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フィジーの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

最新の国際連合食糧農業機関(FAO)によるデータによると、フィジーの牛乳生産量は、1961年の20,000トンから1970年代初頭にかけて急激に増加し、その後も1980年代から1990年代にかけて安定した発展を見せました。しかし、2000年代後半から急激に減少し、2010年代以降、特に2019年から2023年にかけては約10,767~12,737トンの範囲で低い水準が続いています。この変動の背景には、地政学的リスクや外部要因、気候変動の影響が存在していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 12,737
-0.23% ↓
2022年 12,767
12% ↑
2021年 11,399
-8.02% ↓
2020年 12,393
15.1% ↑
2019年 10,767
-8.5% ↓
2018年 11,767
-9.36% ↓
2017年 12,982
-8.4% ↓
2016年 14,172
12.17% ↑
2015年 12,634
-24.27% ↓
2014年 16,684
23.45% ↑
2013年 13,515
6.87% ↑
2012年 12,646
-9.11% ↓
2011年 13,914
1.08% ↑
2010年 13,766
10.89% ↑
2009年 12,414
-78.78% ↓
2008年 58,500
0.86% ↑
2007年 58,000
0.87% ↑
2006年 57,500
0.88% ↑
2005年 57,000
14% ↑
2004年 50,000
29.21% ↑
2003年 38,696
-32.7% ↓
2002年 57,500
0.88% ↑
2001年 57,000
1.79% ↑
2000年 56,000
1.82% ↑
1999年 55,000
-3.51% ↓
1998年 57,000
-1.38% ↓
1997年 57,800
-4.78% ↓
1996年 60,700
-8.03% ↓
1995年 66,000
1.13% ↑
1994年 65,261
3.59% ↑
1993年 63,000
60.23% ↑
1992年 39,317
-36.58% ↓
1991年 62,000
6.9% ↑
1990年 58,000
9.43% ↑
1989年 53,000
7.14% ↑
1988年 49,470
-3% ↓
1987年 51,000 -
1986年 51,000
15.91% ↑
1985年 44,000
29.41% ↑
1984年 34,000
-2.86% ↓
1983年 35,000
-12.5% ↓
1982年 40,000
-20% ↓
1981年 50,000
-11.19% ↓
1980年 56,300
1.62% ↑
1979年 55,400
2.88% ↑
1978年 53,850
-3.84% ↓
1977年 56,000
12% ↑
1976年 50,000
-3.85% ↓
1975年 52,000
1.96% ↑
1974年 51,000
2% ↑
1973年 50,000
13.64% ↑
1972年 44,000 -
1971年 44,000
7.07% ↑
1970年 41,094
17.41% ↑
1969年 35,000
13.75% ↑
1968年 30,770
-20.57% ↓
1967年 38,740
0.1% ↑
1966年 38,700
0.08% ↑
1965年 38,668 -
1964年 38,668
61.12% ↑
1963年 24,000
9.09% ↑
1962年 22,000
10% ↑
1961年 20,000 -

フィジーの牛乳生産量は1961年から着実に増加をみせ、1970年代には国内の酪農業が成長を遂げたことがうかがえます。この時期、農業技術の普及や政府による酪農支援が生産量拡大に寄与したと考えられます。特に1973年から1980年には50,000トンを超える生産量を記録し、この時期は国内の酪農基盤の強化が進んだと見られます。しかし1982年以降、40,000トン台を下回ることがたびたびあり、一時的な減少傾向が確認されました。

1990年代には再び生産が増加し、1994年には65,261トンとピークを迎えましたが、これ以降は次第に生産が減少し、1996年以降は約60,000トンを下回る状況が続いています。この減少傾向には、牛乳価格の低迷や酪農業の効率化不足、農業従事者の高齢化、さらには輸入乳製品の増加による競争の激化などが関与していると考えられます。2009年には生産量が12,414トンまで急減しましたが、これはおそらく自然災害や気候変動の影響を受けた結果と推測されます。

特に2010年代以降、毎年10,000トン台から20,000トン未満の範囲で低迷が続いています。この背景には、フィジーの特殊な地政学的背景や気象条件が影響している可能性があります。たとえば、近年の気候変動に伴う異常気象や干ばつは牧草の育成に悪影響を及ぼし、乳牛の生産性を低下させたと考えられます。また、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、輸送網の混乱や酪農資材の不足をもたらし、2020年から2021年の生産量回復を制約する一因となったでしょう。

さらに、地政学的な要因としては、フィジーが輸入に依存する乳製品市場において、近隣諸国(特にニュージーランドやオーストラリア)との競争が激化している点も見逃せません。これらの国々の酪農業は高度に効率化されており、よりコストが低い製品を輸出しています。加えて、国内酪農従事者の減少や専門研修の欠如も、フィジー内での生産量増加を阻む要因として挙げられます。

フィジーの牛乳生産量の持続可能な拡大を目指すには、まず小規模農家への技術支援や設備投資を行うことが重要です。乳牛に適した高栄養価の牧草の育成を支援する政策や、持続可能な水資源管理の導入も、有効な対策といえるでしょう。また、輸入製品に対抗するため、品質向上や差別化を図るべく、地元ブランドの確立や国際認証の取得を推進することも有効です。同時に、地元酪農業の人材育成を目的とした教育プログラムの充実も欠かせません。これらの施策に加え、災害対策や気候変動へのレジリエンス向上策の導入も緊急の課題となっています。

この問題はフィジーの酪農業に限った話ではなく、太平洋諸島全域に当てはまる課題を示唆しています。地域間協力を通じて技術や資源を共有し、効率性を向上させる枠組みを整えることが必要です。特に、気候変動の影響が今後も深刻化することを考慮すると、水資源管理や災害対策への国際的な支援が求められます。

結論として、フィジーの牛乳生産量低迷の原因には複数の要因が絡んでいますが、これらの課題に着目して政策を講じることは、フィジー国内だけでなく、太平洋地域の持続的な農業発展に繋がる重要な一歩となるでしょう。国際連携の強化も視野に入れ、具体的な改善策を進めていくことが肝要です。