国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、2022年におけるドミニカ共和国の豚飼育数は968,619頭で、近年増減を繰り返しながらも長期的には徐々に回復基調を示しています。特筆すべきは2020年の急激な増加(1,068,890頭)であり、経済的要因や政策の影響が反映されています。一方で、1980年代における豚飼育数の大幅な減少は歴史的に極めて重要な転換点となっています。
ドミニカ共和国の豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 968,619 |
2021年 | 1,010,403 |
2020年 | 1,068,890 |
2019年 | 895,078 |
2018年 | 780,981 |
2017年 | 670,000 |
2016年 | 670,000 |
2015年 | 530,000 |
2014年 | 530,000 |
2013年 | 528,000 |
2012年 | 522,000 |
2011年 | 697,000 |
2010年 | 660,000 |
2009年 | 630,000 |
2008年 | 690,000 |
2007年 | 710,000 |
2006年 | 770,000 |
2005年 | 580,000 |
2004年 | 470,600 |
2003年 | 577,500 |
2002年 | 577,000 |
2001年 | 565,529 |
2000年 | 538,599 |
1999年 | 539,599 |
1998年 | 960,000 |
1997年 | 960,000 |
1996年 | 950,000 |
1995年 | 950,000 |
1994年 | 900,000 |
1993年 | 850,000 |
1992年 | 750,000 |
1991年 | 769,350 |
1990年 | 431,000 |
1989年 | 429,100 |
1988年 | 408,700 |
1987年 | 389,200 |
1986年 | 368,189 |
1985年 | 343,686 |
1984年 | 505,104 |
1983年 | 374,758 |
1982年 | 54,218 |
1981年 | 45,000 |
1980年 | 250,000 |
1979年 | 600,000 |
1978年 | 718,000 |
1977年 | 753,000 |
1976年 | 705,000 |
1975年 | 700,000 |
1974年 | 694,000 |
1973年 | 780,000 |
1972年 | 760,000 |
1971年 | 716,930 |
1970年 | 714,000 |
1969年 | 712,000 |
1968年 | 712,000 |
1967年 | 710,000 |
1966年 | 710,000 |
1965年 | 700,000 |
1964年 | 700,000 |
1963年 | 710,000 |
1962年 | 711,000 |
1961年 | 710,000 |
ドミニカ共和国の豚飼育数の推移は、過去60年以上にわたり複雑な変動を見せてきました。1960年代にはほぼ安定した水準で推移し、710,000頭前後を維持していたものの、1970年代後半と1980年代初頭に大幅な減少を経験しました。1980年は250,000頭という水準となり、翌1981年には45,000頭まで急落しています。この激減は、地域的な感染症の流行や商業的な混乱、さらに地政学的なリスクが影響した可能性が高いと考えられます。この時期における疫病感染と対策の遅延が、豚の飼育基盤そのものに深刻なダメージを与えたと言えます。
その後1980年代半ば以降は、復旧に向けた政府や地域共同体による努力が実を結び、飼育数はゆっくりと回復しました。そして1990年代には好調な増加を見せ、1995年には950,000頭に達しました。この時期の経済成長と畜産業への政策支援が大きな寄与を果たしたと言えます。しかし1999年には再び約540,000頭へと急減し、短期的には不安定さが続いていました。
2020年に豚の飼育数が再び急増し1,068,890頭に到達した背景には、主に国際市場での豚肉需要の増加や農業・畜産セクターへの国内投資の拡大が関与しています。しかしその後、2021年以降は1,000,000頭を若干下回る水準に落ち着きました。この変動は、新型コロナウイルスのパンデミックも影響しており、市場の需要変動や供給網の混乱が要因と考えられます。
ドミニカ共和国における豚飼育の動態は、国内視点だけでなく、国際的な視点からも注目するべきです。他国、例えばアメリカや中国では、豚肉が重要な食糧資源として消費されている背景から、生産規模が急速に拡大しています。一方で、日本では畜産業の規模がやや縮小傾向にありますが、高付加価値商品の生産に力を入れています。それらの状況と比較すると、ドミニカ共和国の飼育数の増減は、政策や市場の動向が畜産業に直接的な影響を与えていることが顕著です。
これまでの飼育数の推移を振り返ると、課題としては感染症対策の重要性が挙げられます。1980年代初頭や1999年頃の急落からも分かるように、疫病流行時の迅速な隔離・防除体制の整備が欠かせません。また、パンデミックや気候変動による飼育環境へのリスクが高まる中、今後は持続可能な畜産業の基盤を強化する必要があります。特に、地域間協力を通じた知識や技術の共有、疫病早期警戒システムの構築が効果的でしょう。
現在の生産基盤をさらに伸ばしていくためには、効率的な飼育技術の導入と併せて、地元市場だけでなく輸出市場を視野に入れた戦略が求められます。特に、ドミニカ共和国はカリブ海地域に位置するため、地理的利点を活かした輸出展開や、豚肉加工品における価値拡大が鍵となるでしょう。同時に小規模農家を支援する政策を通じて、全体の畜産セクターの競争力を向上させるべきです。
最後に、長期的な視点での改善策として、災害対応の強化が挙げられます。台風や洪水といった自然災害が頻発する地域特性を考慮した対策が不可欠です。具体的には、豚舎の気候耐性を高めるインフラ整備や、災害時の支援メカニズムの策定が必要です。ドミニカ共和国の豚飼育セクターが安定成長を遂げることで、地域経済にも大きな恩恵をもたらす可能性があります。