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オーストリアのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

FAO(Food and Agriculture Organization)が発表した2024年最新データによると、オーストリアのさくらんぼ生産量は、1961年の36,029トンをピークとして長期的に減少しており、2023年には4,480トンにまで落ち込んでいます。1970年代から1990年代初頭までは年間2万トンから3万トン台で推移していましたが、2010年以降は1万トンを大きく下回る年が続いています。この長期的な減少傾向には気候変動、農業経済構造の変化、そして自然災害の影響があると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,480
-41.05% ↓
2022年 7,600
22.38% ↑
2021年 6,210
-6.05% ↓
2020年 6,610
-11.98% ↓
2019年 7,510
-31.35% ↓
2018年 10,940
97.19% ↑
2017年 5,548
57.03% ↑
2016年 3,533
-47.52% ↓
2015年 6,732
-8.99% ↓
2014年 7,397
-5.78% ↓
2013年 7,851
56.14% ↑
2012年 5,028
-45.65% ↓
2011年 9,252
81.31% ↑
2010年 5,103
-83.15% ↓
2009年 30,276
13.01% ↑
2008年 26,790
-20.95% ↓
2007年 33,890
24.4% ↑
2006年 27,243
5.15% ↑
2005年 25,909
-4.92% ↓
2004年 27,250
-7.26% ↓
2003年 29,384
35.18% ↑
2002年 21,736
-32.22% ↓
2001年 32,069
6.85% ↑
2000年 30,012
20.3% ↑
1999年 24,947
-18.68% ↓
1998年 30,679
43.84% ↑
1997年 21,329
-1.14% ↓
1996年 21,574
-24.78% ↓
1995年 28,683
18.1% ↑
1994年 24,288
-16.14% ↓
1993年 28,964
11.73% ↑
1992年 25,924
19.89% ↑
1991年 21,623
6.85% ↑
1990年 20,236
-24.3% ↓
1989年 26,731
54.44% ↑
1988年 17,308
-15.92% ↓
1987年 20,584
-16.75% ↓
1986年 24,725
8.36% ↑
1985年 22,818
-7.17% ↓
1984年 24,580
-7.94% ↓
1983年 26,701
7.51% ↑
1982年 24,835
90.63% ↑
1981年 13,028
-44.56% ↓
1980年 23,500
0.13% ↑
1979年 23,470
6.45% ↑
1978年 22,048
41.87% ↑
1977年 15,541
-25.25% ↓
1976年 20,792
-11.86% ↓
1975年 23,590
-5.19% ↓
1974年 24,882
-12.88% ↓
1973年 28,562
64.75% ↑
1972年 17,337
-29.27% ↓
1971年 24,513
-2.47% ↓
1970年 25,135
-2.23% ↓
1969年 25,709
-11.04% ↓
1968年 28,900
34.93% ↑
1967年 21,418
-5.67% ↓
1966年 22,706
15.62% ↑
1965年 19,638
-36.26% ↓
1964年 30,808
-1.02% ↓
1963年 31,126
1.32% ↑
1962年 30,722
-14.73% ↓
1961年 36,029 -

オーストリアがかつてさくらんぼの生産で安定した収穫量を記録していた時期を考えると、1961年から1990年代初頭の約30年間は、2万トンから3万トン台を維持していました。この時期の安定生産の背景には、農業生産性の向上や、比較的安定した気候条件があったと推測されます。しかし、1990年代からの急激な減少傾向や、特に2010年以降の顕著な減少は、いくつかの要因が重なっていると考えられます。

まず、気候変動が重要な要素であることは間違いありません。オーストリアは山岳地帯に位置する国であり、地球温暖化による異常気象や、急激な気温変動は果実栽培に深刻な影響を与えます。さくらんぼの開花時期に霜が発生したり、夏の高温が果実の品質を損なったりすることが増えたことが、栽培面積と収穫量の減少につながっている可能性があります。

また、ヨーロッパ全体で進む農業経済の構造的変化も重要な観点です。農業従事者の高齢化や、若者離れが進むことで、さくらんぼを含む果樹栽培の維持が難しくなってきています。さらに、他国、例えばトルコやスペインといった、気候条件が比較的安定し、労働コストも低い国々からの輸入競争も、オーストリア国内のさくらんぼ生産者にとって圧力となっています。

また、2023年の4,480トンという生産量は特に低く、自然災害がその背景にある可能性があります。具体的な記録が揃っていないため詳細は不明ですが、豪雨や干ばつ、病害虫の多発が影響した可能性が高いです。特に2020年以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う社会的・経済的変化が、果樹栽培を含む農業運営の機能を制限する要因にもなっていると考えられます。

将来に向けた課題としては、まず気候変動に対応するための生産方法の改革が挙げられます。例えば、耐寒性や耐暑性を持つ新品種の導入や、防霜ファンといった技術設備の普及が有効です。また、農業従事者の不足を補うために、移民政策の整備や農業機械化の促進も検討すべきです。さらに、EU内での競争力を高めるためには、オーストリア独自のブランドを確立させ、地元の需要を牽引するとともに、周辺諸国との協力体制の強化が重要です。

地政学的観点から考えると、ウクライナ戦争やエネルギー市場の不安定さも間接的にオーストリア農業に影響を及ぼしている可能性があります。たとえば、エネルギー価格の高騰は農業経営費の増加につながり、生産性に影響を与えるリスクがあります。そのため、エネルギー効率を高めた生産方法への移行も長期的な対策として有効です。

以上を踏まえ、生産量の回復はただ単に量だけを追求するのではなく、持続可能性や地域社会との連携を強化するアプローチが必要です。国際機関や研究機関、EUの農業支援政策を活用し、気候変動への適応戦略を長期的に計画することが重要です。また、消費者に対して「オーストリア産さくらんぼ」の価値を訴求するブランディング活動の強化も有効な手段となります。持続可能な農業の実現に向けたこれらの対策が、生産量の安定化と地域経済の強化を支える重要なカギとなるでしょう。