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フィジーの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した2024年7月更新のデータによると、フィジーの羊肉生産量は大きな変動を経て成長を遂げています。1993年にはわずか18トンだった生産量が、2023年には580トンまで増加し、過去30年間で約32倍の生産成長を記録しました。この過程で、特に2009年以降の急激な増加が顕著で、2012年以降は100トンを超え安定的に生産が拡大しています。一方で2015年から2019年にかけて一時的な減少が見られ、生産は波を伴う成長を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 580
176.19% ↑
2022年 210
43.84% ↑
2021年 146
15.87% ↑
2020年 126
40% ↑
2019年 90
-25% ↓
2018年 120
42.86% ↑
2017年 84
5% ↑
2016年 80
8.11% ↑
2015年 74
-62.81% ↓
2014年 199 -
2013年 199
14.37% ↑
2012年 174
52.63% ↑
2011年 114
80.67% ↑
2010年 63
-29.02% ↓
2009年 89
217.5% ↑
2008年 28
3.7% ↑
2007年 27
8% ↑
2006年 25
66.67% ↑
2005年 15
-6.25% ↓
2004年 16
-23.81% ↓
2003年 21
-22.22% ↓
2002年 27
-15.63% ↓
2001年 32
3.23% ↑
2000年 31
6.9% ↑
1999年 29
-3.33% ↓
1998年 30
-11.76% ↓
1997年 34
-5.56% ↓
1996年 36
-5.26% ↓
1995年 38
58.33% ↑
1994年 24
33.33% ↑
1993年 18 -

フィジーの羊肉生産量は1993年から2023年に至るまで長期的に重要な変化を遂げており、この背景には地理的特徴、政策的努力、地域の需要動向が複雑に絡み合っています。1993年から2005年までの一貫した低生産量から見て取れるように、この時期の羊肉生産は規模が小さく、フィジーが自給経済基盤を発展途上段階に置いていたことから、外部依存が強い状況でした。

特筆すべきは2009年以降の急激な生産量の増加です。2009年の89トンは、前年の28トンから三倍以上の増加を記録しています。この時期、多くの南太平洋地域国と同様に、フィジーでも持続可能な農業政策を掲げ、畜産業への投資が行われたことが要因であると考えられています。また、2011年以降の生産量の持続的拡大は、畜産技術の向上や農業協同組合の強化、さらに地元の需要増加によるものでしょう。気候条件の改善や降水量が安定した年も、家畜飼育に適した環境を提供した可能性があります。

ただし、2015年から2019年にかけて再び生産量が下落しています。この時期の下落は、新型の疫病や飼料供給の不安定化、またはサイクロンなどの自然災害の影響を受けた可能性があります。フィジーはサイクロンといった気象災害に頻繁に見舞われる地理的特性を持つため、こうした要因は畜産業全体にリスクを伴う構造的問題を意味しています。

直近の2022年から2023年にかけての劇的な跳躍、特に2023年の580トンという記録的な生産量は、重要な変曲点を意味します。これは、国内外市場の不断の需要拡大に応じて生産能力が大幅に拡大した結果であると推察されます。また、政府が農業分野における新技術導入や輸出用商品の生産強化政策を積極的に進めた結果とみることができます。これには国際的な技術協力や投資が伴っている可能性が高いでしょう。

このような成長パターンの背景には、フィジーが地政学的にオセアニア地域で重要な位置を占めていることが挙げられます。他国、特に中国やインドなどのアジア諸国との経済的連携が強まる中で、フィジーの羊肉が輸出商品として台頭してくる可能性も示唆されています。ただし、このような国際市場依存が拡大する中、食品安全基準や供給チェーンの安定性確保なども重要な課題となり得るでしょう。

将来の課題としては、まずサイクロンや干ばつといった自然災害が継続的なリスクとして挙げられます。災害に対応するための防災インフラの整備や早期警戒システムの強化が求められます。また、家畜疫病の発生を防ぐための効果的な衛生管理体制も必要です。そして、長期的な観点では、地域間協力を通じてオセアニア各国と羊肉流通の効率化を図ることが重要です。たとえば、共同輸送ネットワークの構築や、国際的市場規格への適合などの施策が考えられます。

最後に、持続可能な生産を目指す上では、草地管理や飼料供給の科学的な研究、および適切な技術の導入が不可欠です。これにより、地元の生産者が安定した経済的基盤を築きつつ、自然環境への負荷を最小限に抑える農業モデルを実現することが可能です。フィジー政府および国際的な機関が協力し、これらの施策を進めることで、同国の羊肉生産はさらに発展し、地域経済の安定と持続可能な発展に寄与するでしょう。