国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、フィジーのヤギ肉生産量は、1961年には450トンだったのに対し、2023年には156トンへ減少しました。この62年間のデータを振り返ると、1980年代から1990年代にかけて生産量が大幅に増加するトレンドが見られた一方で、2000年代後半以降は急激に減少する傾向が顕著です。特に2009年以降の落ち込みが深刻であり、近年ではやや回復の兆しがあるものの、依然として水準は低迷しています。
フィジーのヤギ肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 156 |
-26.07% ↓
|
2022年 | 211 |
13.44% ↑
|
2021年 | 186 |
16.25% ↑
|
2020年 | 160 |
-14.44% ↓
|
2019年 | 187 |
-3.61% ↓
|
2018年 | 194 |
5.43% ↑
|
2017年 | 184 |
138.96% ↑
|
2016年 | 77 |
-8.33% ↓
|
2015年 | 84 |
-20% ↓
|
2014年 | 105 |
-31.82% ↓
|
2013年 | 154 |
54% ↑
|
2012年 | 100 |
-25.37% ↓
|
2011年 | 134 |
-40.97% ↓
|
2010年 | 227 |
-10.59% ↓
|
2009年 | 254 |
-74.17% ↓
|
2008年 | 983 |
1.44% ↑
|
2007年 | 969 |
2.43% ↑
|
2006年 | 946 |
1.72% ↑
|
2005年 | 930 |
-19.69% ↓
|
2004年 | 1,158 |
42.96% ↑
|
2003年 | 810 |
6.3% ↑
|
2002年 | 762 |
-21.52% ↓
|
2001年 | 971 |
3.96% ↑
|
2000年 | 934 |
3.2% ↑
|
1999年 | 905 |
3.43% ↑
|
1998年 | 875 |
5.04% ↑
|
1997年 | 833 |
3.35% ↑
|
1996年 | 806 |
0.62% ↑
|
1995年 | 801 |
5.67% ↑
|
1994年 | 758 |
19% ↑
|
1993年 | 637 |
-11.53% ↓
|
1992年 | 720 |
9.09% ↑
|
1991年 | 660 |
1.85% ↑
|
1990年 | 648 |
-4.57% ↓
|
1989年 | 679 |
-1.74% ↓
|
1988年 | 691 |
-1.14% ↓
|
1987年 | 699 |
2.79% ↑
|
1986年 | 680 |
6.08% ↑
|
1985年 | 641 |
2.89% ↑
|
1984年 | 623 |
10.27% ↑
|
1983年 | 565 |
6.81% ↑
|
1982年 | 529 |
5.38% ↑
|
1981年 | 502 |
11.31% ↑
|
1980年 | 451 |
35.84% ↑
|
1979年 | 332 |
8.5% ↑
|
1978年 | 306 |
-7.27% ↓
|
1977年 | 330 | - |
1976年 | 330 |
-11.05% ↓
|
1975年 | 371 |
-0.27% ↓
|
1974年 | 372 | - |
1973年 | 372 |
-0.27% ↓
|
1972年 | 373 |
-0.8% ↓
|
1971年 | 376 |
3.01% ↑
|
1970年 | 365 |
-20.65% ↓
|
1969年 | 460 | - |
1968年 | 460 |
15% ↑
|
1967年 | 400 |
-20% ↓
|
1966年 | 500 |
-1.96% ↓
|
1965年 | 510 |
2% ↑
|
1964年 | 500 | - |
1963年 | 500 |
11.11% ↑
|
1962年 | 450 | - |
1961年 | 450 | - |
フィジーのヤギ肉生産は、農業や畜産業が小規模経済の柱となる島国にとって重要な指標となります。この生産量データは、食料供給の動向だけでなく、国の農業政策、気候変動の影響、経済状況の変化をも映し出しています。
1961年から1980年までの間、フィジーのヤギ肉生産量は年間450~500トン程度でほぼ横ばいの水準を維持していました。しかし1980年代に入ると、生産量は大幅に増加する傾向を見せます。1986年の680トンから1995年の801トンにかけての急伸は、国内での畜産技術の向上や農業政策の支援、さらには国内外の需要増加によるものとみられます。この時期はヤギ肉が主要なタンパク源として地域住民にも広く利用され、需要が持続可能な形で生産を支えたと考えられます。
さらに、2004年には1,158トンというピークを記録しましたが、その後に大きな下落が見られるのが特徴的です。特に2009年以降の急激な減少(254トン)、2011年の134トン、そして2015年のわずか84トンという低迷は、複数の要因によるものと考えられます。一つは、サイクロンなどの自然災害による農業インフラの破壊で、これは島国であるフィジーにとって避けて通れない気候的リスクです。また、2008年以降に世界的な経済危機があり、その影響が経済全般に波及したことも、畜産への投資減少に繋がった可能性があります。
さらに、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響も無視できません。2020年には160トン、2023年には156トンと低迷が続いていることから、グローバルな物流の停滞や観光業の冷え込みによるフィジー経済の異常収縮が間接的にヤギ肉生産にも影響を及ぼしたことが示唆されます。
フィジーの農業への依存度や自然災害の多さを考えると、ヤギ肉の生産基盤を強化するためには多角的な対策が必要とされます。一つの提言として、小規模農家への資金支援や飼料栽培の支援を強化し、災害に強い持続可能な畜産モデルを構築することが挙げられます。また、地域間協力を介して他の太平洋島嶼国との技術交流を行い、災害リスクに強い畜産技術を導入することも効果的です。具体的には、早期警戒システムの整備やヤギ用の適応品種の導入などが考えられます。
さらに、気候変動対策としてフィジー国内でも低炭素型の農業政策を推進することが重要です。例えば、太陽光エネルギーを利用した農場の運営や、森林破壊を防ぎながら干ばつに耐性のある飼料作物の栽培を推進することが求められます。
結論として、ヤギ肉生産量の推移からはフィジーの農業が直面する課題が浮かび上がりますが、適切な政策と国際的な協力を通じて、この下降機運を反転させることは可能です。特に、農業と環境政策を統合的に推進し、持続可能な農業を育む努力が必要です。この努力は、フィジー国内の食料安全保障を強化するだけでなく、地域全体の経済安定化にも貢献するでしょう。