Skip to main content

バルバドスの牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データ(2024年7月)によると、バルバドスの牛飼養数は1961年に2万頭であったのに対し、2022年には12,239頭と全体的に減少傾向を示しています。この60年以上の期間において、1969年から1995年の増加期と、それ以降の急激な減少期が見られます。特に2000年代初頭から下降が顕著となり、近年では微増を見せるものの、過去の水準には遠く及ばない状況です。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 10,732
-12.31% ↓
2022年 12,239
1.35% ↑
2021年 12,076
1.37% ↑
2020年 11,913
1.88% ↑
2019年 11,693
6.54% ↑
2018年 10,975
0.17% ↑
2017年 10,956
-0.71% ↓
2016年 11,034
-0.14% ↓
2015年 11,050
-0.45% ↓
2014年 11,100
-0.89% ↓
2013年 11,200
1.82% ↑
2012年 11,000
1.85% ↑
2011年 10,800
-1.82% ↓
2010年 11,000
2.8% ↑
2009年 10,700
11.46% ↑
2008年 9,600
9.09% ↑
2007年 8,800
-16.19% ↓
2006年 10,500
-19.23% ↓
2005年 13,000
-13.33% ↓
2004年 15,000
-11.76% ↓
2003年 17,000
-10.53% ↓
2002年 19,000
-9.52% ↓
2001年 21,000
-8.7% ↓
2000年 23,000
-8% ↓
1999年 25,000
-7.41% ↓
1998年 27,000
-3.57% ↓
1997年 28,000
-9.68% ↓
1996年 31,000 -
1995年 31,000 -
1994年 31,000 -
1993年 31,000
-7.74% ↓
1992年 33,600
4.02% ↑
1991年 32,300 -
1990年 32,300
4.19% ↑
1989年 31,000
29.17% ↑
1988年 24,000
9.09% ↑
1987年 22,000
10% ↑
1986年 20,000
11.11% ↑
1985年 18,000
-2.7% ↓
1984年 18,500
2.78% ↑
1983年 18,000
2.86% ↑
1982年 17,500
-7.89% ↓
1981年 19,000
5.56% ↑
1980年 18,000
9.09% ↑
1979年 16,500
3.13% ↑
1978年 16,000
14.29% ↑
1977年 14,000 -
1976年 14,000 -
1975年 14,000
-24.32% ↓
1974年 18,500
-11.9% ↓
1973年 21,000
5% ↑
1972年 20,000
-4.76% ↓
1971年 21,000
5% ↑
1970年 20,000 -
1969年 20,000
17.65% ↑
1968年 17,000
1.19% ↑
1967年 16,800
1.82% ↑
1966年 16,500
3.13% ↑
1965年 16,000
2.56% ↑
1964年 15,600
-1.27% ↓
1963年 15,800
1.28% ↑
1962年 15,600
-22% ↓
1961年 20,000 -

バルバドスにおける牛飼養数の推移は、同国の農業や畜産業の変遷を直接反映した重要なデータとなっています。1961年の20,000頭という飼養数は、当時の経済・社会構造の中で、牛肉や乳製品の需要が一定水準に保たれていたことを示しています。しかし、その後、1960年代後半から1970年初頭にかけて、16,000頭台から20,000頭台への安定期が見られます。この時期、バルバドスは英連邦内での砂糖生産に依存する一次産業中心の経済構造を維持していましたが、牛の飼養数増加には政府の畜産奨励政策も関与している可能性があります。

1980年代後半から1990年代初頭にかけては、飼養数が急増し、1990年には32,300頭という最大値に達しています。この成長は、地域内での肉製品需要の高まりや、輸出促進政策の成果であると考えられます。同時に、国際市場での価格変動や政府の経済多様化を目指す政策との関連性も見逃せません。

一方で、1997年以降からの飼養数減少は深刻であり、2006年には10,500頭まで落ち込みを見せています。ここで考えられる主要な要因は、輸入製品の増加による国内市場での競争激化、気候変動の影響、そして農地の観光用地への転用などです。バルバドスはカリブ海の小さな島国として、土地資源が限られており、観光業が経済の柱となる中で、農業や畜産業の重要性が相対的に低下していったと考えられます。

また、2007年から2018年にかけては、おおむね横ばいの傾向にあります。この間、10,500頭から11,034頭の範囲で推移していますが、牛飼養の規模が経済全体に占める位置づけの縮小が鮮明となっています。ただし、2019年以降は徐々に増加の兆しが見られ、2022年には12,239頭まで回復しています。この背景には、地域的な食品自給率への関心の高まりや、新型コロナウイルス感染症の影響による国境封鎖での輸入依存率低下が指摘されています。

現在の課題としては、まず、持続可能な畜産業を維持するために土地資源の効果的な活用が求められます。また、気候変動による干ばつリスクや飼料の入手困難が、持続可能な生産への障壁となっている可能性があります。他国と比較すると、例えばインドやアメリカといった牛飼養数を世界的にリードする国々は、バルバドスとは異なる規模の農地や資本力を持つため、畜産業の成長を安定的に図れています。一方で、カリブ地域の他国と協力し、畜産における技術導入や資源配分の最適化を図ることは実現可能であり、課題解決の鍵となるでしょう。

政策提言としては、まず、地域連携を強化し、高品質な牛肉や乳製品の専門市場を形成することが重要です。同時に、家畜の健康管理や繁殖能力を向上させる技術普及プログラムを実施することが挙げられます。また、観光業と連携して地元産の牛肉や加工品を観光客に提供する「地産地消」の仕組みを構築すれば、国内需要を喚起することが期待できます。

最後に、バルバドスの畜産業再生には国際的な支援も重要です。例えば、国際機関との協力により畜産の近代化や資金援助を受けることで、本土の輸入品に依存しない食糧システムを築くことが可能です。持続可能な畜産業は、産業多様化だけでなく、気候変動に対する適応力を高める重要な役割を果たすでしょう。この動きが具体化すれば、現在の牛飼養数の緩やかな回復が将来の安定的な成長へとつながっていくと考えられます。