国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に発表した最新データによると、オーストリアのラズベリー生産量は長期的に波動を伴いながら推移しており、特に2010年代以降、生産量が低迷している傾向が見られます。2023年の生産量は610トンと、過去20年の中で最低水準の一つに位置しています。一方で、生産量のピークは2007年の1,321トンでしたが、その後のリズムは全体的にばらつきが大きい状況です。この傾向は気候変動や農業技術、需要の変化に影響されている可能性があります。
オーストリアのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 610 |
-12.86% ↓
|
2022年 | 700 | - |
2021年 | 700 |
2.94% ↑
|
2020年 | 680 | - |
2019年 | 680 |
4.62% ↑
|
2018年 | 650 |
-41.02% ↓
|
2017年 | 1,102 |
71.17% ↑
|
2016年 | 644 |
-22.32% ↓
|
2015年 | 829 |
-12.58% ↓
|
2014年 | 948 |
5.81% ↑
|
2013年 | 896 |
9.18% ↑
|
2012年 | 821 |
-32.12% ↓
|
2011年 | 1,209 |
3.51% ↑
|
2010年 | 1,168 |
5.04% ↑
|
2009年 | 1,112 |
-2.37% ↓
|
2008年 | 1,139 |
-13.78% ↓
|
2007年 | 1,321 |
45.16% ↑
|
2006年 | 910 |
-25.69% ↓
|
2005年 | 1,225 |
6.82% ↑
|
2004年 | 1,146 |
-3.77% ↓
|
2003年 | 1,191 |
2.11% ↑
|
2002年 | 1,167 | - |
オーストリアのラズベリー生産量は2002年以降、断続的な増減を見せながら推移してきており、現在の状況は農業従事者や政策立案者にとって警戒が必要な状態です。2007年にピークの1,321トンを記録した後、生産量は再び減少し、特に2012年以降に一段と低下しています。例えば2016年には644トン、さらに2023年には610トンにまで落ち込んでいます。このような傾向の主な要因としては、異常気象や農業従事者の高齢化、競争力の低下が挙げられます。
特に気候変動の影響は無視できません。ラズベリーは冷涼で湿度の適度な環境を好む作物ですが、オーストリアでは近年、夏季の高温や降水量の変動が顕著です。この結果、開花時期や収穫量が大きく影響を受けたと考えられます。また、生産減少により市場での供給が不足し、消費者価格の高騰が進む可能性もあります。
オーストリアにおけるラズベリー生産量の変動は他国とも比較が可能です。例えば、ドイツでは同様に気候変動による影響が見られる一方で、農業技術の導入に力を入れた結果、近年の生産量が著しく安定しています。またアメリカや中国では気候に適応した品種改良が進められており、収穫量増加の傾向が顕著です。オーストリアもこれらの成功事例を参考にすることが重要と言えます。
2022年および2023年の生産量が700トンおよび610トンと低調に推移していることを鑑みると、重要なのは長期的な持続可能性を確保するための具体的な対策です。たとえば、気候変動に適応可能なラズベリーの新しい品種の研究開発や、小規模農家への技術支援が挙げられます。さらに、EU内の近隣諸国と連携し、市場での価格競争を緩和するための輸出プログラムの調整や、地域ブランド化を推進することも価値があります。日本では地域ブランディングが特定の作物の付加価値を高めている成功例があり、オーストリアもこのような戦略を採用することで地位を強化する余地があるでしょう。
一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により、労働力の不足や物流の問題が一時的に悪化したことも生産量の減少に寄与した可能性があります。この問題に対処するためには、農業においてさらなる自動化技術の導入や、移民労働者を積極的に受け入れる移民政策の見直しが求められるでしょう。
結論として、オーストリアのラズベリー生産量は、現在のままでは年々低下を続ける危険性があります。しかし、新しい技術や国際協力、政策の改善によってこれを回避することは可能です。国や国際機関が将来的に農家を支援する新しいプログラムを策定し、持続可能な生産を実現するための取り組みを進めることが急務と言えます。これにより、国内外の需要に対応するだけでなく、オーストリア産ラズベリーの付加価値を高めることにもつながるでしょう。