国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新の2024年更新データによると、オーストリアのジャガイモ生産量は、1961年の約339万トンをピークに長期的に減少傾向にあります。ただし、近年は70万~80万トン付近での安定した推移が見られます。特に2020年には88万トン超と一時的に上昇しましたが、その後再び70万トン台に戻っています。これには政策や消費動向、気候変動が関与していると考えられます。
オーストリアのジャガイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 686,220 |
2021年 | 769,690 |
2020年 | 885,890 |
2019年 | 751,260 |
2018年 | 697,930 |
2017年 | 653,400 |
2016年 | 767,261 |
2015年 | 536,473 |
2014年 | 750,637 |
2013年 | 604,051 |
2012年 | 665,416 |
2011年 | 816,070 |
2010年 | 671,722 |
2009年 | 722,098 |
2008年 | 756,945 |
2007年 | 668,755 |
2006年 | 654,621 |
2005年 | 763,165 |
2004年 | 693,054 |
2003年 | 560,340 |
2002年 | 684,321 |
2001年 | 694,602 |
2000年 | 694,609 |
1999年 | 711,729 |
1998年 | 646,915 |
1997年 | 676,872 |
1996年 | 768,974 |
1995年 | 724,426 |
1994年 | 593,720 |
1993年 | 885,833 |
1992年 | 738,256 |
1991年 | 789,979 |
1990年 | 793,537 |
1989年 | 845,466 |
1988年 | 1,001,044 |
1987年 | 879,497 |
1986年 | 982,405 |
1985年 | 1,042,196 |
1984年 | 1,138,097 |
1983年 | 1,011,511 |
1982年 | 1,120,676 |
1981年 | 1,309,779 |
1980年 | 1,263,922 |
1979年 | 1,493,706 |
1978年 | 1,400,892 |
1977年 | 1,352,246 |
1976年 | 1,746,023 |
1975年 | 1,578,687 |
1974年 | 1,996,305 |
1973年 | 2,116,526 |
1972年 | 2,341,420 |
1971年 | 2,716,519 |
1970年 | 2,703,894 |
1969年 | 2,940,545 |
1968年 | 3,473,076 |
1967年 | 3,048,976 |
1966年 | 3,007,318 |
1965年 | 2,539,433 |
1964年 | 3,438,204 |
1963年 | 3,498,695 |
1962年 | 3,213,739 |
1961年 | 3,394,825 |
オーストリアのジャガイモ生産量推移に着目すると、1960年代初期は年間300万トン以上という記録的な生産量が続いていましたが、1970年代中盤以降、生産量は急減し、2020年代になると700,000トン前後での安定を見せています。この変化は、オーストリア国内の農業の構造変化、食習慣の変化、そして市場経済や国際的な貿易環境の影響を受けたものです。
特に1960年代は農業が国の主要産業の一つであり、ジャガイモが食用および畜産飼料として重宝されていました。しかしながら、その後の産業化や都市化に伴い、農地が都市部の拡大で縮小し、同時に農業人口も減少しました。さらに、豊かな選択肢が広がる中で国民の食生活も変わり、炭水化物中心の食事から多様化が進み、ジャガイモの需要が減退しました。
気候変動もまた重要な要因です。ジャガイモは冷涼で適度な湿度が必要な作物ですが、オーストリアを含むヨーロッパ全体で近年記録的な干ばつや気温上昇が見られました。これらの条件は農産物全般の収穫量に影響を与え、特に水分を必要とするジャガイモ生産には不利な状況を生み出しました。例えば、2003年や2015年の生産量が大きく減少した背景には、異常気象が大きく関与していると考えられます。
一方で、2020年には一時的な生産量の回復が見られました。この上昇の背景には複合的な要因がありますが、主に気象条件の改善とCOVID-19パンデミックの影響が挙げられます。パンデミック中にはサプライチェーンの変化により国内需要が高まり、それが一時的な生産の増加を促した可能性もあります。
今後の課題としては、持続可能な農業の実践が挙げられます。農地の管理や気候適応技術の導入により、生産性を向上しつつ環境負荷を軽減する方法が求められます。例えば、雨水の利用効率を高める灌漑(かんがい)技術や、耐乾性の高い品種の開発と導入が、有効な対策として期待されます。また、EU内での農業政策に基づいた補助金の適切な活用や、地域間の協力を推進することで、農家が安心して持続可能なジャガイモ栽培を行える環境を整備することが重要です。
さらに、オーストリア国内での需要も見直す必要があります。地産地消の推進や農産物の付加価値を高めるマーケティングが、農業全体の活性化につながるかもしれません。たとえば、近年の健康志向の高まりに合わせてオーガニックジャガイモや環境に優しい生産方法をアピールすることも有望な戦略となり得ます。
加えて、地政学的リスクに目を向けると、ウクライナにおける紛争などが小麦などの主要な農産物の供給に影響を与える中、ジャガイモが自給自足を支える要素の一つとして再評価される可能性もあります。そのため、国内農業を守るための政策整備に加え、インフラ面での投資が欠かせないでしょう。
結論として、過去数十年間にわたる生産量の減少は経済、社会、環境の複合的な要因によるものでしたが、今後は持続可能性を重視した政策に基づき、環境適応型の農業技術や新しい市場戦略を活用することで、オーストリアのジャガイモ生産が再び安定を取り戻す可能性があります。国や国際機関の貢献も必要となる中、農家や地域コミュニティーが主体となって未来へ向けた取り組みを進めることが求められます。