国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の統計によると、バルバドスの落花生生産量は1986年に261トンを記録したのを皮切りに、以降は著しい減少傾向を示し、2023年には7トンと最盛期の約3%の水準にまで低下しています。この期間を通じて生産の減少は一貫しており、とりわけ2000年代以降の生産量の低迷が顕著です。
バルバドスの落花生生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 7 |
-7.75% ↓
|
2022年 | 8 |
7.82% ↑
|
2021年 | 7 |
-6.67% ↓
|
2020年 | 8 |
6% ↑
|
2019年 | 8 |
20.97% ↑
|
2018年 | 6 |
-70.62% ↓
|
2017年 | 21 |
88.73% ↑
|
2016年 | 11 |
-21.65% ↓
|
2015年 | 14 |
-9.63% ↓
|
2014年 | 16 |
-10.39% ↓
|
2013年 | 18 |
-6.92% ↓
|
2012年 | 19 |
0.85% ↑
|
2011年 | 19 |
17.31% ↑
|
2010年 | 16 |
-68% ↓
|
2009年 | 50 |
108.33% ↑
|
2008年 | 24 |
166.67% ↑
|
2007年 | 9 |
-57.14% ↓
|
2006年 | 21 |
-8.7% ↓
|
2005年 | 23 |
-17.86% ↓
|
2004年 | 28 |
-55.56% ↓
|
2003年 | 63 |
110% ↑
|
2002年 | 30 | - |
2001年 | 30 |
-50% ↓
|
2000年 | 60 |
20% ↑
|
1999年 | 50 |
-44.44% ↓
|
1998年 | 90 |
1.12% ↑
|
1997年 | 89 |
169.7% ↑
|
1996年 | 33 |
-77.08% ↓
|
1995年 | 144 |
114.93% ↑
|
1994年 | 67 |
-26.37% ↓
|
1993年 | 91 |
-4.21% ↓
|
1992年 | 95 |
5.56% ↑
|
1991年 | 90 | - |
1990年 | 90 |
2.27% ↑
|
1989年 | 88 | - |
1988年 | 88 |
1.15% ↑
|
1987年 | 87 |
-66.67% ↓
|
1986年 | 261 | - |
バルバドスは中南米の小さな島国として知られ、大規模な農産業基盤を持たないため、これまで落花生生産も限られた量にとどまっていました。FAOのデータに基づくと、1980年代は落花生の生産量が比較的高水準を維持していました。しかし1990年代以降、その生産量は急激に変動し、不安定な推移を見せ始めました。そして2000年代には特に顕著な低迷が見られ、2023年の生産量はわずか7トンとなっています。このような長期的な減少の背景には、複数の要因が挙げられます。
まず一つ目の要因は、土地利用の変化や耕地面積の縮小です。バルバドスでは観光業が主要産業となっており、リゾート開発や都市化の進展が農地を圧迫してきました。また、落花生は他の作物に比べて収益性が低いため、生産者にとって魅力的な作物ではなくなりつつあることも考えられます。さらに、気候変動による降雨パターンの変化や干ばつも、小規模農業を行うこの地域に打撃を与えた可能性があります。
加えて、安価な輸入品との競争が激化したことも影響を与えています。バルバドスの市場には他国から安価で大量の落花生が流入しており、このため地元生産者が価格競争力を失いました。特にアメリカや中国などの主要輸出国との競合は小規模農家にとって非常に大きな障壁となっています。また、農法やインフラの技術面での更新が遅れていることも、生産量の低迷を長引かせる一因と考えられます。
このように減少傾向が続く中で、バルバドスの落花生生産を復興させるには複数の対策が必要です。一つは農業技術の導入と支援体制の強化です。例えば乾燥に強い品種の導入や持続可能な農法の普及により、落花生の生産効率を上げることができます。また、生産者に対する補助金や助成金プログラムを拡充し、農業を継続する動機を提供することが重要です。
さらに、地域間の協力関係を構築することも鍵となります。他の中南米諸国と連携し、共同で輸出市場を拡大する仕組みづくりが求められます。同時に、消費者に対し、地元産の落花生の魅力を訴求する地産地消キャンペーンを奨励することも効果的でしょう。このような取り組みは農業の活性化のみならず、地域経済の持続可能な成長にも寄与するはずです。
地政学的なリスクや自然災害の影響も無視することはできません。バルバドスはサイクロンや干ばつなどのリスクが高い地域に位置しており、農業分野に与える影響も大きいと予想されます。これに対応するためには、気象リスクに強い農業インフラの整備や農業保険制度の導入を前進させることが必要です。さらに、新型コロナウイルスのパンデミックは農業労働力の確保や物流に影響を与え、さらなる生産量の低下を助長した可能性があります。このような外的要因に備えるため、よりレジリエントな農業経済モデルを構築することが求められます。
このような背景を踏まえると、バルバドスが対策を講じなければ、落花生の生産量はさらに低下する可能性があります。しかしながら、技術革新や政策支援、地域間協力といった具体的な取り組みを推進することで、減少傾向を食い止め、再び農業の重要性を高めることができるでしょう。国際機関や近隣諸国の支援を得ながら、持続可能な農業開発を長期的な視点で実現することが極めて重要です。