ハンガリーのナシ生産量は、1960年代から2023年までの期間で大きく変動しており、特に近年の生産量は著しく減少しています。1960年代には10万トンを超える年も多かった一方で、2000年代以降、4万トン未満の低水準が続いています。特に2010年代以降のデータでは一貫して2万トン前後で推移し、2023年にはわずか16,380トンにとどまっています。この変動には気候変動、農業政策の変化、生産性の低下が影響していると考えられます。
ハンガリーのナシ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 16,380 |
18.18% ↑
|
2022年 | 13,860 |
-36.19% ↓
|
2021年 | 21,720 |
6.84% ↑
|
2020年 | 20,330 |
-9.08% ↓
|
2019年 | 22,360 |
-13.83% ↓
|
2018年 | 25,950 |
11.22% ↑
|
2017年 | 23,333 |
1.08% ↑
|
2016年 | 23,083 |
-37.26% ↓
|
2015年 | 36,793 |
76.89% ↑
|
2014年 | 20,800 |
-24.88% ↓
|
2013年 | 27,690 |
89.4% ↑
|
2012年 | 14,620 |
-15.62% ↓
|
2011年 | 17,327 |
-28.33% ↓
|
2010年 | 24,176 |
-25.05% ↓
|
2009年 | 32,256 |
46.02% ↑
|
2008年 | 22,090 |
87.22% ↑
|
2007年 | 11,799 |
-64.07% ↓
|
2006年 | 32,839 |
66.39% ↑
|
2005年 | 19,736 |
7.4% ↑
|
2004年 | 18,377 |
-2.15% ↓
|
2003年 | 18,780 |
43.56% ↑
|
2002年 | 13,082 |
-37.93% ↓
|
2001年 | 21,077 |
-42.89% ↓
|
2000年 | 36,908 |
-4.7% ↓
|
1999年 | 38,729 |
6.64% ↑
|
1998年 | 36,317 |
-1.26% ↓
|
1997年 | 36,779 |
-9.96% ↓
|
1996年 | 40,849 |
-0.85% ↓
|
1995年 | 41,200 |
-3.74% ↓
|
1994年 | 42,800 |
-32.64% ↓
|
1993年 | 63,540 |
-2.28% ↓
|
1992年 | 65,020 |
-6.65% ↓
|
1991年 | 69,651 |
8.43% ↑
|
1990年 | 64,235 |
-28.62% ↓
|
1989年 | 89,988 |
3.68% ↑
|
1988年 | 86,798 |
11.53% ↑
|
1987年 | 77,824 |
-9.04% ↓
|
1986年 | 85,558 |
-0.96% ↓
|
1985年 | 86,390 |
-18.16% ↓
|
1984年 | 105,559 |
-2.87% ↓
|
1983年 | 108,676 |
-10.44% ↓
|
1982年 | 121,346 |
20.03% ↑
|
1981年 | 101,097 |
5.48% ↑
|
1980年 | 95,843 |
22.38% ↑
|
1979年 | 78,319 |
-15.07% ↓
|
1978年 | 92,214 |
-1.03% ↓
|
1977年 | 93,171 |
22.26% ↑
|
1976年 | 76,205 |
-37.93% ↓
|
1975年 | 122,782 |
67.27% ↑
|
1974年 | 73,405 |
-38.26% ↓
|
1973年 | 118,893 |
80.07% ↑
|
1972年 | 66,027 |
-25.93% ↓
|
1971年 | 89,140 |
11.38% ↑
|
1970年 | 80,034 |
-11.56% ↓
|
1969年 | 90,492 |
10.04% ↑
|
1968年 | 82,232 |
23.38% ↑
|
1967年 | 66,647 |
-2.3% ↓
|
1966年 | 68,219 |
44.86% ↑
|
1965年 | 47,094 |
-32.04% ↓
|
1964年 | 69,300 |
75.89% ↑
|
1963年 | 39,400 |
-69.17% ↓
|
1962年 | 127,800 |
207.21% ↑
|
1961年 | 41,600 | - |
国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、ハンガリーのナシ生産量は非常に大きな歴史的変動を経験してきました。1960年代初頭、ナシの生産量はおおむね40,000〜120,000トンの間で推移しており、農業の一大作物としての重要性を持っていました。しかし1980年代後半以降、その生産量は安定せず、徐々に減少傾向をたどります。特に1990年代後半から2000年代にかけて顕著な落ち込みが見られ、2001年には21,077トン、2007年にはさらに減少して11,799トンという最低水準を記録しました。
このような変化の背景にはいくつかの要因があります。まず、気候変動の影響が重要な要素です。ハンガリーは中欧に位置し、地中海性気候と大陸性気候が交わる地域です。しかし、近年では夏季の高温化や水不足が農作物全体に悪影響を及ぼしており、ナシ栽培も例外ではありません。また、季節外れの霜害が頻発していることも、若芽や花芽の損傷を通してナシの収穫量減少に影響していると考えられます。
加えて、1989年の冷戦終結以降、ハンガリー農業の構造は大きな転換を遂げました。その変化の中で、ナシ栽培は他作物、特に収益性の高い作物へ農地が移行されたことが指摘されています。新たな経済体制の下で輸出志向型の農業政策が進む中、ナシは国内市場向けの作物としての地位を失い、その結果、栽培面積の縮小が続いたと見られます。
さらに、近年の世界的なパンデミックやエネルギー危機も農業生産に悪影響を及ぼしました。2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックにより、農業労働力が不足し、輸送コストや肥料価格の上昇が農家の経済的負担を増大させています。2022年には、生産量が13,860トンまで急激に低下しましたが、これも高いエネルギー費用や気候変動の影響と関連すると考えられます。
こうした状況に対処するには、いくつかの取り組みが求められます。まず、農家に対する財政的な支援や、気候変動に対応可能な農業技術の導入を進める必要があります。特に耐乾性や耐霜性を持つナシ品種の研究と導入が急務です。さらに、灌漑施設の拡充によって水資源不足への適応力を高めることも重要です。また、ハンガリー国内だけでなく、ヨーロッパ全体での協力が鍵となります。例えば、EUの農業政策を通じて、ナシ栽培への支援を強化し、安定的な供給網を確保する取り組みが必要です。
別の観点では、国内外の消費者に向けてナシの価値を再評価するキャンペーンを展開することで、需要を喚起し、市場価格の安定化を図ることも有効です。高品質のナシ製品を用いた加工食品や輸出によって、付加価値を高めることができます。
結論として、ハンガリーのナシ生産量の変動には地政学的な経済体制の変化、気候変動、そして農業政策の課題が複雑に絡み合っています。これに対応するためには、国・地域・国際機関の連携が不可欠です。これらの取り組みが成功するかどうかは、今後の農業の持続可能性に大きく影響するでしょう。