Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した2007年度のコーヒー豆生産量ランキングによると、ブラジルが約2,249,011トンの生産量で世界第1位となり、全体の生産において圧倒的な存在感を示しています。次いで、ベトナム(1,251,000トン)、コロンビア(757,080トン)、インドネシア(676,475トン)の順に大規模な生産を行っています。これら上位4カ国が全体のコーヒー豆市場を大きくリードしており、世界の生産量の大部分を占めています。一方で、上位国と比較して中堅や小規模の生産国も多数存在し、生産の多様性がうかがえます。コーヒーの生産には地理的、気象的条件の影響が大きく、地域ごとの課題が特徴的です。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
南アメリカ | 2,249,011 |
| 2 |
|
アジア | 1,251,000 |
| 3 |
|
南アメリカ | 757,080 |
| 4 |
|
アジア | 676,475 |
| 5 |
|
アジア | 288,000 |
| 6 |
|
アフリカ | 273,400 |
| 7 |
|
南アメリカ | 268,565 |
| 8 |
|
南アメリカ | 248,614 |
| 9 |
|
南アメリカ | 236,302 |
| 10 |
|
南アメリカ | 225,992 |
| 11 |
|
アフリカ | 175,346 |
| 12 |
|
アフリカ | 170,849 |
| 13 |
|
南アメリカ | 121,058 |
| 14 |
|
南アメリカ | 100,000 |
| 15 |
|
アジア | 97,877 |
| 16 |
|
南アメリカ | 96,355 |
| 17 |
|
南アメリカ | 70,311 |
| 18 |
|
オセアニア | 58,080 |
| 19 |
|
アフリカ | 56,470 |
| 20 |
|
アジア | 55,660 |
| 21 |
|
アフリカ | 53,368 |
| 22 |
|
アフリカ | 48,869 |
| 23 |
|
アフリカ | 47,792 |
| 24 |
|
南アメリカ | 47,000 |
| 25 |
|
南アメリカ | 41,232 |
| 26 |
|
南アメリカ | 38,687 |
| 27 |
|
アジア | 33,200 |
| 28 |
|
アフリカ | 31,964 |
| 29 |
|
アフリカ | 31,930 |
| 30 |
|
南アメリカ | 27,012 |
| 31 |
|
アフリカ | 26,556 |
| 32 |
|
アジア | 26,000 |
| 33 |
|
アジア | 21,213 |
| 34 |
|
アフリカ | 21,000 |
| 35 |
|
アジア | 18,330 |
| 36 |
|
南アメリカ | 15,117 |
| 37 |
|
アフリカ | 14,683 |
| 38 |
|
アジア | 14,000 |
| 39 |
|
南アメリカ | 13,790 |
| 40 |
|
南アメリカ | 13,500 |
| 41 |
|
アフリカ | 11,523 |
| 42 |
|
アフリカ | 9,300 |
| 43 |
|
南アメリカ | 6,833 |
| 44 |
|
アジア | 6,050 |
| 45 |
|
アジア | 5,900 |
| 46 |
|
アフリカ | 4,398 |
| 47 |
|
アフリカ | 3,432 |
| 48 |
|
北アメリカ | 3,400 |
| 49 |
|
アフリカ | 3,180 |
| 50 |
|
南アメリカ | 3,100 |
| 51 |
|
アフリカ | 3,000 |
| 52 |
|
アフリカ | 2,520 |
| 53 |
|
アフリカ | 2,400 |
| 54 |
|
アフリカ | 1,860 |
| 55 |
|
アフリカ | 1,860 |
| 56 |
|
アフリカ | 1,403 |
| 57 |
|
アフリカ | 720 |
| 58 |
|
南アメリカ | 480 |
| 59 |
|
アジア | 460 |
| 60 |
|
アジア | 320 |
| 61 |
|
南アメリカ | 180 |
| 62 |
|
アフリカ | 125 |
| 63 |
|
アフリカ | 121 |
| 64 |
|
南アメリカ | 82 |
| 65 |
|
南アメリカ | 60 |
| 66 |
|
アフリカ | 60 |
| 67 |
|
南アメリカ | 45 |
| 68 |
|
アフリカ | 23 |
| 69 |
|
オセアニア | 21 |
| 70 |
|
オセアニア | 17 |
| 71 |
|
オセアニア | 17 |
| 72 |
|
オセアニア | 16 |
| 73 |
|
オセアニア | 15 |
| 74 |
|
南アメリカ | 10 |
| 75 |
|
オセアニア | 8 |
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2007年度のデータを見ると、コーヒー豆の生産はブラジルを筆頭とした少数の大規模生産国に依存している構造が明らかです。ブラジル1カ国で世界全体の生産量の約3割を占めており、その生産規模の大きさは他国を圧倒しています。この圧倒的な生産力は、ブラジルの広大な農地、適した気候条件、および長年にわたる農業技術の進化によるものです。続くベトナムは特にロブスタ種(苦味が強く効率的に栽培できる品種)の生産で知られ、急激な農業改革による発展が顕著です。一方で、コロンビアとインドネシアはアラビカ種(繊細な風味で高級市場向け)の生産割合が高く、それぞれの地理条件に適応した栽培が行われています。
これら上位4カ国が全体の生産量の約6割を占めており、市場への影響力が非常に大きい一方で、他の国々にもそれぞれ特有の役割があります。例えば、エチオピアはコーヒー発祥の地として知られ、主にアラビカ種の高品質な豆を輸出しています。アフリカにおいてはエチオピアやウガンダなど複数の国がコーヒー収益を農村部の重要な収入源としています。しかし、栽培技術の限界や気候変動、地理的な紛争などが、生産効率や輸送網へ影響を与えています。
さらなる課題として、気候変動が大きな問題として挙げられます。特にコーヒー栽培の要であるアラビカ種は、気温や雨量の変化に対して非常に敏感なため、今後の収穫量が不安定になることが予測されています。例えば、ラテンアメリカやアフリカの主要生産国では、異常気象や干ばつによる収穫減少が懸念されています。また、東南アジアを含む地域では、森林伐採による生態系への影響も課題として浮上しています。環境保全と生産維持の両立を目指す施策が急がれる状況です。
さらに地政学的なリスクも注視が必要です。コーヒーは途上国で生産されることが多い一方で、消費は先進国に偏っています。これは生産地と消費地の経済の不均衡を如実に表しており、生産国における労働環境の悪化、価格競争、貿易上の不平等といった問題を引き起こしています。また、地域紛争や輸送ルートにおける不安定性が、輸出に影響を与える可能性もあります。
これらの課題に対応するためには、いくつかの方策が考えられます。まず、気候変動に対応するための持続可能な農業技術の導入が急務です。耐病性や高温耐性を持つ品種の開発や、農地の多角的利用が求められます。また、生産者の教育機会を拡充し、収入の安定を図る支援が必要です。国際的な協力の枠組みとして、フェアトレードの推進や生産国と消費国の間での新たな貿易協議の設立も有効です。
コーヒー豆は単なる嗜好品にとどまらず、世界中で経済や文化に密接に関わる重要な作物です。その未来の安定のためには、国際社会全体での協調した取り組みが不可欠です。環境、経済、そして社会的な課題に真正面から向き合い、すべての関係者が利益を享受できる持続可能な生産体制を実現することが、これからの鍵となるでしょう。