Skip to main content

オーストリアのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した2024年最新データによると、オーストリアのブドウ生産量は長期的視点で見ると一貫した上昇や下降の傾向は見られないものの、大きな年間変動を特徴としています。特に1982年の生産量が700,000トンと突出しており、その後は徐々に減少を経て安定的な水準に落ち着いています。近年では2023年に310,760トンと、過去60年以上の平均値を下回る水準にあります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 310,760
-7.78% ↓
2022年 336,990
2.73% ↑
2021年 328,040
2.58% ↑
2020年 319,790
3.18% ↑
2019年 309,920
-15.58% ↓
2018年 367,130
10.77% ↑
2017年 331,428
27.31% ↑
2016年 260,337
-13.92% ↓
2015年 302,454
13.49% ↑
2014年 266,491
-16.44% ↓
2013年 318,926
11.01% ↑
2012年 287,301
-23.45% ↓
2011年 375,301
62.01% ↑
2010年 231,660
-26.12% ↓
2009年 313,583
-21.44% ↓
2008年 399,163
13.92% ↑
2007年 350,403
16.47% ↑
2006年 300,840
-0.34% ↓
2005年 301,869
-17.21% ↓
2004年 364,608
8.09% ↑
2003年 337,313
-2.68% ↓
2002年 346,598
2.72% ↑
2001年 337,410
8.22% ↑
2000年 311,788
-16.59% ↓
1999年 373,784
3.71% ↑
1998年 360,423
50.03% ↑
1997年 240,233
-14.62% ↓
1996年 281,378
-5.32% ↓
1995年 297,196
-15.78% ↓
1994年 352,885
41.87% ↑
1993年 248,731
-27.92% ↓
1992年 345,095
-16.33% ↓
1991年 412,435
0.2% ↑
1990年 411,600
18.14% ↑
1989年 348,400
-26.31% ↓
1988年 472,800
52.52% ↑
1987年 310,000
-3.13% ↓
1986年 320,000
88.24% ↑
1985年 170,000
-52.78% ↓
1984年 360,000
-31.82% ↓
1983年 528,000
-24.57% ↓
1982年 700,000
100% ↑
1981年 350,000
-20.27% ↓
1980年 439,000
11.14% ↑
1979年 395,000
-17.54% ↓
1978年 479,000
29.69% ↑
1977年 369,348
-10.58% ↓
1976年 413,048
7.3% ↑
1975年 384,943
62.62% ↑
1974年 236,719
-30.77% ↓
1973年 341,912
-7.34% ↓
1972年 369,000
47.6% ↑
1971年 250,000
-43.18% ↓
1970年 439,950
36.67% ↑
1969年 321,900
-8.55% ↓
1968年 352,008
-4.48% ↓
1967年 368,502
78.44% ↑
1966年 206,510
4.77% ↑
1965年 197,107
-51.14% ↓
1964年 403,404
72.39% ↑
1963年 234,000
81.4% ↑
1962年 129,000
-24.56% ↓
1961年 171,000 -

オーストリアのブドウ生産量は歴史的に変動が大きく、特に幾度か異常とも言える高生産年を経て推移してきました。1970年代から1980年代初頭にかけては、生産量が300,000~400,000トンを安定的に保ちながらも、1982年には700,000トンという驚異的な記録を達成しています。この年は、気候条件が非常にブドウ生産に適していたことと、農業技術の進展が重なった結果とされています。しかし、それ以降、特に1985年、1986年にかけてのワイン不正事件の影響で輸出が激減したことが生産量減少の一因となり、産業全体の信頼回復のため、国内生産が控えられた歴史があります。

1990年代以降のデータを見ると、生産量はほぼ300,000トン台から400,000トン程度で推移しており、これはオーストリアのブドウ栽培が外的要因にやや脆弱であることを浮き彫りにしています。特に気候変動の影響は顕著であり、冷害や猛暑の年には収穫量が目立って減少しています。例えば、2010年や2014年の低生産量は、当時の寒冷および湿潤な気候条件の影響を受けたものとされています。

以上の状況を考えると、オーストリアのブドウ生産の課題としては、第一に気候変動への適応が挙げられます。特に近年、猛暑や予測困難な天候条件が多発しており、耐気候性に優れたブドウ品種の導入を含む技術的な対策が急務です。第二に、生産の安定化を図るために、国内外のマーケットの多角化が重要となります。各年の収穫量の変動に柔軟に対応するための損害保険制度の整備や、エコロジカルかつ持続可能な農法のさらなる導入も必要です。

また、地政学的な観点から見ても、オーストリアのワイン産業は隣国ドイツやフランスと競争関係にあるため、高付加価値商品としての差別化が欠かせません。これには、オーストリア独自の地理的表示保護(PDO)の推進や、オーガニックワイン市場への進出が含まれます。このような措置により、単なる数量の増加だけではなく、品質面でも競争力を引き上げることができます。

さらに、近年多発するコロナ禍やロシア・ウクライナ問題などの地域衝突の影響により、輸出市場へのアクセスが妨げられる状況も無視できません。これらの非典型的要因に対しては、リスク分散の観点から、EU内における安定的な流通網の構築や、アジア市場を含めた新規市場の開拓が重要になってきます。

今後、国際機関や政府が担うべき役割としては、農業従事者への補助金政策、研究開発投資、国際マーケティング支援が挙げられます。また、畑地の灌漑インフラ強化や土壌管理の改善、さらにはスマート農業技術の導入が推進されるべきです。以上の取り組みにより、オーストリアのブドウ産業が安定した持続可能な成長を遂げることが期待されます。