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ドミニカ共和国のコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年最新データによれば、ドミニカ共和国のコーヒー豆生産量は1961年の36,210トンから1984年のピークである72,109トンに増加しました。その後、生産量は減少傾向を見せ、特に1990年代以降急激な減少が顕著となり、2014年には13,213トン、2015年には9,888トンという最低水準を記録しました。ただし、近年はわずかに回復し、2022年には20,577トンに達しています。しかし、過去のピークと比較すると、生産量の水準は依然として低迷しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 23,446
13.94% ↑
2022年 20,577
27.13% ↑
2021年 16,186
5.24% ↑
2020年 15,381
10.87% ↑
2019年 13,873
-24.67% ↓
2018年 18,416
20.83% ↑
2017年 15,241
32.87% ↑
2016年 11,471
16% ↑
2015年 9,888
-25.16% ↓
2014年 13,213
-28.78% ↓
2013年 18,552
-31.31% ↓
2012年 27,009
19.09% ↑
2011年 22,680
3.67% ↑
2010年 21,876
-42.36% ↓
2009年 37,950
6.65% ↑
2008年 35,582
-13.7% ↓
2007年 41,232
-0.29% ↓
2006年 41,352
2.6% ↑
2005年 40,303
13.78% ↑
2004年 35,421
-4.08% ↓
2003年 36,929
-1.07% ↓
2002年 37,330
5.23% ↑
2001年 35,476
-22.11% ↓
2000年 45,546
31.6% ↑
1999年 34,609
-39.22% ↓
1998年 56,943
67.49% ↑
1997年 33,997
-29.02% ↓
1996年 47,895
12.94% ↑
1995年 42,407
29.63% ↑
1994年 32,715
-13.32% ↓
1993年 37,744
-11.12% ↓
1992年 42,464
-23.1% ↓
1991年 55,222
-7% ↓
1990年 59,377
-8.1% ↓
1989年 64,611
-4.9% ↓
1988年 67,939
1.2% ↑
1987年 67,134
-2% ↓
1986年 68,504
-4.81% ↓
1985年 71,965
-0.2% ↓
1984年 72,109
6% ↑
1983年 68,027
7.14% ↑
1982年 63,493
21.62% ↑
1981年 52,206
-13.12% ↓
1980年 60,091
-0.5% ↓
1979年 60,391
39.13% ↑
1978年 43,405
-27.91% ↓
1977年 60,208
5.63% ↑
1976年 56,997
9.92% ↑
1975年 51,855
-4.52% ↓
1974年 54,311
-7.45% ↓
1973年 58,682
29.54% ↑
1972年 45,300
0.67% ↑
1971年 45,000
5.9% ↑
1970年 42,494
-2.42% ↓
1969年 43,550
-2.13% ↓
1968年 44,500
4.95% ↑
1967年 42,400
-4.79% ↓
1966年 44,535
3.4% ↑
1965年 43,072
-17.13% ↓
1964年 51,974
16.06% ↑
1963年 44,783
-2.58% ↓
1962年 45,968
26.95% ↑
1961年 36,210 -

ドミニカ共和国はカリブ海地域でも農業が主要産業の国家であり、コーヒー生産もその経済や文化において重要な位置を占めています。同国のコーヒー豆生産量の推移データからは、生産量が1960年代から1980年代にかけて増加したのち、1990年代以降急激に減少し、2010年代に最も低迷していることが読み取れます。この動きは複数の要因に影響を受けています。

ドミニカ共和国のコーヒー生産が増加した1980年代には、国際市場におけるコーヒー需要の高まりが影響しました。特にアメリカやヨーロッパへ輸出することで同国のコーヒー産業は拡大しました。しかし、1990年代からの減少にはいくつかの背景があります。まず、コーヒーの価格下落が生産者に大きな打撃を与えました。これは、国際市場における過剰供給や価格競争の激化によるものです。さらに、労働力不足、農業技術の停滞、主要コーヒー産地への投資不足といった構造的な課題も生産量の低迷を引き起こす大きな要因となりました。

特に2010年代に入ると、生産に深刻な影響を与えたのが「さび病(コーヒーの木に感染する植物病害)」です。この病害はコーヒーの木を枯らし、生産量を大幅に減少させました。この結果、2015年には9,888トンと過去最低を記録しました。加えて、気候変動による気象条件の変化や台風などの自然災害も、生産活動をさらに困難にしています。

コーヒー生産が低迷すると、農村地域の経済に直接的な影響が及びます。同国の多くのコーヒー生産者は小規模で経済的に脆弱な存在であり、生産の減少によって農村人口の一部が都市部への移住を余儀なくされるケースも増加しています。この動きは、農村地域の経済格差を拡大させる可能性があります。

しかし、近年では生産量がわずかながら回復していることが確認されています。これは政府や国際機関による支援が奏功した結果と考えられます。具体的には、さび病に強い品種の開発と導入、農業技術研修の実施や持続可能な農法の普及、さらにはインフラ整備に向けた投資が行われています。また、コーヒーの生産だけでなく、高付加価値な製品や観光との融合といった新たなビジネスモデルの確立も進められています。このような取り組みは生産だけでなく、農村地域の経済活性化にも寄与しています。

今後の課題としては、まず、気候変動への適応策を進める必要があります。特に、気象条件に適応した作物栽培技術の普及が重要です。また、国際市場における競争力を高めるため、有機栽培やフェアトレード製品としてのブランド化を推進することも有効でしょう。さらに、労働者や若年層にとって魅力的な環境を整えることで、担い手不足を解消する取り組みが求められます。

地政学的に見ると、中南米地域全体におけるコーヒー産業の競争も影響しています。例えば、ブラジルやコロンビアといった主要生産国はドミニカ共和国よりも規模が大きく、機械化や品質向上への投資が進んでいます。この点で、ドミニカ共和国は差別化戦略が必要です。また、国際的な輸出体制の強化を図るため、諸外国との貿易協定の見直しや新規締結も検討すべきといえます。

結論として、ドミニカ共和国のコーヒー産業は依然として課題を抱えていますが、政府や国際機関の支援によって、再び生産量を増加させ、持続可能な産業として再構築する可能性があります。そのためには、技術と市場の革新、労働力の強化、気候変動への対策に一層の注力が必要です。