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ドミニカ共和国のヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した2024年7月時点のデータによると、ドミニカ共和国におけるヤギ肉生産量は1961年から急速に増加し、1985年には1,776トンというピークを迎えました。しかしその後は減少傾向に入り、1999年には600トンという大幅な落ち込みを記録しました。その後、2000年以降は増減を繰り返しながらもおおむね横ばいの状態が続き、2023年には883トンにとどまっています。一方で、過去数十年にわたり重視されてきた農業分野の課題や地政学的背景から現れる影響が、生産量の変動に少なからぬ影響を与えていることが示唆されています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 883
-1.18% ↓
2022年 894
-0.43% ↓
2021年 898
-0.43% ↓
2020年 902
-0.46% ↓
2019年 906
-0.96% ↓
2018年 915
2.83% ↑
2017年 890
-6.02% ↓
2016年 947
-0.15% ↓
2015年 948
-2.55% ↓
2014年 973
-3.67% ↓
2013年 1,010
4.99% ↑
2012年 962
5% ↑
2011年 916
-0.96% ↓
2010年 925
2.32% ↑
2009年 904
-2.27% ↓
2008年 925
0.22% ↑
2007年 923
-0.43% ↓
2006年 927
0.76% ↑
2005年 920
9.52% ↑
2004年 840
12% ↑
2003年 750
0.81% ↑
2002年 744 -
2001年 744
3.33% ↑
2000年 720
20% ↑
1999年 600
-16.67% ↓
1998年 720
-14.29% ↓
1997年 840
-12.5% ↓
1996年 960
-5.88% ↓
1995年 1,020
-5.56% ↓
1994年 1,080
-5.26% ↓
1993年 1,140
-5% ↓
1992年 1,200
-4.76% ↓
1991年 1,260
-4.55% ↓
1990年 1,320
-4.35% ↓
1989年 1,380
-4.17% ↓
1988年 1,440
-4% ↓
1987年 1,500
-7.41% ↓
1986年 1,620
-8.78% ↓
1985年 1,776
5.71% ↑
1984年 1,680
0.72% ↑
1983年 1,668
0.72% ↑
1982年 1,656
0.73% ↑
1981年 1,644
1.48% ↑
1980年 1,620
14.41% ↑
1979年 1,416
7.27% ↑
1978年 1,320
4.76% ↑
1977年 1,260
6.06% ↑
1976年 1,188
2.48% ↑
1975年 1,159
1.47% ↑
1974年 1,142
1.49% ↑
1973年 1,126
1.96% ↑
1972年 1,104
3.37% ↑
1971年 1,068
14.84% ↑
1970年 930
3.33% ↑
1969年 900
3.45% ↑
1968年 870
3.57% ↑
1967年 840
3.7% ↑
1966年 810
3.85% ↑
1965年 780
4% ↑
1964年 750
4.17% ↑
1963年 720
4.35% ↑
1962年 690
4.55% ↑
1961年 660 -

ドミニカ共和国のヤギ肉生産量の推移を見てみると、1960年代から1980年代中盤までには生産量が着実に増加し、特に1970年から1980年までの10年間で約2倍以上の成長を遂げています。この動向は、当時の農業政策や自給自足型の一次産業の発展が影響しているものと考えられます。ヤギは厳しい環境でも生育できる動物であり、食糧安定の観点から維持されてきたと推測されます。しかし1986年以降、急激な減少が見られ、2000年ごろまでの間に生産量は最低水準の600トンまで縮小しました。この時期の減少は、自然災害や国際市場の構造的変化、都市化や土地利用の変遷、さらには政治的不安定さなど複数の要因が絡み合った結果だと分析されています。

2000年以降は一旦回復の兆しを見せたものの、過去20年間の動向を俯瞰すると、大きな伸びは見られず、900トン前後での横ばい状態が続いています。この背景には、国際貿易の影響や国内農村部での人口流出、また気候変動に伴う農地の劣化といった要因が挙げられます。とりわけ、近年の気候リスクやCOVID-19のパンデミックの影響も、小規模農家の経営を圧迫し、投資活動や生産量の安定性を妨げたことが示唆されます。

さらに、地理的要因として、ドミニカ共和国はカリブ海のハリケーン多発地帯にあり、台風や洪水などの自然災害が牧草地を荒廃させることで、ヤギの飼育環境にも深刻な影響を及ぼしています。その結果、一部の農家では畜産業から他の収益源への転換を余儀なくされるケースも増えているとみられます。

この減少傾向を反転させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず第一に、地域コミュニティにおける持続可能な農業技術を導入し、小規模農家が長期的にヤギの飼育を続けられる環境を作ることが重要です。たとえば、気候変動に対応した牧草栽培技術や家畜用の水資源管理法を広める取り組みがその一例です。さらに、国際的な支援を得ながら災害リスクを軽減するためのインフラ整備や、保険制度の普及を進めることも有効と考えられます。

また、近隣諸国を含む地域間協力の強化も重要です。特にカリブ地域では、同様の課題を抱える国々との経験共有や共同事業が効果的です。たとえば、牧畜技術のノウハウを交換するとともに、国際支援プログラムを活用したプロジェクトを実施することで、広範なスケールで課題解決に取り組むことができます。

さらに市場観点からは、ヤギ肉の消費需要を喚起するため、輸出戦略の最適化や国内市場での高付加価値商品の開発を通じて、流通構造を再構築することが必要です。ドミニカ共和国のヤギ肉は特定の市場で高い評価を得るポテンシャルがあるため、観光業との連携やブランド化による差別化戦略も検討すべきです。

総じて、ドミニカ共和国のヤギ肉生産量の推移は、農業・畜産業全体が直面する多面的な課題を反映しています。このデータは、環境、政策、社会の変化が地域の産業へ与える影響を象徴的に示しています。これらを踏まえ、ドミニカ共和国の生産者や政策立案者は、生産性の向上だけでなく持続可能な発展を念頭に置いた取り組みをさらに強化していく必要があります。国際機関や周辺国との協働により、これらの課題に適切に対処することで、ヤギ肉生産量の回復と農業部門全体の振興を期待することができます。