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バルバドスの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、バルバドスの牛乳生産量は1961年から順調に増加した時期を経て、1990年に14,199トンとピークに達しました。しかし、その後は急激な減少を伴う不安定な推移を見せ、2023年時点では4,119トンという低水準に落ち込みました。60年以上にわたるデータを通して、バルバドスの酪農業が直面する長期的な課題が浮き彫りになっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,119
1.99% ↑
2022年 4,039
-6.96% ↓
2021年 4,341
9.13% ↑
2020年 3,978
-14.59% ↓
2019年 4,657
-2.96% ↓
2018年 4,799
-1.29% ↓
2017年 4,862
6.88% ↑
2016年 4,549
-12.96% ↓
2015年 5,227
5.26% ↑
2014年 4,966
-2.28% ↓
2013年 5,082
-17.31% ↓
2012年 6,146
5.78% ↑
2011年 5,810
-13.3% ↓
2010年 6,701
-4.46% ↓
2009年 7,014
4.78% ↑
2008年 6,694
-1.01% ↓
2007年 6,762
21.4% ↑
2006年 5,570
-10.97% ↓
2005年 6,256
-5.51% ↓
2004年 6,621
-5.66% ↓
2003年 7,018
-5.51% ↓
2002年 7,427
-8.76% ↓
2001年 8,140
2.65% ↑
2000年 7,930
-2.1% ↓
1999年 8,100
-10.99% ↓
1998年 9,100
6.67% ↑
1997年 8,531
2.16% ↑
1996年 8,351
6.13% ↑
1995年 7,869
7.84% ↑
1994年 7,297
-4.84% ↓
1993年 7,668
-11.41% ↓
1992年 8,656
-39.27% ↓
1991年 14,253
0.38% ↑
1990年 14,199
10.74% ↑
1989年 12,822
8.29% ↑
1988年 11,840
0.89% ↑
1987年 11,735
11.01% ↑
1986年 10,571
13.29% ↑
1985年 9,331
6.88% ↑
1984年 8,730
12.53% ↑
1983年 7,758
10.18% ↑
1982年 7,041
-1.47% ↓
1981年 7,146
-4.72% ↓
1980年 7,500
0.25% ↑
1979年 7,481
4.22% ↑
1978年 7,178
8.69% ↑
1977年 6,604
4% ↑
1976年 6,350
10.55% ↑
1975年 5,744
-1.88% ↓
1974年 5,854
7.75% ↑
1973年 5,433
5.47% ↑
1972年 5,151
-0.64% ↓
1971年 5,184
0.68% ↑
1970年 5,149
0.96% ↑
1969年 5,100
2% ↑
1968年 5,000
2.04% ↑
1967年 4,900
-7.55% ↓
1966年 5,300
1.92% ↑
1965年 5,200
1.96% ↑
1964年 5,100
2% ↑
1963年 5,000 -
1962年 5,000 -
1961年 5,000 -

バルバドスの牛乳生産量データを分析すると、いくつかの特徴的な傾向が見られます。まず、1961年から1990年にかけて牛乳生産量は着実に増加しました。特に、1980年代後半から1990年にかけて顕著な成長がみられ、14,199トンに達したことは国内酪農業のピークを象徴する出来事でした。この間には、農業政策の改善や技術の進歩、また国内需給の安定が寄与したと考えられます。酪農業がバルバドスの農業セクターにおいて経済の一翼を担っていた重要性がうかがえます。

しかし1991年以降、状況は一変します。わずか数年の間に牛乳生産量は8,656トンにまで減少しました。この減少の背景には、世界的な畜産市場の変動、輸入品との競争激化、及び土地利用の変化などが挙げられるでしょう。また、観光業の成長による農地への圧力や、気候変動による干ばつや降雨パターンの変化が、飼料作物の収穫に悪影響を及ぼした可能性も否めません。

21世紀以降はさらに深刻な低迷を見せ、2000年代後半には年間生産量が7,000トンを下回る年が増加しました。特に2010年代以降は、国内生産基盤の弱体化が顕著となり、2020年以降は4,000トン前後と長期的な低水準で推移しています。この縮小傾向の持続は、一部では畜産業への投資不足や農業従事者の減少、また新型コロナウイルスの影響により酪農業の生産能力がさらに圧迫されたことが原因とされています。

現状を踏まえ、いくつかの課題と提案が浮かび上がります。バルバドスにおける酪農業の継続的な衰退は、同国の食糧自給率を低下させるリスクがあり、輸入依存度の増大を招く現状にあります。一方で、持続可能な農業体系を模索し強化するための政策立案が必要不可欠です。このためには、技術革新の活用や、酪農業を取り巻く生産環境の改善が求められます。

具体的には、気候変動への適応を目指した耐干ばつ性の高い飼料作物の導入や、効率的な水資源管理システムの展開が優先されるべきです。また、政府や国際機関による資金援助の下での農業インフラの再構築と、若年層をターゲットにした酪農業への参画促進のための教育および支援プログラムの導入も課題解決に寄与すると考えられます。

さらに、経済的視点においては、地元産牛乳のブランド化や観光産業との連携を強化することで、商品価値を高める試みも有効です。例えば、エコツーリズムにおける酪農体験ツアーの推進や、地場産業とのコラボレーションを通じた酪農製品の販売促進が挙げられます。

総括すると、バルバドスが抱える牛乳生産の縮小傾向は、単なる生産技術の課題ではなく、気候変動や経済的要因、社会的変化など多面的な要因に起因していると考えられます。このため、包括的かつ長期的な取り組みを通じて、持続可能な酪農業の未来をどう切り拓くかが、今後同国と国際社会に課された重要なテーマになっていくでしょう。