場を埋め尽くす傾向も観察されています。
課題としては、国内農業の競争力強化が急務です。具体的には、栽培技術の効率化、気候変動に対する適応戦略の一環として耐乾燥性や耐寒性に優れた品種の開発、また収穫後の加工技術への投資などが挙げられます。また、国内市場だけにとどまらず、輸出先をアジアや中東などの新興市場に広げることも、一つの戦略として考えられます。
地政学的には、ハンガリーの農業はEUの中核地域に位置している一方、ウクライナ情勢による影響も無視できません。ウクライナからの安価な農産物がEU域内市場を席巻する可能性が高まっており、この動向次第では、ハンガリーのキャベツ栽培がさらに圧迫される懸念があります。これを克服するためには、政府と民間が協力して農業改革を進める必要があります。
全体として、ハンガリーのキャベツ生産は下降傾向にありますが、農業技術の革新や地域間協力を通じて、持続可能な農業の実現を目指す可能性が見いだせます。一方で、気候変動や国際競争という現実を踏まえた政策的な取り組みも不可欠です。国際的な研究機関やFAOは、技術支援や市場情報の提供を通じて、ハンガリーをはじめとする中東欧諸国の農業発展に寄与できるでしょう。