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オーストリアのオート麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、オーストリアにおけるオート麦の生産量は1960年代の30万トン台から徐々に減少を見せ、2023年には60,380トンにまで縮小しました。この生産量の低下は長期的な農業の構造的変化や気候条件の影響を強く受けていることがうかがえます。特に2020年代に入ってからの減少傾向が顕著であり、2023年の数値は最低値を記録しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 60,380
-29.13% ↓
2022年 85,200
-4.74% ↓
2021年 89,440
6.51% ↑
2020年 83,970
8.56% ↑
2019年 77,350
4.13% ↑
2018年 74,280
-3.12% ↓
2017年 76,672
-19.15% ↓
2016年 94,829
-1.48% ↓
2015年 96,255
-9.11% ↓
2014年 105,907
21.82% ↑
2013年 86,936
-7.01% ↓
2012年 93,491
-14.86% ↓
2011年 109,807
12.18% ↑
2010年 97,889
-10.53% ↓
2009年 109,411
1.26% ↑
2008年 108,054
9.2% ↑
2007年 98,948
-24.57% ↓
2006年 131,176
2.14% ↑
2005年 128,432
-7.49% ↓
2004年 138,831
8.01% ↑
2003年 128,533
9.91% ↑
2002年 116,943
-8.82% ↓
2001年 128,253
9.09% ↑
2000年 117,571
-22.84% ↓
1999年 152,381
-7.2% ↓
1998年 164,204
-16.51% ↓
1997年 196,684
28.8% ↑
1996年 152,705
-5.53% ↓
1995年 161,645
-5.86% ↓
1994年 171,716
-10.05% ↓
1993年 190,896
3.16% ↑
1992年 185,053
-17.94% ↓
1991年 225,510
-7.62% ↓
1990年 244,117
-1.99% ↓
1989年 249,063
-8.79% ↓
1988年 273,067
11.13% ↑
1987年 245,728
-8.96% ↓
1986年 269,919
-4.92% ↓
1985年 283,893
-2.78% ↓
1984年 292,024
-0.07% ↓
1983年 292,232
-10.04% ↓
1982年 324,831
6.89% ↑
1981年 303,898
-3.8% ↓
1980年 315,896
15.83% ↑
1979年 272,732
-10.37% ↓
1978年 304,273
8.98% ↑
1977年 279,189
-1.25% ↓
1976年 282,725
-7.6% ↓
1975年 305,987
5.48% ↑
1974年 290,093
2.25% ↑
1973年 283,697
11.15% ↑
1972年 255,248
-9.99% ↓
1971年 283,592
4.15% ↑
1970年 272,280
-5.58% ↓
1969年 288,363
-11.02% ↓
1968年 324,063
-3.46% ↓
1967年 335,691
3.24% ↑
1966年 325,169
18.63% ↑
1965年 274,111
-16.13% ↓
1964年 326,832
-4.34% ↓
1963年 341,668
2.86% ↑
1962年 332,159
-0.87% ↓
1961年 335,090 -

オーストリアのオート麦生産は、1960年代には30万トンを超える規模で安定していましたが、1970年代以降、大きな変動が見られました。これは農業技術や品目選択の変化、またエネルギー価格上昇など複数の地政学的要因が影響していると考えられます。特に1990年代以降は急激な減少を見せ、過去の数値と比較しても2023年の60,380トンという生産量は極端に小さい結果です。この生産減少には、気候変動、土地利用方法の変化、農業政策の影響などの複数の要因が絡んでいると指摘されています。

農業における気候変動の影響は避けられない問題であり、オーストリアでもここ数十年で気温上昇、降水量変動、干ばつなどが増加しました。これにより、オート麦のような穀物は収量が大幅に低下しています。またEU内の農業市場の競争激化により、農家は高収益の作物や家畜飼料用に注力するようになり、オート麦は次第に主流から外れつつあります。このような市場の圧力も生産削減の一因となっています。

さらに国内農業政策の変化も重なり、より持続可能な農業形態やエコロジカル農業への移行が進む中で、オート麦生産は主要な焦点から外れているのが現状です。他方で、オート麦は食品業界や健康関連商品に需要があり、特に栄養価の高い「スーパーフード」としてヨーロッパ全体でその価値が再認識されています。この需要と供給のギャップが将来的な課題として浮上しています。

オーストリアのオート麦生産は、他の主要国と比較しても衰退が目立ちます。たとえば、オート麦の大規模生産国であるロシア、カナダ、フィンランドなどではここ数年、全体的に40万トン以上の生産が続いています。日本では生産がほぼ皆無であり全量輸入に頼っていますが、健康意識の高まりから需要が増加傾向です。このような中で、オーストリアが国内で持続可能な形で生産量を増やすための戦略を立てることは、輸出市場での競争力強化にも寄与すると考えられます。

将来に向けてオート麦生産の持続可能性を高めるには、気候変動に対応した品種改良や、農地の効率的利用の促進が重要です。また、政府と農業支援団体による補助金や技術指導を通じて、生産規模を回復させるためのインセンティブも検討する必要があります。さらに、生産規模が限られる場合でも、高価値商品としてのブランド化や有機農業市場にターゲットを定める戦略も有効でしょう。

結論として、オーストリアのオート麦生産量の減少は、気候、政策、市場競争といった複合的課題によるものです。しかし、持続可能な方法で生産を維持・拡大するための具体的な対策を講じることで、地元農業におけるオート麦の地位を取り戻す余地は十分にあります。これらの課題に対処するため、今後は国際的な知見を利用しつつ、オーストリア独自の強みを活かした政策実行が求められます。