国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、1970年度のコーヒー豆生産量ランキングでは、ブラジルが754,800トンで堂々の1位に輝き、全世界の生産量の中心的役割を担っていました。続いて2位は507,000トンのコロンビア、3位は279,610トンのコートジボワールとなっています。これらの上位3か国で全世界の生産量の約50%を占め、南アメリカとアフリカの熱帯地域が世界的な生産の要であることが分かります。一方で、アジア各国や欧州の生産量は比較的少なく、日本や中国などはほとんど生産を行っていません。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
南アメリカ | 754,800 |
| 2 |
|
南アメリカ | 507,000 |
| 3 |
|
アフリカ | 279,610 |
| 4 |
|
アフリカ | 204,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 201,500 |
| 6 |
|
南アメリカ | 185,293 |
| 7 |
|
アジア | 185,091 |
| 8 |
|
南アメリカ | 129,490 |
| 9 |
|
南アメリカ | 126,546 |
| 10 |
|
アフリカ | 92,993 |
| 11 |
|
南アメリカ | 73,192 |
| 12 |
|
南アメリカ | 72,053 |
| 13 |
|
アフリカ | 69,600 |
| 14 |
|
アフリカ | 66,555 |
| 15 |
|
南アメリカ | 65,368 |
| 16 |
|
アジア | 63,619 |
| 17 |
|
南アメリカ | 60,586 |
| 18 |
|
アフリカ | 58,300 |
| 19 |
|
アジア | 49,017 |
| 20 |
|
アフリカ | 46,140 |
| 21 |
|
南アメリカ | 42,494 |
| 22 |
|
南アメリカ | 39,456 |
| 23 |
|
南アメリカ | 39,418 |
| 24 |
|
南アメリカ | 32,610 |
| 25 |
|
オセアニア | 27,495 |
| 26 |
|
アフリカ | 22,084 |
| 27 |
|
南アメリカ | 19,742 |
| 28 |
|
南アメリカ | 15,422 |
| 29 |
|
アフリカ | 14,240 |
| 30 |
|
アフリカ | 13,877 |
| 31 |
|
アフリカ | 11,500 |
| 32 |
|
南アメリカ | 11,200 |
| 33 |
|
アフリカ | 10,665 |
| 34 |
|
アジア | 7,306 |
| 35 |
|
アジア | 7,300 |
| 36 |
|
アフリカ | 7,200 |
| 37 |
|
アフリカ | 6,510 |
| 38 |
|
アフリカ | 6,188 |
| 39 |
|
アフリカ | 4,967 |
| 40 |
|
アジア | 4,906 |
| 41 |
|
アジア | 4,813 |
| 42 |
|
南アメリカ | 4,436 |
| 43 |
|
南アメリカ | 4,310 |
| 44 |
|
アジア | 3,800 |
| 45 |
|
アジア | 3,540 |
| 46 |
|
アジア | 3,200 |
| 47 |
|
アフリカ | 2,826 |
| 48 |
|
南アメリカ | 2,302 |
| 49 |
|
アフリカ | 1,940 |
| 50 |
|
南アメリカ | 1,805 |
| 51 |
|
北アメリカ | 1,560 |
| 52 |
|
アフリカ | 1,102 |
| 53 |
|
アジア | 1,016 |
| 54 |
|
アフリカ | 1,000 |
| 55 |
|
アフリカ | 900 |
| 56 |
|
オセアニア | 780 |
| 57 |
|
南アメリカ | 703 |
| 58 |
|
アフリカ | 615 |
| 59 |
|
アジア | 600 |
| 60 |
|
アジア | 600 |
| 61 |
|
南アメリカ | 600 |
| 62 |
|
南アメリカ | 300 |
| 63 |
|
アフリカ | 263 |
| 64 |
|
南アメリカ | 207 |
| 65 |
|
アフリカ | 180 |
| 66 |
|
オセアニア | 150 |
| 67 |
|
アフリカ | 125 |
| 68 |
|
アジア | 120 |
| 69 |
|
オセアニア | 120 |
| 70 |
|
アフリカ | 114 |
| 71 |
|
オセアニア | 102 |
| 72 |
|
南アメリカ | 80 |
| 73 |
|
アジア | 36 |
| 74 |
|
南アメリカ | 24 |
| 75 |
|
オセアニア | 11 |
| 76 |
|
オセアニア | 10 |
| 77 |
|
ヨーロッパ | 8 |
| 78 |
|
アフリカ | 7 |
| + すべての国を見る | |||
1970年度におけるコーヒー豆の生産量データは、当時の地理的、経済的、そして気候的条件がコーヒー産業に与える影響をよく示しています。ランキング1位のブラジルが754,800トンと圧倒的な生産量を誇り、これは長年にわたり国が農業政策でコーヒー栽培を重視してきた歴史、多様な気候条件、および広大な農地面積の恩恵を受けています。同様に、2位のコロンビアも伝統的にコーヒー輸出が経済の主要な産業であり、生産量は507,000トンに達しています。これらの国々が南アメリカの熱帯性気候を活用し、世界市場をリードしている状況が明確に見て取れます。
アフリカ勢では、3位にコートジボワールがランクインしており、特に同国はロブスタ種のコーヒー豆を中心とした生産で知られています。このほか、アンゴラやウガンダも4位、5位に名を連ねており、アフリカ諸国全体で見ると、年々その生産シェアが高まっていました。また、これらの国々の多くは独立後の経済再建の中で、コーヒー産業に注力し、農業基盤の整備を進めていた時期であることも注目に値します。
一方、アジア太平洋地域では、16位のインド(63,619トン)と7位のインドネシア(185,091トン)が目立つ存在となっています。しかしながら、他のアジア諸国の多くは気候や地理の条件が不利であり、コーヒーの大規模生産には適していませんでした。興味深いことに、現在では世界の主要生産国となっているベトナムが、1970年度にはわずか7,300トンと低い生産量にとどまっていました。この背景には、1970年前後の地政学的リスク、すなわちベトナム戦争をはじめとした紛争が大きな影響を与えていたことが挙げられます。
さらに、他の地域を見ると、欧州や北アメリカなどの大規模な消費市場と比べると生産量はごくわずかで、フランス領ポリネシアやアメリカ合衆国などは生産量が数千トン未満にとどまっていました。このデータは、コーヒー栽培が主に熱帯・亜熱帯地域に限定されていることを示しています。
ただし、これらのデータが示唆する一方で、各地域における課題も浮き彫りになっています。特に、南アメリカやアフリカ諸国ではモノカルチャー(単一作物依存型)の農業が経済の安定性に脅威を与える可能性があり、天候変動や価格の国際的下落に脆弱であるとの懸念が当時からありました。また、アジア諸国では、農業インフラの整備や技術支援の不足が生産拡大を阻害していたと考えられます。
未来に向けては、地域ごとに異なるアプローチが必要です。例えば、アフリカ諸国では、複数の作物を同時に栽培することで収入の安定化を図る「アグロフォレストリー」や、気候変動に強い品種への転換が推奨されます。また、アジア太平洋地域では、特に生産量の少なかった国々(たとえばベトナムやタイ)において、農業技術の革新や国際貿易の促進が近年の成功例となり得るでしょう。
結論として、1970年度のコーヒー豆生産量ランキングは、特定の地域が気候や地理的条件の恩恵を受け、その産業に特化していたことを如実に示しています。ただし、一部地域は地政学的リスクや経済基盤の弱さから生産が制約を受けていることも明らかです。将来に向けて、中長期的な気候変動への適応、生産多様化による経済リスクの軽減、技術革新を通じた収益向上が、特に発展途上地域において重要な課題となるでしょう。国際的な協力による持続可能な農業発展が引き続き求められます。