国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization)の最新データによると、ドミニカ共和国のカシューナッツ生産量は1961年から2023年にかけて大きく変動しています。特に1960年代から1980年代後半にかけて安定的な増加を見せ、2000年代前半にはピークの1,200トンを記録しましたが、それ以降は徐々に減少し、2023年の生産量は667トンとなりました。近年では減少傾向が続いており、生産量回復のための課題と対策が求められています。
ドミニカ共和国のカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 667 |
2.33% ↑
|
2022年 | 652 |
-1.31% ↓
|
2021年 | 661 |
0.68% ↑
|
2020年 | 656 |
-1.01% ↓
|
2019年 | 663 |
-1.08% ↓
|
2018年 | 670 |
-0.77% ↓
|
2017年 | 675 |
-0.73% ↓
|
2016年 | 680 |
-1.23% ↓
|
2015年 | 689 |
-1.53% ↓
|
2014年 | 699 |
-0.1% ↓
|
2013年 | 700 | - |
2012年 | 700 |
5.58% ↑
|
2011年 | 663 |
-25.9% ↓
|
2010年 | 895 |
-19.74% ↓
|
2009年 | 1,115 |
-7.09% ↓
|
2008年 | 1,200 |
17.07% ↑
|
2007年 | 1,025 |
2.5% ↑
|
2006年 | 1,000 | - |
2005年 | 1,000 | - |
2004年 | 1,000 | - |
2003年 | 1,000 |
5.26% ↑
|
2002年 | 950 | - |
2001年 | 950 | - |
2000年 | 950 | - |
1999年 | 950 |
2.15% ↑
|
1998年 | 930 | - |
1997年 | 930 | - |
1996年 | 930 | - |
1995年 | 930 | - |
1994年 | 930 | - |
1993年 | 930 | - |
1992年 | 930 | - |
1991年 | 930 | - |
1990年 | 930 | - |
1989年 | 930 |
1.09% ↑
|
1988年 | 920 | - |
1987年 | 920 | - |
1986年 | 920 |
1.1% ↑
|
1985年 | 910 | - |
1984年 | 910 | - |
1983年 | 910 |
1.11% ↑
|
1982年 | 900 |
2.27% ↑
|
1981年 | 880 |
1.15% ↑
|
1980年 | 870 |
1.16% ↑
|
1979年 | 860 |
1.18% ↑
|
1978年 | 850 | - |
1977年 | 850 |
3.66% ↑
|
1976年 | 820 |
1.23% ↑
|
1975年 | 810 |
1.25% ↑
|
1974年 | 800 |
1.65% ↑
|
1973年 | 787 |
-0.76% ↓
|
1972年 | 793 |
-0.63% ↓
|
1971年 | 798 |
-0.75% ↓
|
1970年 | 804 |
-0.74% ↓
|
1969年 | 810 |
-0.74% ↓
|
1968年 | 816 |
-0.61% ↓
|
1967年 | 821 |
-0.73% ↓
|
1966年 | 827 |
4.82% ↑
|
1965年 | 789 |
0.64% ↑
|
1964年 | 784 |
0.9% ↑
|
1963年 | 777 |
5.28% ↑
|
1962年 | 738 |
-4.77% ↓
|
1961年 | 775 | - |
ドミニカ共和国はカシューナッツ生産において中規模の生産国としての立場を有しています。カシューナッツの生産量は1961年の775トンから1980年代半ばにかけて着実に増加し、1990年代には年間生産量がほぼ930トンで安定しました。その後、2008年には1,200トンを記録し、当時のピークに達しました。これは、国際的な需要の増加や農業技術の発展の恩恵を受けた結果と考えられます。しかし、この上昇傾向は長続きせず、2011年以降は急激な減少が見られるようになり、現在に至っています。
この生産減少の背景には複数の要因が関係しています。まず第一に、気候変動の影響が挙げられます。ドミニカ共和国はカリブ地域に位置しており、ハリケーンや干ばつといった極端な気候変動に直面することが多く、カシューナッツ栽培に適した環境が変化している可能性があります。例えば、2010年以降の極端な気象条件が、2011年の663トンという急激な生産量減少の一因となった可能性があります。
第二に、農業技術やインフラの限界が問題視されています。2000年代前半の増産は一定の技術力の向上を反映したものと思われますが、その後の進展は停滞しています。他国と比較すると、例えばインドやベトナムは最新の農業技術導入や市場対応型の生産戦略を成功させており、それに比してドミニカ共和国の取り組みは不十分であると考えられます。
また、輸出市場における競争力の低下も課題です。全体的にカシューナッツの消費需要は引き続き増加しているものの、需要の多い市場であるアメリカ合衆国やヨーロッパ連合への輸出量は他の生産国に押されていることが予想されます。これにより、生産量が減少するだけでなく、収益面においても悪影響を受けていると考えられます。
さらに、地政学的な背景も影響しています。例えば、カリブ地域全体の経済的脆弱性や地域内の貿易の制約が、農産物生産の効率性を阻害している可能性があります。これに加えて、新型コロナウイルス感染症による国際貿易の停滞や供給チェーンの混乱も、生産や輸出に短期的なマイナス効果を及ぼした要因と言えるでしょう。
このような中、未来に向けた具体的提言が必要です。まず、農業技術の改善を推進することが不可欠です。例えば、耐干ばつ性に優れたカシューナッツ品種の導入や土壌改良技術の開発が進められるべきです。また、災害による農地被害を軽減するため、防風林の設置や灌漑設備の整備といったインフラ投資も重要です。
さらに、輸出市場の多様化によって、需要増加が予測される地域への展開を検討する必要があります。これに関連して、国際規格に準拠した製品加工技術の導入やブランド化戦略の強化が、競争力の向上につながるでしょう。また、地域間協力を強め、カリブ諸国間で共有できるノウハウや資源を活用する枠組みを構築することも効率的です。
結論として、ドミニカ共和国のカシューナッツ生産量推移は過去数十年間にわたる変化に富んでおり、特に最近の減少は気候変動や技術課題、地政学的背景が複合的に影響していると考えられます。これらの課題に対処するためには、国家レベルでの技術革新やインフラへの投資、国際的な協力が必要です。これらの取り組みは、単に農業生産の回復にとどまらず、地域全体の経済安定にも寄与するでしょう。