国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ハイチの鶏卵生産量は、1961年の1,300トンから2023年の4,645トンへと段階的に増加しています。1970年代から1980年代前半にかけては生産量の急速な拡大がみられましたが、その後は経済的、社会的要因の影響で一時的な停滞や減少が発生しました。2000年代以降は、全体として緩やかな増加傾向が続いており、近年では持続的な生産拡大の兆しが伺えます。ただし、直近の伸び率は低調で、今後の増産に向けて課題が残る状況です。
ハイチの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 4,645 |
0.58% ↑
|
2022年 | 4,618 |
0.38% ↑
|
2021年 | 4,601 |
0.38% ↑
|
2020年 | 4,583 |
0.09% ↑
|
2019年 | 4,579 |
0.77% ↑
|
2018年 | 4,544 |
0.98% ↑
|
2017年 | 4,500 |
-0.03% ↓
|
2016年 | 4,502 |
0.43% ↑
|
2015年 | 4,482 |
-1.38% ↓
|
2014年 | 4,545 |
-9.1% ↓
|
2013年 | 5,000 | - |
2012年 | 5,000 | - |
2011年 | 5,000 |
13.3% ↑
|
2010年 | 4,413 |
0.21% ↑
|
2009年 | 4,404 |
0.21% ↑
|
2008年 | 4,395 |
1.09% ↑
|
2007年 | 4,347 |
-2.31% ↓
|
2006年 | 4,450 |
0.68% ↑
|
2005年 | 4,420 |
0.23% ↑
|
2004年 | 4,410 |
0.23% ↑
|
2003年 | 4,400 |
3.53% ↑
|
2002年 | 4,250 |
1.19% ↑
|
2001年 | 4,200 |
1.82% ↑
|
2000年 | 4,125 |
8.55% ↑
|
1999年 | 3,800 |
-6.7% ↓
|
1998年 | 4,073 |
14.54% ↑
|
1997年 | 3,556 |
0.21% ↑
|
1996年 | 3,549 |
-7.71% ↓
|
1995年 | 3,845 |
2.54% ↑
|
1994年 | 3,750 |
11.11% ↑
|
1993年 | 3,375 |
-16.1% ↓
|
1992年 | 4,022 |
0.21% ↑
|
1991年 | 4,014 |
14.69% ↑
|
1990年 | 3,500 |
-6.67% ↓
|
1989年 | 3,750 |
-3.23% ↓
|
1988年 | 3,875 |
-6.06% ↓
|
1987年 | 4,125 |
-2.94% ↓
|
1986年 | 4,250 |
-2.86% ↓
|
1985年 | 4,375 |
2.94% ↑
|
1984年 | 4,250 | - |
1983年 | 4,250 |
37.1% ↑
|
1982年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1981年 | 3,000 |
2.39% ↑
|
1980年 | 2,930 |
1.03% ↑
|
1979年 | 2,900 |
8.21% ↑
|
1978年 | 2,680 |
43.7% ↑
|
1977年 | 1,865 |
2.47% ↑
|
1976年 | 1,820 | - |
1975年 | 1,820 |
7.06% ↑
|
1974年 | 1,700 |
3.66% ↑
|
1973年 | 1,640 | - |
1972年 | 1,640 |
2.5% ↑
|
1971年 | 1,600 |
2.56% ↑
|
1970年 | 1,560 |
2.63% ↑
|
1969年 | 1,520 |
2.7% ↑
|
1968年 | 1,480 |
2.78% ↑
|
1967年 | 1,440 |
2.86% ↑
|
1966年 | 1,400 |
1.45% ↑
|
1965年 | 1,380 |
1.47% ↑
|
1964年 | 1,360 |
1.49% ↑
|
1963年 | 1,340 |
1.52% ↑
|
1962年 | 1,320 |
1.54% ↑
|
1961年 | 1,300 | - |
FAOが公表した鶏卵生産量の推移を見ると、ハイチにおける養鶏業の構造変化と経済情勢の影響が浮き彫りになります。データは1961年から2023年までの62年間にわたり収集されており、この期間の生産量の変化は、ハイチの農業分野における発展と課題を象徴しています。
初期の1960年代から1970年代にかけては、ハイチの人口増加や食糧需要の高まりに対応して鶏卵の生産量も着実に増加していました。とくに1978年から1983年には、大幅な生産量の伸びがみられ、農業技術の改善や市場の拡大が反映されたものと考えられます。この時期に生産量は2,680トンから4,250トンへと劇的に拡大しました。しかし、1980年代後半から1990年代中盤にかけては、政治的不安や経済環境の悪化、高まる国際市場の競争などが原因で生産量が停滞し、一時的に減少する時期もありました。このことは、地政学的リスクや社会不安が農業生産に及ぼす影響が大きいことを示しています。
2000年以降は状況がやや改善し、生産量は増減を伴いつつも上昇傾向に転じました。とくに2011年以降には、世界的な健康志向や地元産食材への関心の高まりを背景に、養鶏業の活発化がみられました。ただし、この増加傾向は決して急激なものではなく、課題が依然として存在します。近年(2019年から2023年)は年間40~50トン程度の微増にとどまっており、持続可能な成長にはさらなる投資や技術革新が必要とされています。
ハイチでは鶏卵生産量が増加している一方、その人口増加率を考慮すると、1人当たりの供給量には大きな改善が見られない可能性があります。同じカリブ地域にある他国と比較しても、ハイチの養鶏業は依然として競争力の面で劣勢にあるといえます。また、日本、中国、アメリカなどの先進国では産業化や効率的な飼育技術の導入により、安定した鶏卵供給を実現しています。一方、ハイチの養鶏業は、家族経営に依存した小規模農業が多数を占めており、生産性向上の余地が大きいといえます。
この状況を受けて、将来的に注目すべき課題としては、生産技術の改良、流通網の整備、資本投資の促進が挙げられます。具体的な手段としては、小規模農家への技術支援を通じて効率的な飼育方法を広めることや、畜産分野への外国直接投資(FDI)の誘致を図ることが考えられます。さらに、地域間の協力を推進することで、カリブ全体での市場を強化し、輸出産業としての可能性を模索することも重要です。
また、地政学的リスクや自然災害の影響も無視できない要因です。ハイチは2010年の地震など、たびたび災害に見舞われており、そのたびに農業部門の復旧が課題となっています。災害耐性を高めるために、備蓄資源やインフラ投資への積極的な取り組みも必要です。これにより、緊急時にも安定した供給を維持する仕組みを構築することができます。
総じて、ハイチの鶏卵生産量は長期的には増加傾向にあるものの、そのペースや規模は依然として慎ましいものです。持続可能な拡大を実現するためには、国際協力や政策的努力を通じて、構造的な課題に対応し、農業分野の競争力を強化することが急務となっています。