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フィジーの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、フィジーの牛飼養数の長期推移には大きな増減が見られます。特に1960年代以降の増加傾向から1990年代にピークを迎え、その後減少しています。2010年代にはもう一度安定するものの、2014年以降急激な減少が確認されます。一部の年では緩やかな回復も見られるものの、2022年の数値は71,608頭と、過去最高値である1995年の354,000頭に比べて大きく減少しました。この数字は、フィジーの農業構造や環境政策、さらには地政学的要因が大きく影響していると考えられます。

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年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 121,798
70.09% ↑
2022年 71,608
19.54% ↑
2021年 59,905
-35.79% ↓
2020年 93,301
-18.52% ↓
2019年 114,502
27.95% ↑
2018年 89,490
3.5% ↑
2017年 86,463
23.46% ↑
2016年 70,034
-1.63% ↓
2015年 71,194
-0.99% ↓
2014年 71,909
-76.95% ↓
2013年 312,000
0.65% ↑
2012年 310,000
0.32% ↑
2011年 309,000 -
2010年 309,000
-0.32% ↓
2009年 310,000
-0.64% ↓
2008年 312,000
-0.95% ↓
2007年 315,000
1.61% ↑
2006年 310,000 -
2005年 310,000 -
2004年 310,000 -
2003年 310,000
-3.13% ↓
2002年 320,000
-5.88% ↓
2001年 340,000
1.49% ↑
2000年 335,000
1.52% ↑
1999年 330,000
-4.25% ↓
1998年 344,636
-1.53% ↓
1997年 350,000 -
1996年 350,000
-1.13% ↓
1995年 354,000
5.99% ↑
1994年 334,000
6.03% ↑
1993年 315,000
9.38% ↑
1992年 288,000
2.78% ↑
1991年 280,221
2.65% ↑
1990年 273,000
1.87% ↑
1989年 268,000
1.13% ↑
1988年 265,000
1.53% ↑
1987年 261,000
2.76% ↑
1986年 254,000
2.83% ↑
1985年 247,000
2.92% ↑
1984年 240,000
3% ↑
1983年 233,000
3.1% ↑
1982年 226,000
3.2% ↑
1981年 219,000
3.3% ↑
1980年 212,000
3.41% ↑
1979年 205,000
9.04% ↑
1978年 188,000
-1.57% ↓
1977年 191,000
3.8% ↑
1976年 184,000
3.95% ↑
1975年 177,000
4.12% ↑
1974年 170,000
4.94% ↑
1973年 162,000
3.63% ↑
1972年 156,323
2.63% ↑
1971年 152,323
1.89% ↑
1970年 149,500
2.4% ↑
1969年 146,000
3.95% ↑
1968年 140,447
4.42% ↑
1967年 134,504
19.04% ↑
1966年 112,986
-0.01% ↓
1965年 113,000
0.01% ↑
1964年 112,986 -
1963年 112,986 -
1962年 112,986 -
1961年 112,986 -

フィジーの牛飼養数は、1960年代から徐々に増加を続け、1995年に354,000頭と最も高い水準に達しました。しかしその後は減少に転じ、2022年ではわずか71,608頭となり、過去数十年間の最低水準に近い状態が続いています。このような大幅な変動には、複数の要因が関与していると考えられます。

まず、1960年代から1990年代にかけての増加は、フィジー国内での畜産業の発展と食料自給率向上を目指した政策に支えられていた可能性が高いです。特に酪農業や牛肉生産の成長は、フィジーの農村経済において重要な役割を果たしました。この時期における顕著な農業技術の導入や、人口増加に伴う国内需要の高まりが牛飼養数の上昇を支えたと考えられます。

しかし、1990年代中盤以降の減少は、アジア太平洋地域全体の消費パターンの変化や紛争、気候変動の影響、さらに輸入製品の増加による圧力が主な要因であると推測されます。例えば、気候変動による干ばつや洪水といった環境要因は、牧草の枯渇や育成環境の悪化を招いた可能性があります。また、2000年代以降、国際的な輸出競争力の低下や経済政策の変化により、畜産業そのものが抑制される結果となりました。

さらに注目すべきは、2014年以降の急激な減少傾向です。この時期のデータが示唆するのは、自然災害や病気、さらには土地利用の変化といった要因の存在です。太平洋地域で頻発するサイクロンは、畜産地帯の生産性を著しく低下させる可能性があります。また、動物疾病の拡大が牛の個体数に直接影響を与えた可能性も否定できません。それに加えて、都市化や観光産業の発展に伴う農業用地の転用により、牛の生育スペースが制限されたと考えられます。

このデータの背景には、フィジー固有の地政学的なリスクも見逃せません。多くの小島から成る同国では、輸送インフラの整備が不十分であることが、国内市場の効率的な運営を妨げています。また、国際市場での競争力を高めるための政策が欠如していることも、牛飼養数の安定化に向けた取り組みを難しくしている要因の一つです。

将来に向けては、以下の点を改善する必要があります。まず第一に、持続可能な農業を促進するための気候対応型技術の導入が求められます。例えば、干ばつに強い牧草や、病気に強い牛種の育種が推奨されます。また、畜産業を支えるインフラ整備、特に牧場管理技術を向上させるための教育や訓練が重要です。さらに、政府の補助金を利用して小規模農家の競争力を向上させる政策を導入することで、畜産業の復興を図ることができます。

まとめると、フィジーにおける牛飼養数の推移は、国内外の多様な要因によって変動しています。気候変動といった自然的要因から、経済政策や地政学的リスクに至るまで、これらの問題に対処するためには包括的な政策が必要です。国や国際機関は、より強固な財政支援や政策支援を通じて、気候変動に強い農業モデルを確立し、牛飼養数の回復に向けた取り組みを強化すべきです。