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オーストリアの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関が発表した最新データによれば、オーストリアにおける牛の飼養数は1960年代から今日まで減少傾向を示しています。1960年代には240万頭を超えていましたが、その後は徐々に減少し、2022年には約186万頭となりました。特に1990年以降に顕著な減少が見られる一方で、近年では減少幅がやや緩やかになっていることが特徴です。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 1,835,470
-1.38% ↓
2022年 1,861,070
-0.48% ↓
2021年 1,870,100
0.79% ↑
2020年 1,855,430
-1.28% ↓
2019年 1,879,520
-1.74% ↓
2018年 1,912,810
-2.13% ↓
2017年 1,954,391
-0.16% ↓
2016年 1,957,610
-0.18% ↓
2015年 1,961,201
0.15% ↑
2014年 1,958,282
0.14% ↑
2013年 1,955,618
-1.06% ↓
2012年 1,976,527
-1.83% ↓
2011年 2,013,281
-0.64% ↓
2010年 2,026,260
1.45% ↑
2009年 1,997,209
-0.15% ↓
2008年 2,000,196
-0.14% ↓
2007年 2,002,919
-0.39% ↓
2006年 2,010,680
-1.97% ↓
2005年 2,050,991
-0.05% ↓
2004年 2,052,033
-0.72% ↓
2003年 2,066,942
-2.43% ↓
2002年 2,118,454
-1.72% ↓
2001年 2,155,447
0.12% ↑
2000年 2,152,811
-0.87% ↓
1999年 2,171,681
-1.19% ↓
1998年 2,197,940
-3.26% ↓
1997年 2,271,949
-2.32% ↓
1996年 2,325,825
-0.12% ↓
1995年 2,328,518
-0.23% ↓
1994年 2,333,887
-2.78% ↓
1993年 2,400,725
-5.26% ↓
1992年 2,534,008
-1.93% ↓
1991年 2,583,914
0.84% ↑
1990年 2,562,393
0.83% ↑
1989年 2,541,405
-1.86% ↓
1988年 2,589,509
-1.81% ↓
1987年 2,637,224
-0.5% ↓
1986年 2,650,574
-0.69% ↓
1985年 2,669,062
1.36% ↑
1984年 2,633,326
3.42% ↑
1983年 2,546,280
0.63% ↑
1982年 2,530,232
0.53% ↑
1981年 2,516,872
-1.22% ↓
1980年 2,547,905
-1.76% ↓
1979年 2,593,606
1.76% ↑
1978年 2,548,678
1.85% ↑
1977年 2,502,422
0.08% ↑
1976年 2,500,491
-3.13% ↓
1975年 2,581,407
-1.63% ↓
1974年 2,624,196
4.4% ↑
1973年 2,513,563
0.58% ↑
1972年 2,498,971
1.24% ↑
1971年 2,468,266
2.08% ↑
1970年 2,417,930
-0.63% ↓
1969年 2,433,168
-1.89% ↓
1968年 2,479,997
-0.68% ↓
1967年 2,496,912
2.27% ↑
1966年 2,441,388
3.88% ↑
1965年 2,350,269
1.71% ↑
1964年 2,310,667
-5.19% ↓
1963年 2,437,123
-0.79% ↓
1962年 2,456,557
2.92% ↑
1961年 2,386,761 -

オーストリアにおける牛の飼養数は、過去数十年にわたる長期的な流れの中で傾向が変化してきました。1960年代にはおおよそ240万頭を維持し、1970年代から1980年代にかけては飼養数が260万頭を超える時期もありました。しかし1990年を境に全般的な減少傾向が始まり、2022年には186万頭にまで落ち込んでいます。この動きは、同国の農業政策や国際的な経済状況、そして需要と供給の変化が影響を及ぼしていると考えられます。

このような減少の背景には、いくつかの要因が挙げられます。一つは、農業の効率化と機械化の進展です。これにより、小規模な牧場が廃業に追い込まれ、大規模で効率的な農業経営が主流となりました。また、EU加盟以降に適用される共通農業政策(CAP)や規制も、畜産業の構造転換に影響を与えたと言えます。特に環境保護の観点から、温室効果ガスの削減が求められる中、畜産頭数を制限する努力が進められています。

また、肉牛よりも酪農の比重が高いオーストリアでは、乳製品の国内需要や輸出市場も飼養数に影響を与えています。1990年代後半の急激な減少は乳製品の国際価格の低迷や市場の競争激化に対応した結果とも分析できます。他の要因として、近年の健康志向の高まりや植物性食材の需要増加が挙げられるでしょう。これに伴い、肉や乳製品の消費量が減少し、畜産業全体の見直しが進みました。

将来的には、持続可能な畜産業の構築が大きな課題となります。現代の畜産は、食料安全保障や経済の継続性だけでなく、環境保全や動物福祉の観点も考慮する必要があります。具体的には、草地による放牧の推進や地域循環型農業の強化、環境に負荷をかけにくい畜産技術の導入などが効果的な手段となるでしょう。さらに、国際市場において競争力を高めるためには、有機農業やプレミアム乳製品などの価値創造が鍵となると考えられます。

他国と比較してみると、同じく酪農が主要産業の一つであるドイツやフランスも同様の課題に直面しています。ドイツは革新的な畜産技術の導入に積極的であり、フランスは有機畜産へのシフトを加速させています。これらの取り組みは、オーストリアにおける模範になり得るでしょう。また、アジア諸国においても健康食品ブームを背景として乳製品の需要が増加しており、輸出市場としての機会を模索することが重要です。

最後に、パンデミックによる影響についても触れざるを得ません。新型コロナウイルスの蔓延で国際貿易が一時停滞し、牛乳や乳製品の需要が変動しました。これにより、多くの農家が生産計画を見直す必要に迫られましたが、現在はある程度安定を取り戻しているようです。このようなリスクに対応するためにも、災害や疫病時の安全保障体制を構築することが、政策として求められます。

結論として、オーストリアにおける牛の飼養数減少は、国内外での経済や環境の変化に直結しています。今後は、これらの課題に対応するため、環境に配慮した牛飼育技術の発展や、地域コミュニティを基盤とした農業の振興が必要です。また、国際的な協力や市場戦略を強化することで、持続可能な畜産業の確立を目指すべきでしょう。