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オーストリアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによれば、オーストリアの牛乳生産量は、過去数十年にわたり多くの変化を経験してきました。2022年には3,942,500トンとピークを迎えた後、2023年には3,678,790トンに減少しました。全体的には、牛乳生産量は長期的に増加傾向にありますが、一部の年で減少が見られるなど波動も存在します。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,678,790
-6.69% ↓
2022年 3,942,500
2.93% ↑
2021年 3,830,140
0.38% ↑
2020年 3,815,470
0.9% ↑
2019年 3,781,340
-1.04% ↓
2018年 3,821,190
2.92% ↑
2017年 3,712,727
2.35% ↑
2016年 3,627,606
2.54% ↑
2015年 3,537,757
1.26% ↑
2014年 3,493,861
2.97% ↑
2013年 3,393,057
0.32% ↑
2012年 3,382,076
2.27% ↑
2011年 3,307,130
1.52% ↑
2010年 3,257,738
0.86% ↑
2009年 3,229,809
1.06% ↑
2008年 3,195,948
1.3% ↑
2007年 3,155,068
0.27% ↑
2006年 3,146,657
1.06% ↑
2005年 3,113,658
-0.75% ↓
2004年 3,137,322
-2.87% ↓
2003年 3,229,885
-1.89% ↓
2002年 3,292,203
-0.22% ↓
2001年 3,299,567
2.05% ↑
2000年 3,233,156
3.23% ↑
1999年 3,131,892
2.93% ↑
1998年 3,042,623
0.92% ↑
1997年 3,015,009
1.98% ↑
1996年 2,956,591
0.29% ↑
1995年 2,948,170
-10.07% ↓
1994年 3,278,429
0.27% ↑
1993年 3,269,622
-0.52% ↓
1992年 3,286,583
-1.29% ↓
1991年 3,329,700
-0.6% ↓
1990年 3,349,855
-0.04% ↓
1989年 3,351,203
-0.07% ↓
1988年 3,353,447
-9.97% ↓
1987年 3,724,655
-1.37% ↓
1986年 3,776,452
-0.54% ↓
1985年 3,797,030
0.75% ↑
1984年 3,768,687
2.66% ↑
1983年 3,671,060
2.28% ↑
1982年 3,589,265
1.67% ↑
1981年 3,530,200
2.92% ↑
1980年 3,430,006
2.62% ↑
1979年 3,342,592
-0.97% ↓
1978年 3,375,259
0.83% ↑
1977年 3,347,500
1.74% ↑
1976年 3,290,300
0.77% ↑
1975年 3,265,100
-0.53% ↓
1974年 3,282,500
0.17% ↑
1973年 3,276,900
-0.27% ↓
1972年 3,285,800
0.11% ↑
1971年 3,282,300
-1.39% ↓
1970年 3,328,400
-0.38% ↓
1969年 3,341,100
-0.47% ↓
1968年 3,356,900
-0.11% ↓
1967年 3,360,500
4.49% ↑
1966年 3,216,000
0.21% ↑
1965年 3,209,200
2.61% ↑
1964年 3,127,600
2.57% ↑
1963年 3,049,200
1.47% ↑
1962年 3,004,900
3.56% ↑
1961年 2,901,500 -

オーストリアはその豊かな自然環境と農業基盤を活かして、長年にわたり高品質な乳製品の供給源として知られています。牛乳生産量の推移を見ると、1961年の2,901,500トンから2022年には3,942,500トンに達し、約36%の増加が見られました。この長期的な増加は、農業技術の発展、乳業における効率的な管理手法、そして消費者の乳製品需要の増加に裏付けられるものと言えます。

1970年代から1980年代にかけては、緩やかな増加を記録しましたが、1988年を境に一度減少に転じました。この変化には、欧州連合(EU)の共通農業政策(CAP)の影響が考えられます。当時、生産調整政策(ミルククオータ制度)の導入により、生産に制約が加えられたため、生産量の増加が抑えられたと考えられます。その後、1995年のEU加盟以降も一時的な生産量の減少が見られましたが、2000年代以降に再び増加傾向が顕著になりました。

2010年代に入ると牛乳生産量はさらに勢いを増し、特に2015年以降の数値は、ミルククオータ制度廃止も相まって急増しました。この政策変更は、制限から解放された乳業者がフル稼働することを可能にしたため、生産量の拡大を後押ししたと解釈できます。しかし、こうした増加には地域の環境負荷や価格競争など、課題も表面化しています。

2022年、オーストリアの牛乳生産量は記録的なピークに達しましたが、2023年には減少に転じました。この減少には、エネルギー価格の高騰や世界的な輸送コストの上昇、新型コロナウイルス感染症による影響が考えられます。パンデミックにより供給チェーンが不安定になる中で、生産コストが増加し、農業従事者の収益に影響を与えた可能性があります。また、2023年の減少には、近年の気候変動の影響も無視できません。気温上昇や異常気象により、地域の農地条件や放牧場の環境が変化し、乳牛の飼育環境に影響したとされます。

オーストリアの牛乳生産はドイツやフランスなどの近隣諸国と比較すると規模が小さめで、国内市場向けの生産に比重が置かれています。一方で、対外輸出にも力を入れており、特に乳業製品の輸出は経済の一角を担っています。例えば、日本ではヨーロッパの乳製品の需要が高まっており、特に品質重視の市場ではオーストリア産製品が競争力を持っています。

今後の課題としては、環境負荷の軽減が大きな焦点になります。世界的な温室効果ガス削減の取り組みの中で、乳業の持続可能性や効率向上をどのように実現するかが重要です。また、競争激化する国際市場での地位を確保するには、付加価値の高いブランド戦略や品質強化が必要です。同時に、小規模農家の支援を強化し、経済的な安定を図ることも課題となります。

具体的な対策として、オーガニック生産の促進や精密農業技術の導入が挙げられます。これにより、環境への影響を軽減しながら生産効率を向上させることが期待されます。また、地域間での協力体制を構築し、情報共有や資源利用の効率化を図ることも効果的でしょう。

結論として、オーストリアの牛乳生産は一定の成長を遂げてきましたが、今後は持続可能な農業の実現が鍵を握ります。気候変動や国際競争に対応しつつ、消費者に信頼される高品質な乳製品を提供できる体制を強化することが求められます。そのためには、政府、企業、そして農業従事者が一体となり、持続可能性を基盤とした農業政策の推進が不可欠です。