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フィジーのサトウキビ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、フィジーのサトウキビ生産量は1961年の1,166,000トンから1984年の4,290,000トンに急成長しましたが、その後は安定した推移の後、2000年代以降減少傾向にあります。近年では2023年に1,565,564トンに落ち込んでおり、ピーク時の半分以下にまで低下しています。特に2010年代以降、この縮小傾向が顕著であり、フィジーのサトウキビ産業を取り巻く課題が浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,565,564
-4.48% ↓
2022年 1,639,000
15.67% ↑
2021年 1,417,000
-17.9% ↓
2020年 1,726,000
-4.43% ↓
2019年 1,806,000
6.42% ↑
2018年 1,697,000
4.05% ↑
2017年 1,631,000
17.59% ↑
2016年 1,387,000
-24.82% ↓
2015年 1,845,000
0.71% ↑
2014年 1,832,000
13.79% ↑
2013年 1,610,000
4.14% ↑
2012年 1,546,000
-26.9% ↓
2011年 2,115,000
20.79% ↑
2010年 1,751,000
-16.18% ↓
2009年 2,089,000
-10.03% ↓
2008年 2,322,000
-7.6% ↓
2007年 2,513,000
-21.27% ↓
2006年 3,192,000
12.95% ↑
2005年 2,826,000
-4.88% ↓
2004年 2,971,000
5.47% ↑
2003年 2,817,000
-12.41% ↓
2002年 3,216,000
4.52% ↑
2001年 3,077,000
-14.48% ↓
2000年 3,598,000
-3.98% ↓
1999年 3,747,000
65.58% ↑
1998年 2,263,000
-33.13% ↓
1997年 3,384,000
-9.25% ↓
1996年 3,729,000
-9.28% ↓
1995年 4,110,238
1.13% ↑
1994年 4,064,320
9.73% ↑
1993年 3,704,000
4.84% ↑
1992年 3,533,000
4.52% ↑
1991年 3,380,324
-15.83% ↓
1990年 4,016,000
-2.02% ↓
1989年 4,099,000
28.68% ↑
1988年 3,185,362
7.6% ↑
1987年 2,960,358
-27.95% ↓
1986年 4,109,000
35.03% ↑
1985年 3,043,000
-29.07% ↓
1984年 4,290,000
94.73% ↑
1983年 2,203,000
-45.94% ↓
1982年 4,075,000
3.66% ↑
1981年 3,931,000
16.99% ↑
1980年 3,360,000
-17.3% ↓
1979年 4,063,000
42.41% ↑
1978年 2,853,000
6.69% ↑
1977年 2,674,000
17.13% ↑
1976年 2,283,000
5.69% ↑
1975年 2,160,122
0.43% ↑
1974年 2,150,978
-13.8% ↓
1973年 2,495,419
11.48% ↑
1972年 2,238,358
-12.06% ↓
1971年 2,545,205
-11.81% ↓
1970年 2,885,983
21.42% ↑
1969年 2,376,923
-17.22% ↓
1968年 2,871,495
30.68% ↑
1967年 2,197,335
-1.36% ↓
1966年 2,227,536
0.99% ↑
1965年 2,205,649
-6.4% ↓
1964年 2,356,410
-0.76% ↓
1963年 2,374,401
28.14% ↑
1962年 1,853,000
58.92% ↑
1961年 1,166,000 -

フィジーは長らくサトウキビを主要な輸出産業とする国であり、経済の中心的な役割を果たしてきました。1960年代から1980年代末にかけての急速な生産量増加は、農地の拡大や技術的進歩、そして国際市場でのフィジー産糖の競争力強化によるものと考えられます。特に1984年の4,290,000トンは、フィジーのサトウキビ生産の歴史における最高値であり、この時期が最盛期であったといえるでしょう。

しかし、1990年代から断続的に生産量が減少し始め、2000年代に入ると減少ペースが加速しています。農業技術の進歩や国際市場での需要の変化を加味したとしても、この低迷には幾つかの理由が挙げられます。第一に、フィジー固有の気候条件や自然災害の影響が大きいです。同国はサイクロンの影響を受けやすい地理的条件にあり、これらの自然災害が農地を荒廃させ収量を減少させる要因となっています。2016年に発生したサイクロン「ウィンストン」の影響を例に挙げると、この年の生産量は1,387,000トンに落ち込んでおり、これは災害と農業生産の脆弱な関係性を強く示しています。

第二に、地政学的背景や社会経済状況の変化があります。例えば、租借農地の契約問題や農業労働力の不足が挙げられます。特にフィジーでは、インド系移民が長年サトウキビ産業の中核を担ってきたものの、土地政策の変更やインド系コミュニティの減少が生産維持を困難にしています。また、世界的に砂糖需要が変化し、日本やアメリカといった主要輸出先での健康志向の高まりに伴い、輸出量の競争環境が厳しくなったことも影響しています。

近年のサトウキビ生産量の低下は、国内農業政策の見直しの必要性を強く示しています。持続可能性を確保するためには、政府および関連機関による具体的な対策が求められます。一つの提言として、灌漑設備や防災インフラへの投資をより強化し、災害時の被害を最小化する取り組みを進めるべきです。また、農業労働者の確保に向けた教育プログラムの拡充や、若手農家への助成金制度の導入も有効な手段といえます。

さらに、地政学的な影響を最小限にするために、フィジー国内だけでなく地域全体での協力体制を構築することも重要です。例えば、太平洋諸島フォーラム(PIF)などの地域協定の枠組みを活用し、農業技術の共有や輸出ルートの多様化を図るべきです。また、気候変動に伴うリスクを軽減するためには、国際的な支援も不可欠であり、例えば国際連合や世界銀行からの資金援助を取り入れた長期的な農業改革プランを策定する必要があります。

最後に、フィジーがサトウキビ産業だけに頼るのではなく、農業全体の多様化を図ることが未来への持続可能な経済構造を形成する一助になると考えられます。他国では、例えばインドやブラジルが同様に砂糖産業の再構築に向けた努力を続けており、その経験から学ぶことでフィジーも自国農業の競争力を再び高めていけるでしょう。

結論として、フィジーのサトウキビ生産の現状は、気候変動、自然災害、国内外の経済的課題が複雑に絡み合った結果といえます。しかし、これらの課題に正面から取り組むことで、同国の農業産業には新たな成長の可能性と希望が残されています。