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ハンガリーのリンゴ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公表したデータによると、ハンガリーのリンゴ生産量は1961年から2022年にかけて大きく変動しています。1960年代から1980年代前半にかけての生産量は着実に増加し、1982年にはピークとなる1,278,919トンを記録しました。しかし、その後は減少傾向が続き、2022年の生産量は350,100トンとピーク時の約4分の1にまで減少しました。これは気候変動や経済的な要因、農業政策の変化などが影響していると考えられ、今後の対応が求められています。

年度 生産量(トン)
2022年 350,100
2021年 514,520
2020年 398,710
2019年 498,330
2018年 678,780
2017年 473,662
2016年 497,108
2015年 511,460
2014年 779,850
2013年 591,870
2012年 650,600
2011年 292,810
2010年 496,916
2009年 575,368
2008年 568,600
2007年 586,113
2006年 537,345
2005年 510,361
2004年 700,391
2003年 507,505
2002年 526,865
2001年 605,440
2000年 694,586
1999年 444,508
1998年 481,987
1997年 499,925
1996年 551,910
1995年 352,984
1994年 656,987
1993年 819,358
1992年 665,828
1991年 859,195
1990年 945,455
1989年 959,074
1988年 1,130,786
1987年 1,064,414
1986年 1,252,938
1985年 953,597
1984年 1,088,172
1983年 1,140,627
1982年 1,278,919
1981年 1,232,428
1980年 1,016,585
1979年 963,956
1978年 779,222
1977年 1,105,448
1976年 973,940
1975年 808,787
1974年 829,015
1973年 780,525
1972年 709,349
1971年 620,534
1970年 660,829
1969年 818,741
1968年 481,679
1967年 674,644
1966年 396,490
1965年 378,904
1964年 432,200
1963年 503,500
1962年 314,900
1961年 349,500

ハンガリーのリンゴ生産は、食料供給の安定や農村地域の雇用創出などにおいて重要な役割を果たしてきました。1960年代には毎年30万から50万トン程度の生産量が見られましたが、1970年代半ばから1980年代にかけて急激な成長が見られました。この時期には農業の機械化や農地の大規模化が進み、1982年には約128万トンという最大の生産量を記録しました。この多収量は、当時の農村の経済的な発展にも寄与し、国内外への輸出基盤も強化されました。

しかし、1990年代以降は大幅な減少が見られ、その背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、冷戦終了後の経済変革において、ハンガリーの農業市場がソビエト連邦圏の貿易網と断絶したことが大きな影響を与えました。さらに、農業労働者の減少、農地の分散化、リンゴ栽培に適したインフラの老朽化も生産効率の低下に拍車をかけました。

加えて、気候変動がハンガリーのリンゴ生産に深刻な影響を及ぼしています。リンゴは適切な気温や降水量を必要とする果実であるため、高温による開花不良や、集中豪雨、旱魃(かんばつ)による収量の低下が生じています。例えば2011年や2020年には、極端な気象条件が原因で生産量が30万トン台にまで落ち込みました。

最後に、新型コロナウイルスのパンデミックがサプライチェーンにも影響を与え、2020年と2021年には労働力の確保が特に困難となり、十分な収穫が実現できませんでした。

このような背景を踏まえると、ハンガリーのリンゴ栽培業界は現在、深刻な課題に直面しています。このままでは国内供給量が安定せず、国際競争力の維持も困難になる可能性があります。対策として、第一に気候変動への適応策としての耐候性品種の開発と導入が重要です。これは降水量や気温の変化に対応できる品種を普及させ、気象リスクを軽減する取り組みです。第二に、農家への資金的支援を強化することで、施設や設備の老朽化対応や新しい技術の導入を促進することが提案されます。さらに、IT技術を活用した精密農業の導入も生産性の向上に寄与するでしょう。

また、地域間協力の枠組みを拡大し、ドイツやフランスなどの欧州諸国とも技術や市場情報を共有することが求められます。とりわけEU内では農業補助金を有効活用し、持続可能な農業の実現を目指すべきです。他国との比較においても、日本や韓国では気候に適した農業技術を駆使して果樹栽培を持続可能な形で発展させています。これらの事例はハンガリーにとっても学びとなる可能性が高いでしょう。

地政学的背景も無視できません。例えば、ハンガリーはヨーロッパ中央部に位置し、その地理的条件から隣国とのリンゴ市場における競争が激化する可能性があります。また、周辺諸国との貿易網の再構築に取り組むことで、市場の多様化を図り収益基盤を強固にする必要があります。

総じて、ハンガリーのリンゴ生産は下り坂にありますが、適切な政策と技術導入によって将来の成長の可能性を秘めています。国際連合や欧州連合とも連携し、気候変動と経済変革に適応し得る具体的な対策を進めることが不可欠です。