国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによれば、オーストリアのエンドウ豆(生)の生産量は1960年代から現在に至るまで大きな変動を見せています。特に1980年代後半に生産量がピークを迎えた後、2000年代初頭には減少傾向が顕著となりましたが、2006年以降に一定の回復を見せています。直近の2023年では8,650トンと再び減少が見られますが、それでも過去最低水準と比べれば高い水準を保っています。
オーストリアのエンドウ豆(生)生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 8,650 |
-9.9% ↓
|
2022年 | 9,600 |
-2.14% ↓
|
2021年 | 9,810 |
0.1% ↑
|
2020年 | 9,800 |
0.1% ↑
|
2019年 | 9,790 | - |
2018年 | 9,790 |
-21.09% ↓
|
2017年 | 12,406 |
37.76% ↑
|
2016年 | 9,005 |
-5.53% ↓
|
2015年 | 9,532 |
-15.34% ↓
|
2014年 | 11,260 |
0.04% ↑
|
2013年 | 11,256 |
150.91% ↑
|
2012年 | 4,486 |
-64.12% ↓
|
2011年 | 12,503 |
32.07% ↑
|
2010年 | 9,467 |
-21.3% ↓
|
2009年 | 12,029 |
6.91% ↑
|
2008年 | 11,251 |
23.92% ↑
|
2007年 | 9,079 |
20.11% ↑
|
2006年 | 7,559 |
57.28% ↑
|
2005年 | 4,806 |
24.38% ↑
|
2004年 | 3,864 |
-4.4% ↓
|
2003年 | 4,042 |
-8.16% ↓
|
2002年 | 4,401 |
-13.93% ↓
|
2001年 | 5,113 |
-16.14% ↓
|
2000年 | 6,097 |
-21.36% ↓
|
1999年 | 7,753 |
-25.74% ↓
|
1998年 | 10,441 |
5.27% ↑
|
1997年 | 9,918 |
-13.83% ↓
|
1996年 | 11,510 |
-6.76% ↓
|
1995年 | 12,344 |
-6.04% ↓
|
1994年 | 13,138 |
0.39% ↑
|
1993年 | 13,087 |
-12.43% ↓
|
1992年 | 14,945 |
-1.55% ↓
|
1991年 | 15,181 |
6.08% ↑
|
1990年 | 14,311 |
-12.82% ↓
|
1989年 | 16,416 |
18.59% ↑
|
1988年 | 13,843 |
14.67% ↑
|
1987年 | 12,072 |
4.58% ↑
|
1986年 | 11,543 |
-3.05% ↓
|
1985年 | 11,906 |
-4.14% ↓
|
1984年 | 12,420 |
1.92% ↑
|
1983年 | 12,186 |
47.39% ↑
|
1982年 | 8,268 |
-11.49% ↓
|
1981年 | 9,341 |
-8.88% ↓
|
1980年 | 10,251 |
6.47% ↑
|
1979年 | 9,628 |
2.29% ↑
|
1978年 | 9,412 |
-5.82% ↓
|
1977年 | 9,994 |
0.54% ↑
|
1976年 | 9,940 |
19.14% ↑
|
1975年 | 8,343 |
16.87% ↑
|
1974年 | 7,139 |
0.35% ↑
|
1973年 | 7,114 |
-1.75% ↓
|
1972年 | 7,241 |
-8.39% ↓
|
1971年 | 7,904 |
-22.8% ↓
|
1970年 | 10,239 |
-1.56% ↓
|
1969年 | 10,401 |
9.83% ↑
|
1968年 | 9,470 |
17.22% ↑
|
1967年 | 8,079 |
-5.16% ↓
|
1966年 | 8,519 |
37.43% ↑
|
1965年 | 6,199 |
9.35% ↑
|
1964年 | 5,669 |
-8.15% ↓
|
1963年 | 6,172 |
38.2% ↑
|
1962年 | 4,466 |
-15.54% ↓
|
1961年 | 5,288 | - |
オーストリアのエンドウ豆(生)の生産量推移は、気候条件や農業政策、国際市場の需要などさまざまな要素による影響を強く受けてきました。データが取り始められた1960年代には、おおむね4,000トンから10,000トンの範囲で生産量が推移し、特に1966年以降は増加傾向が明確になりました。この時期の農業政策や技術革新が生産性向上に寄与したと考えられます。
1980年代に入ると生産量はさらに成長し、1989年には16,416トンという過去最高値を記録しました。このころ、特に欧州全域での余剰農産物問題が生じたこともあり、エンドウ豆の生産は十分な資源投入が可能な状況にあったと見られます。しかし、1990年代半ばからは減少が顕著となり、2000年には6,097トン、2004年には3,864トンと、過去最低水準にまで落ち込みました。
生産量の減少には主に2つの要因が挙げられます。1つは、欧州連合(EU)農業政策改革の影響です。生産支援の撤廃や輸出補助金削減が小規模農家を困難な状況に追い込む一方、競争力の高い国際市場の中で、エンドウ豆に対する需要が一時的に低迷しました。2つ目は、気候変動の影響です。近年、夏季の高温化や降水量の減少がオーストリアの農業に打撃を与えています。
その後、2006年以降には生産量が再び増加に転じましたが、2010年代後半からは年間生産量が1万トン前後で停滞する傾向が見られます。直近の2023年には8,650トンと再び減少し、これは気候変動に加えて農業従事者の高齢化や農業分野での労働力不足も一因と考えられます。
今後の課題としては、まずエンドウ豆生産の安定化が挙げられます。オーストリアはヨーロッパの中でも環境保全に力を入れている国であり、持続可能な農業の導入が求められています。具体的には、乾燥や高温に耐性を持つ品種の導入や、灌漑設備の強化、農業におけるITやAI技術の活用が解決策となり得ます。また、地域協力を通じた共同マーケティングや、エンドウ豆を使用した高付加価値商品の開発も重要となるでしょう。
さらに、地政学的背景からも注視が必要です。オーストリアはEU内で地理的に中央に位置しており、隣接諸国との農産物貿易の影響を大きく受けます。ウクライナ紛争や国際的な物流の混乱もエンドウ豆の生産と輸送に影響を及ぼす可能性があります。こうした地政学的リスクに対応するためには、国内自給率向上と輸出市場の多角化が必要です。
さらに、新型コロナウイルスのパンデミックが農業に与えた影響も見逃せません。ロックダウンやその他の行動制限は、農業関連の労働力供給に大きな影響を与えました。今後の感染症リスクを見越して、労働力の確保や生産現場の自動化がさらなる重点課題となるでしょう。
最終的に、オーストリアがエンドウ豆生産を持続可能かつ安定的に発展させるためには、国内政策と地域協力の両面からアプローチする必要があります。気候変動に対応する農業技術の向上、サプライチェーンの安定化、そして市場構造の多様化を推進することで、オーストリアの農業はさらなる持続可能な発展を遂げることが期待されます。