国際連合食糧農業機関(FAO)の1981年のデータによると、世界のコーヒー豆生産量ランキング1位はブラジル(2,032,210トン)で、全世界の生産量の圧倒的な割合を占めています。2位のコロンビア(782,200トン)、3位のコートジボワール(366,839トン)は、それぞれ南米やアフリカを代表する生産地です。一方、アジアではインドネシアが4位(314,899トン)にランクインし、日本や中国などアジアの他の地域に比べ高い生産量を誇っています。これらの上位国を中心に、コーヒー生産は主に赤道近くの「コーヒーベルト」と呼ばれる地域で行われているのが特徴です。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
南アメリカ | 2,032,210 |
| 2 |
|
南アメリカ | 782,200 |
| 3 |
|
アフリカ | 366,839 |
| 4 |
|
アジア | 314,899 |
| 5 |
|
南アメリカ | 262,904 |
| 6 |
|
南アメリカ | 193,830 |
| 7 |
|
南アメリカ | 180,000 |
| 8 |
|
アジア | 146,700 |
| 9 |
|
アジア | 118,600 |
| 10 |
|
南アメリカ | 113,102 |
| 11 |
|
アフリカ | 109,286 |
| 12 |
|
アフリカ | 99,717 |
| 13 |
|
アフリカ | 97,500 |
| 14 |
|
アフリカ | 93,400 |
| 15 |
|
南アメリカ | 86,085 |
| 16 |
|
アフリカ | 83,460 |
| 17 |
|
南アメリカ | 79,360 |
| 18 |
|
南アメリカ | 75,347 |
| 19 |
|
アフリカ | 66,441 |
| 20 |
|
南アメリカ | 61,087 |
| 21 |
|
南アメリカ | 59,566 |
| 22 |
|
南アメリカ | 52,206 |
| 23 |
|
オセアニア | 49,837 |
| 24 |
|
アフリカ | 43,824 |
| 25 |
|
南アメリカ | 33,250 |
| 26 |
|
アフリカ | 29,200 |
| 27 |
|
南アメリカ | 21,616 |
| 28 |
|
南アメリカ | 21,325 |
| 29 |
|
アフリカ | 20,640 |
| 30 |
|
アフリカ | 17,000 |
| 31 |
|
アフリカ | 14,400 |
| 32 |
|
南アメリカ | 13,608 |
| 33 |
|
南アメリカ | 12,856 |
| 34 |
|
アジア | 12,500 |
| 35 |
|
アジア | 12,060 |
| 36 |
|
アジア | 10,400 |
| 37 |
|
アフリカ | 9,288 |
| 38 |
|
アフリカ | 8,878 |
| 39 |
|
アフリカ | 8,400 |
| 40 |
|
アジア | 8,000 |
| 41 |
|
南アメリカ | 7,062 |
| 42 |
|
アフリカ | 6,600 |
| 43 |
|
アジア | 6,000 |
| 44 |
|
アフリカ | 5,476 |
| 45 |
|
アジア | 5,300 |
| 46 |
|
アジア | 5,031 |
| 47 |
|
アジア | 4,405 |
| 48 |
|
アフリカ | 3,000 |
| 49 |
|
アフリカ | 2,580 |
| 50 |
|
南アメリカ | 2,433 |
| 51 |
|
南アメリカ | 1,560 |
| 52 |
|
アフリカ | 1,500 |
| 53 |
|
南アメリカ | 1,379 |
| 54 |
|
アジア | 1,044 |
| 55 |
|
アフリカ | 1,000 |
| 56 |
|
アフリカ | 1,000 |
| 57 |
|
北アメリカ | 802 |
| 58 |
|
アフリカ | 750 |
| 59 |
|
オセアニア | 597 |
| 60 |
|
アフリカ | 585 |
| 61 |
|
アジア | 300 |
| 62 |
|
南アメリカ | 168 |
| 63 |
|
オセアニア | 121 |
| 64 |
|
南アメリカ | 120 |
| 65 |
|
アフリカ | 100 |
| 66 |
|
アフリカ | 82 |
| 67 |
|
アジア | 68 |
| 68 |
|
オセアニア | 61 |
| 69 |
|
アフリカ | 60 |
| 70 |
|
南アメリカ | 53 |
| 71 |
|
アジア | 52 |
| 72 |
|
アフリカ | 40 |
| 73 |
|
オセアニア | 20 |
| 74 |
|
オセアニア | 20 |
| 75 |
|
南アメリカ | 12 |
| 76 |
|
南アメリカ | 10 |
| 77 |
|
ヨーロッパ | 4 |
| 78 |
|
オセアニア | 2 |
| + すべての国を見る | |||
このデータは、コーヒーが栽培される地理的傾向や世界各地の経済的影響を理解する上で重要な役割を果たします。1981年時点で最も多くのコーヒー豆を生産していたブラジルは、全世界の総生産量のなかで際立ったシェアを持っており、もはや「農業大国」の枠を超え、コーヒー市場の中枢的な位置にあったことがわかります。アグリビジネスの大規模な展開や近代化した生産システムの導入がその背景にあると言えます。
2位のコロンビアも南米の重要な生産地です。この国では主にアラビカ種の豆が生産され、特有の酸味や香りが特徴的です。西アフリカを代表する生産国である3位のコートジボワールは、主にロブスタ種を生産し、その多くがインスタントコーヒーの原料となっています。インドネシア(4位)はアジアで最大の生産国であり、独自の加工手法(湿式加工)が特徴であり、これがアジア及び世界市場での特有の味わいにつながっています。
このデータからは、地域ごとの地政学的影響や農業政策がコーヒー生産に与えた影響も浮き彫りになります。例えば、アフリカ諸国の多くは、1981年時点で内戦や経済的混乱に直面しており、生産規模の拡大が制限されていました。一方で南米諸国は、比較的安定した政治環境の下、輸出向けに農業を効率化する政策が進められています。この違いが、上位国と中位以下の国々の格差を生み出している要因といえます。
また、アジアではインド(118,600トン)が上位にランクインしていますが、日本や中国はランキング下位(中国は43位で6,000トン、日本はランク外)にとどまっています。これにより、アジア市場は主に消費国であり、生産国としての影響力は限定的であることがわかります。ただしその後、中国やベトナム(1981年では45位で5,300トン)が急成長を遂げ、現在では主要な輸出国となっている点は、アジアにおけるコーヒー産業の潜在力を示唆します。
課題としては、気候変動の影響がすでに当時から一部の生産地で顕在化している点です。コーヒーの栽培には安定した気温や降水量が必要ですが、これが変動することで生産量の減少や品種の選択に影響が出ることが懸念されています。また、輸出に依存している多くの発展途上国では、市場価格の変動や収入の不安定性が問題となっており、農家の生活の質の向上が不可欠です。
これに対して提案される対策としては、まず生産者が適応できるような気候変動対策を進めることが重要です。具体的には、乾燥や湿潤などの環境変化に強い品種の開発と普及、農業インフラの整備が求められます。また、コーヒーの価格安定化のための国際的な協力や、フェアトレード(公正貿易)の促進も必要です。この政策は、生産者の生活を安定させると同時に、市場の過度な変動を防ぐ効果も期待できます。
さらに、アジアなどの新興生産地では、コーヒー産業を発展させるために地域間協力の強化が効果的です。例えば、隣接する東南アジア諸国間で技術や資源を共有し、効率的な生産と品質向上を図ることで、地域全体の国際競争力を高める可能性があります。
結論として、1981年のデータはコーヒー産業の当時の構造を明確に示しつつ、現代への教訓も多く含んでいます。ブラジルやコロンビアといった当時の主要生産国が依然として市場を支配している一方で、ベトナムやアジア諸国の成長は、新しい時代の可能性を象徴しています。将来のコーヒー供給を安定させるためには、生産国間の協力や技術革新、そして気候変動への備えが欠かせないものとなるでしょう。