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オーストリアのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、オーストリアにおけるヤギ飼養頭数は、1961年に161,813頭だったものが1980年代に約30,000頭台まで減少しました。しかしその後、1990年代以降、再び増加傾向がみられ、2021年には100,600頭に達しました。特に2010年代後半から急速な増加が見られ、2022年は99,020頭と、引き続き高水準を記録しました。このデータは、経済、農業政策、また消費者の需要変化を反映したものと考えられます。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 96,940
-2.1% ↓
2022年 99,020
-1.57% ↓
2021年 100,600
8.45% ↑
2020年 92,760
0.28% ↑
2019年 92,500
1.05% ↑
2018年 91,540
10.64% ↑
2017年 82,735
7.98% ↑
2016年 76,620
8.37% ↑
2015年 70,705
-1.89% ↓
2014年 72,068
-1.56% ↓
2013年 73,212
1.18% ↑
2012年 72,358
0.82% ↑
2011年 71,768
5.25% ↑
2010年 68,188
9.12% ↑
2009年 62,490
3.31% ↑
2008年 60,487
13.89% ↑
2007年 53,108
-3.62% ↓
2006年 55,100
-0.76% ↓
2005年 55,523
1.68% ↑
2004年 54,607
-5.59% ↓
2003年 57,842
-2.71% ↓
2002年 59,452
5.97% ↑
2001年 56,105
-3.26% ↓
2000年 57,993
6.91% ↑
1999年 54,244
-7.02% ↓
1998年 58,340
7.1% ↑
1997年 54,471
0.45% ↑
1996年 54,228
9% ↑
1995年 49,749
5.23% ↑
1994年 47,276
20.13% ↑
1993年 39,354
-3.83% ↓
1992年 40,923
9.59% ↑
1991年 37,343
2.48% ↑
1990年 36,440
12.68% ↑
1989年 32,338
-3.57% ↓
1988年 33,534
9.25% ↑
1987年 30,694
-5.83% ↓
1986年 32,595
8.85% ↑
1985年 29,945
-6.43% ↓
1984年 32,002
1.28% ↑
1983年 31,596
-2.88% ↓
1982年 32,534
0.33% ↑
1981年 32,428
-7.15% ↓
1980年 34,926
-4.03% ↓
1979年 36,392
-2.25% ↓
1978年 37,231
-7.61% ↓
1977年 40,299
-6.57% ↓
1976年 43,135
-5.38% ↓
1975年 45,590
-6.08% ↓
1974年 48,543
-4.32% ↓
1973年 50,734
-10% ↓
1972年 56,370
-9.46% ↓
1971年 62,263
-10.28% ↓
1970年 69,399
-9.76% ↓
1969年 76,906
-12.49% ↓
1968年 87,883
-6.44% ↓
1967年 93,936
-3.98% ↓
1966年 97,831
-11.48% ↓
1965年 110,516
-8.02% ↓
1964年 120,148
-9.22% ↓
1963年 132,347
-11.35% ↓
1962年 149,296
-7.74% ↓
1961年 161,813 -

オーストリアの長期的なヤギ飼養頭数推移を見ると、1961年から1980年代まで急激な減少が続いた後、1990年代に入ってから徐々に回復し始めたことが分かります。初期の減少は、農業の機械化や、農畜産業を取り巻く社会的・経済的な構造変化の影響を受けた結果と考えられます。同様の現象は他のヨーロッパ諸国でも観察されており、例えばフランスやドイツでも、効率性を追求する中で伝統的な牧畜手法の縮小が見られました。

1990年代以降、特に2000年以降の回復は、ヤギ乳製品(特にチーズなど)の人気が高まったことや、健康志向や持続可能な農業に注目が集まったことが大きな要因と考えられます。この時期には、オーガニック食品市場の拡大や地元農産品の消費推進が進み、ヤギ乳製品の需要が増加しました。また、ヤギは大型家畜と比べて飼育効率が高く、小規模農家にとって適した家畜であることから、多様な経営形態の中で再び注目を集めるようになりました。

2010年代後半以降の急速な増加の背景には、オーストリア政府による農業支援政策の影響があると考えられます。持続可能な農業活動を奨励するための補助金プログラムや、動物福祉への新たな取り組みがヤギの飼養を後押ししているのではないでしょうか。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、地元産食品への関心がさらに高まったことも、この増加に寄与している可能性があります。

しかしながら、今後の課題にも注目する必要があります。一つは、飼料作物の持続可能な供給です。農業に伴う環境負荷を軽減しつつ、生産性を維持するためには、餌料作物の生産効率向上や代替餌料の導入が不可欠です。また、気候変動も今後のヤギ飼育に影響を与える要因となり得ます。オーストリアを含むヨーロッパ全体での高温化や降水パターンの変化による牧草地への影響が懸念されます。

さらに、他国との比較を通じて考察を深めると、アメリカや中国、インドなどヤギの飼養が伝統的に広く行われている国々においても、農業技術の進展や家畜の経済的価値の向上がヤギ飼育の増加を促していることが示されています。オーストリアにとって重要なのは、これらのグローバルな動きを踏まえつつ、地域特有の需要を取り込む戦略を維持することです。

将来的な対応策として、持続可能性に配慮した農業技術の導入、小規模な畜産農家への支援強化、そして環境規制との連携強化が挙げられます。また、国際的な協力体制を築くことで、オーストリアのヤギ飼育のノウハウが他国でも活用され、グローバルな農業課題への対応の一環となる可能性があります。

結論として、オーストリアのヤギ飼養頭数の増減は、多くの経済的要因や社会的背景によって左右されてきましたが、近年の増加は将来に向けたポジティブな兆候と言えるでしょう。一方で、環境・気候問題や持続性の課題は無視できないため、政府や国際機関、農業団体が連携し、新たな戦略を講じていくことが求められます。このような取り組みを通じて、オーストリアは農業と環境保護のバランスを模索しつつ、世界のモデルケースとしての役割を果たしていけるのではないでしょうか。